第26話「幕間:観測する者達」



 ジャスコ事件の間、此れは宇宙空間で起きていた事…


「こちらアルファ1、現在ジャスコ上空」


『此方、ケネディ1、状況を報告されたし』


 通信しているのはアメリカ軍第一宇宙艦隊とケネディ宇宙センターだ、アメリカ軍第一宇宙艦隊はアメリカ東海岸のケネディ宇宙センターから秘密任務を遂行する為に抜錨し成層圏を抜けた時にセンターから月へスイングバイを行う際に日本上空、しかも東京の指定されたジャスコ上空を通過するように指示を受けたのだ。


現在、第一宇宙艦隊は東京のとあるジャスコの遥上空に来て居る


「アルファ1、高高度映像グラス展開、各情報端子展開を開始する、ケネディ1見えるか?」


『ああ、見える角度修正を頼む、ポイント・ゼロ・ツー・ゼロに修正を求める』


「了解した!修正を開始する」


 通常は静止監視衛星から見えるのだが、如何せんこの時は太陽風が強く吹き各国の情報通信衛星に障害が発生し画像も映像も乱れ綺麗な映像が見ることが出来ていなかった。その為、秘密任務を帯びて月へ向かっている第一艦隊に映像の収集をCIAカンパニーが求め大統領命令で遂行されていた。


 ケネディ宇宙センター、第一宇宙艦隊旗艦空母ワスプ艦橋スクリーンに映るのは少年とM・Sメンタル・スーツが屋上で戦って居る風景だ、そしてやがて逃げるように宙を舞ったM・Sメンタル・スーツと少年が重なった瞬間に其れは起きた。


「此方、駆逐艦バートン!ジャスコ付近地上にて異常なエネルギー源の発生を確認、おい有れは何だ!回避間に合わない!此方…」


 地球側に居た宇宙駆逐艦バートンが光り真っ二つに割れ爆発すると同時に第一宇宙艦隊旗艦空母ワスプ艦橋も大きく揺れた


『此方、ケネディ1何が起きた報告せよ!!』


 無線が艦橋マイクに流れるが誰も報告する者は居ない、何故なら艦橋付近の戦闘指揮所CICがごっそり抉られて居たのだ、そしてごっそり穴が空いた艦橋から見えるのは爆炎を上げ傾きながら舵が効かなくなった宇宙戦艦アリゾナがどんどん此方に向かっている光景だ


『此方ケネディ1、状況を報告せよ!報告せよ!!』


 無線から見えないが宇宙戦艦アリゾナは宇宙空母ワスプに激突し次の瞬間にワスプ内から巨大な青白いプラズマが生じ周りの各国の情報通信衛星達を飲み込むと其処には元から何も無かった様にガランとした空間が生まれた。


 一体何が有ったのだろうか?この悲劇が生まれる前に第一宇宙艦隊を見ていた者達の様子を見てみよう。


***


「こちら、雪風01、筑波S、聞こえるか?」


『筑波S、ああ聞こえる、感度OKだ、くれぐれも指示があった通りにジャスコ直上に行くなよ!何が起きるか不明だ』


「了解した、現在ジャスコより東100kmの地点だ、お、おい!有れは!」


「どうした雪風01!?」


『アメリカ軍第一宇宙艦隊さんが我が艦の直上を通過していった!』


 通話しているのは筑波宇宙スペイスセンターと自衛隊宇宙情報収集部隊高速船、雪風で有る。彼等は、種子島宇宙センターから抜錨し太陽風を受け損傷した自国の人工衛星を回収し可能成らばその場で修理、不能ならば格納して地上で修理するのが目的として派遣されていた自衛隊宇宙部隊の特殊掃宙そうかい艇である。


「此方、雪風01、現在修理した衛星が5つ格納した衛星が5つ此れより帰投する、何てこったアメさんジャスコ上空に行ったぞ!」


『筑波S、なんだと!直ぐに発光信号と日米共通無線回路を開き通信を試みるんだ!』


「了解、試みる」


 だが、彼等が米国と連絡をする前に艦橋ディスプレイに映ったのは日本から太い光が発射され地球側に居た小型の駆逐艦が一瞬で蒸発し次いで大型の空母がそして最後に戦艦を巨大な光の線が貫いた光景であった。


「此方、雪風01!大変だ!アメリカ軍第一宇宙艦隊が巨大な光によって貫かれた!」


『なんだって!状況はどうなっている!」


 雪風艦橋ディスプレイに映るのは艦橋が抉られ宇宙に漂う空母ワスプと炎を上げながら空母に迫る戦艦アリゾナで有り二艦がぶつかるとディスプレイが白くなり、異様なエネルギーの発生報告を受けた艦長が咄嗟にシールドを展開すると同時に雪風は青白いプラズマに巻き込まれた。


 大きな波に揺られる葉っぱの様に艇は揺られ艦橋内は上に下に回転しながらくるくる廻り宇宙区間を飛んだ


『こちら、筑波S聞こえるか?聞こえるなら応答せよ!雪風01』


「此方、雪風01、多数のビーコン・レーダー機器が損傷しているが目視での航行に支障上は無い、乗員も全員が打撲等のダメージを受けたが命に関わる傷は無い!非常用ビーコンの電源を入れた、此処が何処だがわかるか?」


『こちら、筑波S、貴殿のふねはブラジル上空の宇宙空間だ!此方より着陸点へ誘導を開始する、基準点を現在北極星のこぐま座α星のポラリスとし視認しながら此方の指示に従われたし』


「此方、雪風01、指示を乞う」


彼等の艇はやがて宇宙空間から大気圏へ向かい始めた


***


ジャスコ事件から数日後、ホワイトハウス内地下会議室


賢者ワイズマンの攻撃は少なくともTNT換算50メガトン、211PJペタジュールでして此れが7mの正方形状に集中した訳でして…」


『つまり、どういう事かハッキリ言ったまえ博士』


「20世紀の狂気の発明の一つソビエト連邦が作ったツァーリ・ボンバと同格以上の破壊力を生んだという事です」


『だが、ジャスコとやらの立体駐車場は半壊しただけに留まっているぞ、昨年の世界大会決勝では会場のスピッツベルゲン島の半分を吹き飛ばしたぞ!』


「ええ、今回は力を逃がしたのです。自国を傷つけない為に」


 フォログラフが映され其処には日本から巨大な太い光線が宇宙へ向かっている光景で有りその先に有るのはアメリカ軍第一宇宙艦隊と表示されて居た…


『お陰で我が、アメリカ軍第一宇宙艦隊は壊滅、凡そ500億$(凡そ五兆円)の損失だ何より5000名の人員の損失は痛すぎるぞ!』


「後は、月面秘密基地ムーンサイドの本格運用が当分の間使用不能に成りました…」


『どのくらいか?一ヶ月か半年か?』


「はい、150年程に成ります…」


『は!?150年と聞こえたが気のせいか?』


「いいえ、本当です。宇宙空母ワスプが運んでいたのは反物質アンチマターエンジンのコアです。此れが月面基地に入ると全エネルギーを賄う事に成っていました。この反物質アンチマターの必要量が集められるのは150年後に成ります。そして、同時に此れらは月面秘密基地ムーンサイドから全方位に発射する月光砲ムーンライトガンの動力源にも成っています。秘密基地なので太陽パネルを設置しておらず残りは核融合炉になりますが之では基地の最低限度の機能を維持するのみに成ります。」


 聞いていた大統領は途中で思考を停止していた、何故なら月面秘密基地ムーンサイドの建設には彼が大統領に成る前から100年の年月の多数の国費を掛けて行われようやく彼の代で完成する予定で有ったのだ!

 此れを足掛かりに世界をイヤ地球をもう一度、超合衆国的平和スーパ・パクス・アメリカーナの元に纏め上げようと考えて居たのだが其れが崩れ彼の野心は人知れず消えた。

その後に出てきたのは、フツフツと行き場の無い怒りだ!彼はCIAカンパニー長官を見た


『何故、賢者ワイズマンは此の様な事をしたのか?』


「ハイ、其れはM・Sメンタル・スーツ賢者ワイズマンが興味を持った少女達ナナ&ブラウが襲われた為」


M・Sメンタル・スーツは何処の企業の物か?』


「四谷重工という中堅企業の物です、我が国にM・Sメンタル・スーツを売り込んでいました」


『その企業の仕業か?』


「イエ違います、何者かによって遠隔操作リモート・コントロールされていました。操縦者は既に爆心地付近にて肉の塊で発見され経営者達は死亡又は逮捕されていました」


遠隔操作リモート・コントロールの主はまさか、CIAカンパニーか?長官?』


「イイエ違います、我々は国益の為●●●●には閣下にも秘密裏に物事を勧めますが賢者ワイズマンに接触する事柄は必ず事前に報告を致します」


今回は●●●信用しよう長官…分かるような君たちがするべき●●●●ことは?我が国の国益●●を得る事だ!長官!君に大統領命令を与えよう、遠隔操作リモート・コントロールした馬鹿の国●●●●を突き止め失われた100年分の利益を如何なる方法でも良いから搾り取れ!』


 何時もは笑顔で知られるトーマス・ガン・ストロング大統領の笑顔は消え、顔には青筋が立ち何か黒いオーラが出ており、小心者が見たら余りの恐怖の余りにジョバジョバと失禁ジョバノフスキーしてしまいそうな光景であった。 

 すぐ傍に居た博士は最新の自己製作の超吸水素材を使ったパンツを実験的に着用しており事なきを得、此のデータを元にパンツ型のオムツを成人男性向けに売り出して大いに売れ大富豪の仲間入りをする事に成る。因みに、キャッチコピーは[急な上司プレジデント級の怒りに触れても大丈夫!]で有り同じ様な上司を持つ会社員や中東の独裁者の官僚にも幅広く売れた。後に、多くの成人男性の平和プライドを守った人物としてイグノーベル賞の平和へいわ部門を受賞する事に成る。

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