第8話「ファイブスターズのメンタル・ギア測定」

 今日は半年に一度のメンタル・ギア測定の日、各ステージで測定を行い測定値からの総合評価で一定の水準に達する事で春と夏の大会への個人・団体出場権を掛けた校内戦に出ることが出来るのだ。


此処は測定ステージの一つ水上ステージ


「お前も来たのか?」


「勿論だぜ、上手く規定値を超えれば、奨学生に成って家に楽する事が出来るからな」


「早く、お前ら測定してこいよ、俺、F判定だったぜ!Gから一ランク上がったぜ!」


 二年生達が会話をしている、このメンタル・ギア測定は威力・継続度・耐久性・属性・安定性の五つを元に様々なデータからランクA〜Zまで判定される。だが、何時でも其れを超えた能力ランクSの人間は居り彼ら5名は団体戦世界一位に成った尊敬と恐れを込めてファイブスターと呼ばれている。


 バシャツ!!と水のステージの水が7階建てのビル程まで上がり、プールはモーゼが海をかって割ったかの様に成り割れた。

力の発生源には赤と黒の口以外を隠す特徴的な仮面と赤い服と黒いマントを着た謎の人物が居る。その人物の姿は230年程前前に男女問わず、多数のファンを獲得した姿にそっくりで有った。その230年前のアニメの人物きゃらと同じ様に、人並み外れた能力と耐久性からその仮面を被った人物は、コードネーム[紅い彗星]と呼ばれている。


 ステージに表示された判定結果を示すフォログラムには杜明日奈もりあすな[判定S]と表示され、周りからは割れんばかりの歓声と拍手が生まれたがその人物は


「実に、実に気に入らん」


 不満げに声を上げて踵を返すと次のゴルフ場の測定場へ脚を向けた。


 ***


 次は、ゴルフ場の様に砂と芝で起伏が激しい丘のステージ、かのじょはムキムキの躰から唸る様な筋肉を音を鳴らしながらスカートを履いて走っている。彼女かれが狙うのは多数のフォログラムで表示されたターゲットだ!かのじょの前や後ろから赤や蒼、翠様々な光りがレーザーの様にターゲットに飛んでいき破壊する。

 丘を超えると次は森の中、森の中では人型や大型動物の自動人形オートマタ達が刃物や銃、爪を剥き出しかのじょに迫って来たがムキムキの腕と腹の筋肉を鳴らしながら彼等をまた一体、一体破壊して行き最後に逃げ様とした機体は飛んできたレーザーによって破壊された。多くの測定者が脱落する森のステージを難なく超えると次は池が彼女かれの目の前に迫り躊躇なく水の中に飛び込んだ。


 水の中では、此処でも水銃を持った人型や獰猛な牙を持ったサメの様な自動人形オートマタが彼を襲い始め、かのじょを獲物として腹を空かせたピラニアの様に集まり始めた。

 彼女かれは獰猛な笑みを帯びた瞬間に大量のレーザー光がムキムキボティの黄金率と不屈の精神を表すかの如く光の屈折の法則を無視し多数の向かって来た敵を一掃した。やがて、彼女かれは池の一番下に置かれて居た珠を取り池から出ると[ゴール]と表示された地点へ急ぎ走り珠を置きタッチダウンすると判定結果フォログラムが吉良大和きらやまと[判定SA+]と表示された。かのじょは手鏡を持ち自分の方へ向けながら


「全く、池のステージは嫌だわ、かつらと化粧が落ちちゃう、今度から形状記憶合金のかつらにしようかしら?」


 ムキムキの躰に合わない発言をしながら髪を直しと化粧をしながら次の海ステージの方を眺めた


 ***


  此方は海のステージ、大抵の者は沖合のステージに来る前にリタイアし此処に居る茶色のショートヘアに茶色の瞳にスカートを履いた何処にでも居そうな普通の少女は並大抵の者では無いことが伺える。


 彼女の周りに居るのは空には多数の無人機や海には無人の殺傷性の有る武器を積んだ戦闘艦が居り彼女は沖合に一人海の上に立っている。足の下には何も無く彼女は浮いているそんな少女を囲み無人機や戦闘艦は一糸乱れぬミサイル攻撃や砲撃を始めたがそれ等は、彼女の遥か手前で爆発し彼女の柔肌を傷つける事は無かった。

 やがて、彼女が一歩踏み出すと空の多数の無人機が爆発し青空に花火を見せ、二歩踏み出すと周りを囲んでいた戦闘艦が真っ二つに割れ爆発し海の藻屑に成り消えて行った。最後に、三歩目を踏み出すと彼女の足元、イヤ彼女が居る海域がボコボコと音を立てて爆発し、大量の魚と下に隠れていた潜水艦が飛び出して来るとクリアのフォログラムには緋色結衣ひいろゆい[判定SS]と判定結果が出たが彼女は不満そうな顔で闘技場の方を見ながら闘技場から表示されるスクリーンに映っている会長かれ副会長かのじょを見ながら


「何時か…お前を殺す」


 物騒なセリフを言いながら海の上から闘技場方へ進み始めた


 ***


 此方は一方闘技場、5段程高く成った所に黒い服に黒い羽根を付け左目が琥珀色の少年が金色の椅子に座り、横に同じく黒い服を着た宰相の様な者が居り反対側の下には白い服を着た少女が居る舞台が有る、どう見ても魔王と勇者の最終決戦のシーンの構造で有る。


「魔王マサヒロよ!今日こそ、決着をつけてやる!!」


「掛かってこい、勇者ナナよ!!」


 先ずは、黒い服を着た少年が椅子に座りながら刀の柄に手をやった瞬間に勇者の少女ナナが横に転がりながら移動すると、少女が居た所は何かで引っ掻かれた様に抉れ勇者の少女は両刃の刀を出すと椅子に座っている少年に目掛けて飛び掛った。


 何故この様な舞台で測定を行っているか?ではその様な舞台を造った者たちの会話を見てみよう。


 ***


 舞台裏にてスクリーンに移る魔王と化した少年まさひろ)と勇者の少女《ななを見ている二人の男女が居る


「会長も副会長も最初は難色を示しましたが、ノリノリで何よりですね」


「だが、[ライター]イヤ、書記さん何故この様な舞台を作ったんですかね」


「其れは、…だからよ!」


「え、聞こえませんがな!」


「上からの指示よ、この間の会長と副会長がケーキを食べている時に[ミスター・プロテイン]の乱入を許してしまって今月の給料おこずかいが減らされそうだからわよ!!ええそうよ、どうせ私は、あの時は会長と副会長が二人きりの男女で何か楽しいイベントが起こると思って居た馬鹿な女よ!笑いたいなら笑えば良いわ。でも、もし笑ったら会計あんたがこっそりプールしている資金(うらがね》に付いての話を会長と副会長に告げ口してやるんだから!!」


「ずみませんでした、お靴お磨きじます!!」


 半泣きに成りながら、舞台裏で書記の雪子女史の靴をハンカチで磨いている男の姿を見て悦に浸っているが、女史はフォログラムに映し出されている、彼等の戦闘データと判定結果を見ながらこの後、起こるだろう結果と台本を見ながら更に口角を釣り上げた。


 ***


 カキン、バシっと音がし両刃の刀は遠くに飛び、勇者の少女は大地に躰を打ち付け、勇者の首元に魔王は抜かれていない刀の鞘を当て


「勇者よ、もう終わりか、だらしが無いな!さて、どうしてやろうか?」


「くっ殺せ…生きて恥をかきたくは無い…」


「ただ殺すのは、惜しいな、貴様を…して、…にしてやる、なおその様子は…」


「ン?、何を言っているの聞こえんが?」


「ただ、殺すのは惜しいな、貴様を陵辱りょうじょくして、我が愛玩具あいがんぐにしてやる、なおその様子は世界中に公開されるもよう!」


「其れが、貴様の本心か、会長、見損なったぞ!」


「落ち着いて、副会長、奈々さん違うってば此れは書記の雪子さんが書いた台本なんだってば!!」


 途中までは、良くある勇者が魔王に敗北し、快楽闇落ちのルートで有ったが真面目な彼女が思わず切れてしまい魔王匡央まおうまさひろ会長匡央かいちょうまさひろ勇者奈々ゆうしゃなな副会長奈々<ふくかいちょうななに戻ってしまった。


 そして、何時の間にか掲示板には付焼匡央つけやきまさひろ[判定SSA+]、諸刃奈々もろはなな[判定SSA-]とフォログラムが映り測定が終わっていた事を告げ、舞台の奈落が上がると其処には銀髪に蒼い瞳の美少女が出てきた。


「「雪子書記さん、どういう事ですか!」」


「んー、惜しかったわね、台本通りだと勇者は、あんな事やこんな事をされるという物語だったんだけど…ソモソモ、二人がちゃんと真面目に台本通りやれば、二人はやがて幸せなキスをして終わりって感じだったのに、仕方が無いので第二幕よ!!」


 手を上に上げると舞台にドンドンドンと3人の何かが少年の前に降りる音がし


「魔王、会長、私の筋肉の音も魅力的だと思うんだけど、どうかな?私はそっちのけも有るわウフン」


「台本に乗って女性に手を出す魔王、気に入らん!!死すべし!!」


「治外法権の権利を良い事に、女性に無体を働くとは…お前を殺す!!」


 賢者きんにく騎士かめん魔法使いボマーらしき強烈なコスプレをした3人が現れ


「はーい、皆さん、魔王さん相手に一度に、戦闘データともう一度精密判定を行います!魔王!!

我は雪の女王スノウ・クイン!!勇者奈々を返して欲しければ、彼等と戦い勝利せよ!!」


 何時の間にか制服が雪の女王が着るような服装に変わっており、三人の強烈なコスプレに呆然としている彼女ゆうしゃを奈落まで引っ張り、降りていき奈落が閉まると同時に賢者きんにく騎士かめん魔法使いボマーと魔王は激突した。

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