第3話出会った二人
生活に余裕が出てきた「朱莉」は、仕事仲間とスキーに出かけた。
スキー場に着く手前で、車がパンクしてしまった。
運悪く、天気が崩れてきた。
ホワイトアウト状態で何も見えない。
しばらく車に待機していた。
天候が好くなり、パンク修理も進んだ。
「朱莉」は、少しだけ外で深呼吸をしたくなった。
車から少し離れ、冷たい空気を体に入れた。
「うめき声」を聞いた気がした。
周りを見渡したが、積もった雪と木立だけだった。
車に戻ろうとした時、はっきりと「うめき声」が聞こえた。
雪が不自然に盛り上がっていた。
彼女は、大声で仲間を呼び、雪を除けた。
男が動かなくなってきた。
仲間たちが駆け寄ってきた。
パンク修理のレスキューさんたちも来た。
救急車を呼んだ。
彼女と仲間たちで緊急処置を施した。
しばらくし、救急隊員が、やって来た。
救急員たちは、男をタンカーにのせ病院に向かった。
第一発見者の「朱莉」は、事情聴取を兼ねて、付き添うことになった。
救急車の中、延命処置を受けている男。
体が硬直し、死んでしまった様だった。
病院では、「朱莉」を年配の警察官が待っていた。
人助けをしたはずが、犯人のような扱いを受けた。
「朱莉」は、弁護士をしていた事を話した。
警察官の態度が、豹変した。
威圧感たっぷりの傲慢な口調が消えた。
彼女は、スラスラと分かり易く丁寧に説明をした。
1時間くらい過ぎた頃に、看護師さんが来た。
意識不明で倒れていた男が助かったらしい。
運転免許証から身元が分かった。
天涯孤独で連絡をする親戚もいないらしい。
「朱莉」は、自分に似た境遇の男が少し気になった。
気にしつつも、仲間たちの待つホテルに向かった。
翌朝、仲間たちは早めにゲレンデに向かいスキーを楽しんだ。
「朱莉」は、昨晩の疲れから、遅れて合流する事にした。
彼女がホテルのカフェでブランチをしていると、携帯が鳴った。
仲間の一人が足をくじいて病院に向かうので付添いの依頼だった。
まだスキーウエアに、着替えていなかった彼女が頼まれた。
それほどスキーに興味が無かったので引き受けた。
ゲレンデに一番近い病医院は、昨夜の病院だった。
病院は、かなり混雑していた。
仲間は、申し訳なさそうに笑った。
ロビーで順番待ちをしていると、看護師さんに声を掛けられた。
昨夜の看護師さんだった。
倒れていた男が目を覚ましたとの事。
それから、「朱莉」に会って、お礼を言いたがっていたとの事。
偶然「朱莉」を見かけて、話しかけて来た。
仲間の診察は、まだ時間が掛りそうだった。
「朱莉」は、彼に会いに行く事にした。
看護師さんに聞いた部屋の前に来た。
彼女は、お見舞いを持っていないことに気が付いた。
戻って売店に行くしかないかと思った。
「朱莉」が立ち止っていると、患者さんがヨロヨロ歩いて来た。
歩いてきた男に見覚えがあった。
昨夜「朱莉」たちが助けた男だった。
「こんにちは、もう歩いてもいいんですか?」
彼女は、声を掛けた。
「あっ、はい。・・・?」
彼は、見ず知らずの彼女に声を掛けられ、少し驚いていた。
「朱莉」は、看護師さんの事を話した。
彼は、慌てて、ペコペコした。
「朱莉」が助けた男は「光記」だった。
2人は、談話コーナーの椅子に座り、しばらく話をした。
「朱莉」は、「光記」の雪に倒れていた時の事を聞いた。
自分が疑われて大変だったことも、笑いながら話した。
「光記」は、倒れる前の事を思い出しながら話した。
彼女は、人を信じすぎる彼に、少し疑うことを教えた。
そして、警察に行く事と弁護士を付けることを助言した。
30分位話をして、二人は別れた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます