第2話 プロローグ02 南西諸島ライン
中国海警局巡視船団が尖閣諸島周辺の日本接続水域を航行し、頻繁に日本領海内への侵入を繰り返すようになった。
巡視船は当初、ほぼ非武装の船舶であり、対日挑発行為として、領海侵犯を繰り返しては引き返す行為を主な目的としていた。
しかし、南シナ海で、中国の権益確保へ向けた露骨な強攻策を実施しはじめると、尖閣諸島に対する巡視船団の編成も大きく変更された。
053H2G型フリゲートは、艦対艦ミサイル、艦対空ミサイル、連射砲、連装機関砲、対潜ロケット砲、魚雷発射装置を備える駆逐艦である。駆逐艦とは軍艦の一種であり、高速で小回りがきき、護衛、哨戒、対潜攻撃などを担う。
中国海軍は、尖閣諸島周辺の巡視船団に「海警3」に続く船舶番号をもつこの駆逐艦を数隻編入してきた。
明らかに、武装巡視船の投入は尖閣諸島への主権をさらに声高に主張するものであり、さらには琉球諸島全域への野心をうかがわせるものであった。
この事態に対して、日本のマスコミはことごとく看過してしまったが、米軍は強い警戒感を示し、日本の防衛省にも「見過ごせない変化」への対応を早急に要請した。
防衛省はこの要請を受け、九州南端から台湾へ至る南西諸島の防衛策を講じることとした。
最も有効な方策は南西諸島ラインを維持するための早期警戒システムの構築であり、それに従う地対艦ミサイル部隊の配備である。
だが、日米安全保障条約の傘の下、きわめて希薄な危機感しか抱いていない日本国民と国会議員、さらには防衛省幹部に至るまで、誰もこの事態の襲来を予想せず、十分な備えを怠ってきた。
つまり、早期警戒システムのための予算は圧倒的に不足し、地対艦ミサイル部隊は悲しいほど貧弱な規模でしかなかった。
頼るところは、ただ唯一、アメリカ軍だけというお寒い状態である。
しかも、国民の多くは、それを是として受け入れているか、まったくの無関心であった。
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