二日目 午後

2013/8/3 14:21

気がつくと、牢屋の中だった。ポケットにあったスマホでツイートしている。

気絶する前のことは……警察が来て、指名手配犯を匿っているから逮捕だって言われて、布で口を覆われて……までは覚えている。たぶん薬を吸わされたのだろう。


2013/8/3 14:28

考え込んでいると、壁の向こうから私を呼ぶ声がした。ナナの声だった。隣の牢屋にいるらしい。

ナナはまず、私が無事なことに安堵し、そしてここから逃げ出すことを提案してきた。

脱出方法を尋ねるとナナは、わからないけどなんかできそうな気がする、と答えた。


2013/8/3 14:30

いきなり、壁の向こう、つまりナナの声がした方から異様な気配がしてきた。

直後、出入り口に立っていた守衛が倒れこんだ。

さらに、守衛の腰にあった鍵束が、浮いた。

そのまま私の目の前を通って、異様な気配、もといナナの声がした方へ飛んでった。

しばらく後、鍵が開く音がした。


2013/8/3 14:42

大丈夫?と目の前に来て聞いてきたその姿は確かにナナだった。先ほどの異様な気配はない。

ナナはしばらく手間どいながら、山ほどある鍵束を片っ端から試して、やっと私の囚われている檻の鍵を見つけた。

そして私の手を引っ張って、看守が倒れている出入り口に向かった。


2013/8/3 14:59

引っ張られながら私は、どうして?と聞いた。

人を助けるのに理由はいらない、と笑顔で答えてくれた。

……ナナは、質問の意味を誤解している。私は、何故助けてくれるのかじゃなく、何故さっきのようなことができるのかと聞いたつもりだった。

だが、それは今聞かなくてもいいか。


2013/8/3 15:12

階段を上り、長い廊下に出た所で、今度は二人の守衛に行く手を阻まれた。しかも、相手は拳銃を構えている。

少しうろたえていると、ナナが、大丈夫だよ、と言って私と守衛の間に仁王立ちした。

そして、ナナの髪がふわりとなびいた。

そこには、先ほど感じた異様な気配があった。


2013/8/3 15:15

煌めく髪をなびかせながら、ナナは一歩、また一歩と守衛に近づいた。

守衛はピクリとも動かない。いや、動けないんだろう。ナナの不思議な力によって。

私は、ここから逃げ出せると確信した。

そのままナナは守衛の目の前まで歩いて、拳銃に手をかけた。

そして、


2013/8/3 15:20

そして、私はポケットに入れていた小さな機械のスイッチを押した。

すると、ナナは糸が切れたように、その場に崩れ落ちた。

急に動けるようになった守衛は、焦りながら銃口をナナに向けた。

私はもう必要はないと止めさせた。もうそんなものではナナには対抗できないだろうから。


2013/8/3 15:43

私はナナを抱えて、守衛にこの刑務所の所長室に案内するように指示した。おどおどしながらも、きちんと案内してくれた。

所長室に入ると、所長と警視総監が敬礼して待っていた。ナナをソファに寝かせて、私は二人の向かいに座った。

そうしたらようやく二人は座ってくれた。


2013/8/3 15:59

私は総監に、今回の実験に協力してくれたことを感謝した。

実験内容は、ナナこと七号をわざと逃がし、第六感【ゼクスフィーリング】によって私のところにやって来るかどうかを調べることだった。七号の第六感は私と共鳴するようにできている。

ただ、超能力の解放は予想外だった。


2013/8/3 16:21

そして、その実験のついでに、私の組織の下位部署である警察の調査能力も査定した。逃げ出した実験体をどれぐらいの早さで見つけ出すのかという内容で。

堂々とTwitterをしていたのに、二日もかかったのは、サイバー調査班の怠惰だと総監に伝えておいた。


2013/8/3 16:48

話の後、七号を背負い、私は帰ることにした。

すると、黙っていた所長が質問してきた。こんな騙すような実験をして、その子に申し訳ないと思わないのか、と。

思わない、と答えておいた。所詮機械のアンドロイドに情を持つ訳がない。

さて、研究所に戻って報告書を書こう。


2013/8/3 16:50

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