第5話

病院から伯父さんに電話が入ったのは、その日の夕方だった。心拍数も血圧も下がっており、危ないので病院に来てくれということだった。伯父さんから仕事に行っていたお父さんに連絡が入り、伯母さんから私のお母さんに電話があった。私は、お母さんと一緒に車に乗り、二人で病院に駆け付けた。

おじいちゃんの病室は、以前とは別の一人部屋に移されていた。

私とお母さんが病室に入ると、伯父さんとお父さんはもう来ていた。おじいちゃんはベッドに寝て、顔には酸素マスクを付けられていた。ベッド脇にキャスターが付いたモニタが置かれ、モニタには3本の線が右から左に流れていた。3本の線は、一定間隔で鋭いとげが現れ、おじいちゃんの体が、まだ生命を保っていることが分かった。

およそ30分くらい経った頃、伯母さんが到着した。全員揃ったところで、看護師さんと宿直の医師が部屋に来て、状態を説明してくれた。私はよく分からなかったが、心拍数・呼吸数・血圧がいずれも低下しており、危険な状態だが、すぐに死んでしまうということではなかった。

もう夜になっていたが、伯父さんとお父さんが相談して、今夜は二人で病院に残って交替で付き添い、お母さんと伯母さんと私の3人は、すぐに病院に来られるよう、病院から一番近いおじいちゃんの家に泊ることになった。そこで3人はお母さんの運転する車で、病院から10分ほどの所にあるおじいちゃんの留守宅に向かった。


おじいちゃんの家は、3DKの古い小さな一軒家だ。私はお母さんと二人でおじいちゃんの寝室で寝ることになった。

おじいちゃんの寝室は、死んだおばあちゃんの写真がたくさん壁に張ってあった。小柄でいつもにこにこ笑っている上品なおばあちゃんだったように思う。おばあちゃんが死んだのは、私が6歳のときで、おばあちゃんのことはあまり記憶に無かった。

私とお母さんは、おばあちゃんの写真に見守られて眠った。

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