どん底から頂点へ

第10話集大成

20年が過ぎていた。

「光記」と「朱莉」にとって、充実した毎日だった。

3人の子供達も「朱莉」の会社に入り、活躍していた。

「有華」は、世界各国を回り、会社の為に頑張っていた。

「百華」は、ホテル経営・不動産経営で、会社に貢献していた。

「匠真」は、鉄道・道路・船舶分野で、会社に貢献していた。

「光記」が生まれ育った山奥の村が、ニュースに出た。

人口が減り、老人ばかりで廃村寸前だった。

嫌な記憶の多い村だった。

「光記」は、すっかり忘れたつもりだった。

「光記」は、村のきれいな風景の全てを忘れる事は出来なかった。

ニュースを見てから、数日が過ぎた。

「光記」を訪ねて、老人が独り来た。

老人は「光記」の顔を見るなり、土下座した。

「すまんかった、すまんかった、ワシを許してくれ。

この通りだ、村を助けてくれ。」

そう言ってひれ伏したまま、顔を上げなかった。

「光記」が、「どちら様ですか」と尋ねた。

老人は、顔を上げ「すまん、ワシじゃ」と言った。

老人は、親方だった。

親方は、村長になっていた。

親方は、何度も何度も謝った。

そして、村を助けてほしいと頼まれた。

「光記」は怒りより呆れた。

あんなに酷いことをしておいて、いい気なものだと思った。

「光記」は、すぐには返事をしなかった。

「光記」は、「朱莉」に村の事を相談した。

「朱莉」は、相談を受けた時点で思った。

「光記」は、村を助けたいと思っている。

「朱莉」は提案をした。

村全体を巨大なテーマパークにする事を。

そして、村人に口出しをさせない事を。

村の湖と山を提供する事を。

村の三分の二を会社で買い取る事を。

「光記」は驚いたが、「朱莉」なら出来ると思った。

翌日「光記」は、村に向かった。

「光記」が村を出て30年以上が過ぎていた。

久々に見た村は、荒れ果てていた。

若者は、ほとんどいなくなっていた。

「光記」は、「朱莉」の提案を村長に伝えた。

「一人でも、反対意見が出たら、話は無かった事に。」

と、付け加えた。

失敗しても、そのままでも、村は消える。

全員一致で「朱莉」の提案を受けた。

村の老人達は、「光記」に、謝罪し感謝を述べた。

「朱莉」は、村の再開発の計画にワクワクしていた。

「朱莉」は、社員全てから、欲しいと思う施設を募った。

「朱莉」は、村から買った土地を１５のエリアに分けた。

山のエリアを３か所・湖の周りを６か所・草原を３か所・平地を３か所。

それぞれにテーマを持たせたエリアにした。

山にサファリ・トレッキング・アスレチック・ログハウス・スーパー銭湯。

湖にキャンプ・アクアミュージアム・マリンスポーツ・プール・ホテル。

草原に遊園地・果樹園・世界の街角の再現・農園・牧場・シェアハウス。

平地にクリニックタウン・クリニックホテル・ショッピングモール。

道路・鉄道を整備し、湖に人工島を作り橋を架ける。

遊覧船を浮かべる、屋形船を浮かべる。

全てを見渡せる、センタータワーも建てた。

「朱莉」は、色々取り入れた。

宿泊施設を最初に作り上げた。

工事の関係者全てが泊まれる様にした。

「朱莉」は、予算が足りることを知ると、村人全員と泊めた。

村人が住む、残りの土地も再開発した。

昭和の面影を残し、全ての家をリホーム・新築した。

大きな集会場も作った。

巨大テーマパークが動き出した。

大勢の人がやって来た。

村人には無料パスを配布した。

工事関係者も無料で招待した。

夏には、毎日、人工島で花火を上げた。

パークに来た人達はみんな幸せになった。

村には、若者が帰ってきた。

近隣の村も再開発が進んだ。

「朱莉」の会社の仕事は、まだまだ広がっていった。

「朱莉」は「光記」の生まれた村の再開発を集大成にと思った。

でも、まだまだ終われそうにない。

次から次からアイデアが溢れ出して止まらない。

「光記」と「朱莉」は、センタータワーに上がった。

「光記」と「朱莉」は、パークをしみじみ見ていた。

「光記」は、言った。

「まだまだ、続きそうだね。」

「朱莉」は、答えた。

「もちろんよ、ずっと付き合ってね。」

二人は、見つめ合うと微笑んだ。