第5話再会

数年後「光記」は、東京にいた。

「イチさん」が、「光記」を探して呼び寄せた。

身寄りのない彼は、喜んだ。

「イチさん」は、「国町一(くにまちはじめ)」と、言った。

「イチさん」の素性を知り、驚いた。

「イチさん」は、「光記」の従兄だった。

「和実」の父親には、姉がいた。

叔母は、十六歳で家出して、行方不明だった。

未婚の母になり、「イチさん」が小学生の時に亡くなっていた。


「イチさん」は、母親が亡くなるとすぐに、「国町家」の養子になった。

母親と養母は、親友だったらしい。

養父は建設業を営んでいた。

2人には、子供がいなかった。

「イチさん」は、土日は、建設現場で手伝いをしていた。

養父母とは、上手くやっていたらしい。

二十歳の時に、養父が事故で亡くなった。

二十五の時に、養母が癌になり翌年亡くなった。

養母は、亡くなる前に「イチさん」の母親の事を教えてくれた。


「イチさん」は、どうしても肉親に会いたいと思った。

「イチさん」は、会社を奥さんに任せ「和実」の前に現れた。

「イチさん」は、十八歳で、結婚していた。

「光記」は、なぜ急にいなくなったのか聞いてみた。

奥さんが病気になり、会社を任せられる状態では、なくなったらしい。

「イチさん」には、双子の息子さんと御嬢さんが一人いるらしい。

数年経って、奥さんが良くなり、また「光記」を探したらしい。


「イチさん」は、養母に言われていた。

「光記」の父親には、何があっても関わらないようにと。

「光記」の父親は、「イチさん」の母親を探し借金をしていた。

何度も何度も、繰り返していたらしい。

借金を断ると暴力を振るわれたらしい。

「イチさん」は、「光記」と父親の関係を知っていた。

知らん振りをするのは、辛かったらしい。


今「光記」は、「イチさん」の経営するアパートを借りていた。

有名なテーマパークと建設現場の警備を掛け持ちバイトしていた。

建設現場は、「イチさん」の会社が下請けをしていた。


建築中の建物は、女性専門の総合病院らしい。

(男女差別で辛い思いをした女性医師が集まって考えた様だ。

患者もスタッフもすべて女性で、進めているらしい。)

淡いピンク色の建物は、間もなく完成する。

少し濃いめの窓枠が並んでいる。

桜の並木道を作り、反対側にも建物がある。

女性専門も高齢者施設らしい。

「光記」は、女性は大変だなぁと思った。


建設現場での休憩中、「光記」は、近くのコンビニにいた。

雑誌を持ってレジに向かうと、道を聞かれている店員が困っていた。

「この辺りに総合病院は、ありませんけれど…」

「でも、この近くにあるはずですが…」

「失礼ですが病院のお名前は…」

「つくし総合病院です。」

「きいたことないですね。」

「光記」は、口を挟んだ。

「その病院だったら、今建設中です。この店の裏です。」


店員と客に「光記」は礼を言われた。

「光記」が店を出ると、さっきの客が話しかけて来た。

「先程は、すみませんでした。

失礼ですが、数年前に病院で会っていますよね。

雪道で倒れていた方ではないですか?」

話しかけけ来たのは、「朱莉」」だった。

「あ~あっ、すみません。気付きませんでした。

人の顔を覚えるのが苦手で…。」


「光記」は、言った。

「自分、建設中の病院で警備員しているんです。」

「朱莉」」は、言った。

「私は、病院が出来たら、勤務する予定です。」

「光記」「その節は、お世話になりました。」

「朱莉」」「こちらこそ、助かりました」

2人は、10分位の立ち話をして別れた。


仕事が終わり「光記」は、本屋に立ち寄った。

大学受験の参考書を選んでいた。

「イチさん」の勧めで大検を受け合格していた。

社会的にも大卒が有利だと分かっていた。

大学も、有名大学の方が人の対応が違う。

中卒で警備員の仕事も、「光記」自身コンプレックスだった。


休み無しで仕事をして、お金を貯めた。

(父親が反面教師になった。)

仕事が終わると、毎日5時間は、勉強した。

思いのほか勉強は、苦では、無かった。


参考書を手にレジに向かった。

「また、お会いしましたね。」

振り向くと「朱莉」がいた。

「あっ、どーも。よく会いますね。」

「光記」は、少し驚いて返事をした。

「この辺りに住んでいるんですか?。

私、隣りの旅館に滞在してるんです。

暇つぶしに本を買いに来たんです。」

「朱莉」が話しかけた。

「光記」が答える。

「旅館の先のアパート、借りてるんです。

いろいろあって、今から受験勉強です。」

「光記」は、参考書を「朱莉」に見せた。















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