あとがき2
カクヨム上で物語を完結させて、もう半年以上が経過しました。そのあいだに望外にも『第一回カクヨムweb小説コンテスト現代ドラマ部門』で大賞を受賞することもできました。もうずいぶん昔の出来事のように思えてきます。
本来はいったん閉じた物語でしたが、作者自身思うところがあって今更ですがもう少しあとがきを続けて書いてみようかという気になりました。蛇足の蛇足ではありますが、もしよろしければお付き合いいただければと。
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本作品を書いていた期間は、2015年6月から10月にかけてになります。当然作家志望の素人なので原稿に専念するわけにもいかず、昼間は勤めに出ていて休みや仕事の後にひっそりと原稿を書いていました。小説のコンセプトとしては、当人として一度真正面から「お仕事小説」というジャンルのストーリーに向き合いたいと思い、物語の構築に取り組むことにしたのでした。
私はミステリー小説が好きで、初めて読んだ小説はリアルタイムではありませんが長坂秀佳さんの『浅草エノケン一座の嵐』(第三十五回江戸川乱歩賞受賞作)。この小説ですっかり、ミステリーの虜になったのです。それきっかけに、島田荘司さん、綾辻行人さん、有栖川有栖さん、法月綸太郎さん、歌野晶午さん、麻耶雄嵩さん、西澤保彦さん、折原一さんといった新本格ジャンルや、東野圭吾さんや森雅裕さん、岡嶋二人さんといった江戸川乱歩賞出身の作家の方、あるいは東川篤哉さんや石持浅海さんといったカッパワン出身の方々の作品を愛読するようになりました。一方で、乙一さんや伊坂幸太郎さんや有川浩さんといったミステリー系とはやや逸れた方々の作品も大好き。また米澤穂信さん、宮部みゆきさん、高村薫さん、藤原伊織さん、馳星周さんが紡ぎだす世界観も魅力的に感じ、自分もいつかはこういう作品を書いてみたいと憧れたものです。ただ当然こういった偉大な先達の方々の模倣をしていては、作家デビューなんてできないとも痛感していましたから、何とか自分独自の作風で小説に挑みたいと考えました。
こうして、今のカクヨムに掲載されているバージョンとは微妙に違う物語ではありますが、昨年秋に『ヒーローは眠らない』初稿はなんとか完成しました。ただし一つ問題があって、当人としては当然どこかの公募コンテストに応募するつもりで原稿を書き上げたものの、いざこれを公募に出そうと思いいろんなコンテスト要綱を確認しても、カテゴリにあいそうなコンテストがなかなか見つからなかったのです。普通商業作家としてデビューを果たそうとするなら、まず自分がデビューする形をイメージし、それに合致する賞を探してきて、それに寄り添う物語を創造するのが本筋だと思うのです。しかし、そういった傾向を無視して物語を書き上げたものですから、『ヒーローは眠らない』は完全に宙に浮いた形になってしまったわけです。
これは困った、と思いながらもこれはあくまで習作だしまだ作家修業の身だからと考え直し、私はまた別の物語を執筆することにしました。こうして『ヒーローは眠らない』は宛先も見つからず宙に浮いたまま、私の中ではいったん棚上げされることになりました。
そして年が明け、2016年の1月。『カクヨム』がローンチするというニュースを知ったのは今年になってからのことでした。恥ずかしながら、それまでネットで小説をアップするという現代のネット小説事情すら全く知りませんでした。それこそ『小説家になろう』というサイトがあることも知らなかったぐらいです。
『カクヨム』はまだサイトオープン前ということで原稿募集中の状態でしたが、目を惹いたのは『第一回カクヨムweb小説コンテスト』の応募要綱に載っていた現代ドラマ部門の記載でした。そちらにはこう記されてありました。
『男同士・女同士の友情やお仕事ものなど、現代社会が舞台の小説作品のジャンルです』
『ヒーローは眠らない』はもしかして、この場所にぴったり当て嵌まるんじゃないか……私はそう瞬間感じたのです。
あとがき3につづく
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