第36話「幕間:女神像と王冠」

  此れは少年マサヒロ少女ブラウも生まれる前の話、此処はインドのある都市で1000年ぶりにある女神像の魂を新しい象に入れ替える神事に参加し踊り歌っている。古の書には、この像に魂を入れる為に昔も一週間の間、人々は眠らず歌い食べ農耕と植生の女神に感謝すると書いて有り其れを忠実に再現をして居る。

 護摩壇では、炎が煌々と焚かれ僧侶達が祈りを捧げてから一週間目に片目がナイフの様な物で傷つけ抉られた様な跡ともう片方の目には歪な蒼い瑠璃が入っているシータと呼ばれる女神像が運ばれて来た。

かって、700年前にフランス人によって片目のダイヤを奪われ其れを治そうとした日本人がやらかした像は作られてから1000年という時を得て劣化し修復か新しい像にするという事を長老会議で決めたが新しい像や修復しようと行動をし始めた時に彼等はとても苦労をした。


 ある国は、修復は可能だが国境線の新規策定か天文学的な金額を要求し、また有る国は新しい像の替りの像を提供する変わりにかっての植民時時代の様な関係を求めるといった何れも彼等の気持ちを脚元を見るような条件を提示してきた。

 彼等がどうするべきか悩んだ時だった、その話を聞いた有る国の企業からその像の詳細な設計図と600年前に造られたという像の写真が送られて来た。

 彼等が訝しげに見ると其処には彼等が新しく作ろうとしている像と全く同じ形に作られ数日後実際に厳重に梱包されて送られて来たその像と手紙を見て彼等は全てに納得をした。手紙には、700年前の付け焼きカリゾメの芸術家へ寺の僧侶が送った依頼書とその芸術家が僧侶に送った手紙のコピーが添えて有った。


 やがて、像と共に入って来たのはこの寺院としては滅多に外に出されない即身仏と成った僧侶でありその即身仏には多数の紫や金色の服が着せられ多くの人々から慕われ大切にされて来た事が伺える、其れに向かい合うようにして黒塗りの漆で極限まで美を追求した女神シータ像と顔色が優れない庶民的な服を着た男が座って居たが男は瞬きすらせず息もしていない。男は、600年前に医学を付け焼きカリゾメで学んでいた息子に命じて死後自分自身を剥製とする様に命じこの像と共に家が存続する限り保管する様に命じた。


 男にとっては700年ぶりの訪印で有りどうしてもやらなければ行けない事が有ったのだ、護摩壇の炎が巻き上がる中でその即身仏と剥製と成った男が乗った台がまるで元からその様に設計されていたかの様にガチリと音を立て合わさった。

 暫くすると剥製人形デッド・マターの男が頭を下げ土下座をし多くの人がまるで生きているかの様だと思いながら情報端末ウォッチ&リングで撮影を始めた。この男の孫の代は絡繰りからくり付け焼きカリゾメで学び始め男が遺言で孫に設計書通りに剥製とされた自分にその様な動作をする人形に作る様に命じていた。そして、驚くことに即身仏はその土下座した男の頭に干からびた手をポンポンと当てその即身仏も頭を下げた


「我が師、長らくの間、お待たせして申し訳御座いません」


「よい、よい、お主に再び会えた事にわらわは感謝している」


 声は無いが会話が聞こえる様である、即身仏の方は古代印度文明の超技術アーティファクト・テクロジーでこの様に設定されており、多くの人々の執念・妄執に近い何かによって作られていた。


 僧侶達が祈りを捧げていると護摩壇の炎が一際高く上がり片目に傷と片目が濁った幼い幼女が現れた。即身仏と成った者と剥製の男を見つめ即身仏の者の握っていた右手を触るとポロっと像の瞳サイズの琥珀が落ち、剥製の男の右手を触ると蒼色の瑠璃がポロっと落ち、其れを幼女は自分の瞳の中に入れると幼女の左目は琥珀色に右目は瑠璃色に成った。

 そして幼女が新しい像の前に来ると護摩壇の炎がより激しく立ち上がり周りの僧侶達を飲み込んだが僧侶達は燃える事は無く優しく包まれ多くの僧侶達は祈りを捧げながらこの光景が言い伝え通りの事である事に涙を流している、そして即身仏の者と剥製人形と成った者を飲み込む燃やしながら幼女は優しく彼等を撫で


『二人共アリガトウ、久方ぶりに世を見ることが出来ました。700年ぶりの再会に祝福を貴女も貴方も次の世では結ばれる事を願っています』


 同時に二人の生前の姿が顕に成った。一人は蒼髪碧眼として生まれ疎まれ髪を黒く染め僧侶と成りフランス人に恋し裏切られ人間不信の中で日本人の正直な男に救われ男として生き死んだ女性の僧侶●●●●●、もう一人は男を女性と知りその女性に恋したがかなわぬ恋と知っていたがその女性に振り返って欲しかった為にヤラカシた片目が琥珀色の日本人●●●●●●●、二人は燃え上がる炎の中で抱き合いそして幼女に感謝を捧げ次の世に発って逝った。

 やがて、炎が突然の雨によって消え雨が上がり虹が出来ると其処には右眼が瑠璃色で左眼が琥珀色の女神シータの像が立ちその前には抱き合いながら骨だけに成った女男めおとだけが残った。


同時刻 日本と独逸にて


「「おぎゃーおぎゃー」」


異なる地にて二人の赤ん坊の元気そうな声が聞こえる。一人は蒼い髪に蒼い目の女の子で、もう一人は黒い髪に左眼が琥珀色の男児だ


「この子は何れ我が連合企業コングロマリットすべる!イヤ、くにの王に成る様な器の人間に成ってもらいたいな!こくおう、当て字で漢字で匡央まさひろと名づけよう!」


『この子は何もかもが蒼い!だからこの子の名前はブラウにしよう、この子が物心着く頃には欧州は再び統合されエウロパ連合が完成し儂はもしかしたら王に成るかも知れないな!べろべろバーお祖父ちゃんですよー』


二人の子煩悩な親バカによって名前を付けられた子供たちは16年後に学園アカデミーにて出会いを果たす。


***


 此処は日本の高級では無いが閑静な住宅街、家に作った秘密の部屋で切子のグラスに入ったウィスキーを飲んでいる男がいる。男には娘と息子が居るが娘は既に婚約者と同棲を始め、息子は学園のアカデミーの寮に入って居り家に居るのは男だけである、妻に先だれた男は一週間に一度二人分のウィスキーを用意し妻の写真に向かって話しかけ息子と娘の近況を報告している


「この間、五十六いそろくは学内の校内戦で二位に成った、嬉しいな!」


「奈々はようやく、我が家の宿願で有った付焼の家に婚約者として同棲をしているよ…」


 男が眼をやるのは片目を眼帯で覆った夫婦の写真であり、写真には独逸にてマリアと諸刃一もろははじめと薄れた文字で書いてある。諸刃一もろははじめは当時、鉄鋼業が盛んで有ったドイツに留学時に駅周辺で暴漢に襲われそうに成って居た少女を助けた際に片目をナイフで刺され失明をし生死の境を彷徨っていたが毎日彼の元を訪れる眼帯の少女マリアの呼びかけに反応し彼は眼を覚ました。


 やがて彼は回復すると激化する第一次世界大戦から逃れる様に日本に戻って来たがその時に彼の傍にはお腹を膨らませた少女マリアが居り彼は何処からか仕入れた資金を使い鉄鋼業を創業し其れが今の諸刃重工の元と成った。


 その少女マリアは妻として諸刃一もろははじめを何時も支え多数の子供、孫、ひ孫の男児達に恵まれ幸せな人生を送ったが亡くなる数日前に夫と当主にある事を告白した


『私はかってある人に救われその人のお陰で生きながらえる事が出来ました。貴方に申し訳無いと思いますが、その人が私にとって最初の初恋の人…その人は、私に独逸に渡る為の大量の資金とある一族の後継者の証明として王冠を渡してくれました。私からの最後のお願いが有るの…もし、我が家に娘が生まれた時にその子を王冠を持たせてその人の家に嫁がせて上げて…私と彼にする恩返し彼の苗字は付焼といって左目が琥珀色だったわ!今の貴方の会社の資本金を私が持って居たのも彼のお陰だわせめてお礼だけでも…もう私は…』


 其処でマリアは意識を失い数日後に極めて幸せな人生を終え二度目の死を迎える事に成る。その後、マリアの遺品を整理していくと其処にはマリアのその人物への熱い思いが書かれた日記と厳重に包まれた王冠と書類が出てきたが、その王冠は奇妙な事に頂上部に収められているルビーが無かった。

 そして、書類はロシア語で書かれて居たが夫は苦労して解読し、其処にはある国の国王が女帝に対して送った熱いラブレターとマリアが双頭の鷲の下の一族の三女であった事が書かれて居た。

 夫と当主は此れを長年の一族の秘密とし娘が生まれた時に此れを行うとしていたが300年間に渡って女児が生まれず、ようやくその男の代で女児が生まれた。七代目の彼と王冠の女帝エカテリーナの名を付け合わせて奈々と名付けられ、娘はスクスクと育ちやがて、ある学園アカデミーに入学する。


『助けなくても私の手に掛かれば、あんな奴燃やしてやるのに!』


「君のメンタル・ギアが両刃とは面白いね、僕の名前は付焼匡央つけやきまさひろ!君の名前は?」


『私の名前か!?私の名前は諸刃奈々もろはななだ!この学園の頂点を目指すものだ!』


「一ヶ月で刀に成るなんて興味深いね、僕もメンタル・ギアが刀なんだよ!」


『そうなのか!?互いに学園、イヤ世界の頂点を目指して頑張っていこう!』


紅いルビーと王冠を持つ一族の末裔が出会った瞬間である。


少年まさひろ少女達ブラウ&奈々の出会いは偶然?必然?イヤ、全ては人生の分岐点クロスロード勇気ある一歩●●●●●●を踏み出した者に与えられた権利と義務●●●●●である。

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