第4話 再会とテスト
六月、梅雨の時期だ。湿気が多い日は古傷が痛む。。。。
なんてことはなく、順調に足は回復している。何故怪我をしているのかは今回は省略させてもらう。
ギプスは外れ今はリハビリに励んでいる。リハビリと聞くと辛い過酷なものと思われがちだが、何のことはない。週に約三回足に電気を当てるのを30分。医師の水野さんのストレッチを約20分。正直なことを言うと俺も少し期待外れだった。いやたかがリハビリに何を期待していたのか、言うならば「不慮の事故で怪我を負った彼がリハビリに励み頑張っている」みたいな。まぁ特にスポーツやら何やらはしていないのでそれ以前の問題なのだが。スポーツと言えば部活だ、五月の中旬あたり一度「部活に入るか」「何に入るか」それとも「入らないのか」新一年生全員が決める、という行事があった。俺はもちろん何にも入っていない。この足のおかげで運動部に入らない口実にもできた。まぁ勧誘なんてされていなのだが。
そういえば神薙は何か部活に入ったのだろうか。あれ以来一度も連絡を取っていない。いや一度家に見舞いに来てくれたのだった。実際俺はちょうどリハビリに行っていたので顔を見せることができなかったが、母から聞いた話では、今にも死にそうな顔で来て帰っていったと言う、、、
ほんと何しに来たんだよ。てか生きて帰れたのか。本気でそう思わせるほどの体力のなさだからな、あいつは。
神薙の安否は心配だが今の俺が確認できることじゃないので後日学校で確認するとしよう。
そんなこんなで部活もなく、漫画を読んだり、最近始めたオンラインゲームをしてみたり、休日を堪能していた。いや堪能なんてするべきではないのだが。なぜなら明日から2日間、第一回中間テストが始まるのだから。
ダッダッダッダッダ
この足音は母が俺を起こしに二階に上がってくるときの音。俺は毎朝この足音に起こされる。ん?起こされる?まさか。
俺はケータイを手にし、時間を確認する。
6時20分
俺は顔面蒼白で頭を振ったのと同時に母が扉を開けた。
「朝だよ、、、なにその気持ち悪い顔。」
朝起きてすぐに罵られるなんて、たまったもんじゃない。いやそんな場合ではない、今日がテストだというのに、課題こそ終わっているものの、勉強なんて微塵もしていないのである。
こうなれば早く学校に行きすぐに勉強をする必要がある。
「今日早く学校行くから飯いらねぇ」
「あ、そう。じゃあコンビニで買っていく?」
俺はうなずき早急に身支度をした。歯磨きフレッシュインパクトである。
リビングに行くと母が小銭を渡してくれた。父はもう仕事に出たのか、姿はなかった。俺は急いで家を後にした。
行ってきまーーーーすっはい、ぴーよぴーよぴよぴよぴーよである。
最寄りのコンビニに着くと俺はパンとコーヒー牛乳を買って学校に向かう。
駅に着き改札で定期をかざす。
「ブー!」
短すぎたか、阻まれた。
後ろのおじさんが隣の改札に移動する。この時の罪悪感ほど大きいものってないよね、、、、
二回目は慎重にかざす。今度は開いた。一安心
「45分発か。今の時間は、、、43分、ちょうどいいな。」
電車に揺られること30分、あとから思えばこの30分間なんで何もしなかったのか疑問である。
学校では30分ほど勉強ができた。したことと言えば単語記憶程度だ。
一時間目は数学、言うまでもない
二時間目は理科、言うことがない
三時間目は英語、、、、、、、、
定期テストは半日で終わるので残りの社会、国語は後日行われる。
そういえば神薙だが先ほど見かけたので生きてはいたようだ。声こそかけなかったが、まぁ一安心だ。
パンとコーヒー牛乳を食べる暇がなかったので帰りは普通電車の人が少ないところで食べることにした。今日は小一時間かけてゆっくり帰るとしよう。改札を抜け俺はガラガラの普通電車に乗った。
パンの袋を開け、コーヒー牛乳にストローを刺し、まるで張り込んでいる刑事の如く遅い朝食をとる。
3、4個ほど駅を通ったところで人は俺と奥に座っている男性二人になった。俺は飯を食い終わるとカバンにごみをしまいそのついでにケータイを取り出す。イヤホンを刺して音楽を聴こうとした瞬間、名前が呼ばれた。
「加藤じゃないか!」
それは幾度となく聞きたくないと願った声だった。その声の主は。
泥沼涼太
「偶然ですね」
偶然か必然か、俺の願いが口に出た。
「ああ!そうだな!そういえばお前呼び出した日に交通事故にあったんだったな。怪我の方は?」
まあそうか呼び出した本人だ事情を知っていて当然か。
「はい、ほとんど治ったようなものです。」
よく考えればそもそもこいつが俺を呼び出さなければければ俺が怪我をすることもなかったのだ。
「そういえばあの時なんで俺を呼び出したんですか?」
「ああぁそうだったな、電話では言いそびれていたか。お前、卒アル取りに来てないだろ?それ渡そうと思ってな!」
卒アルか。そういえば卒業アルバムは卒業式の写真を載せるから出来上がるのは後日ということだったな。すっかり忘れていた。
「そうだ!今から取りに来るか?」
「今からですか?」
確かに今日は時間に余裕がある、今日行かなければ後日連絡があるか、最悪の場合家に来る可能性がある。早めに対処しておいた方がいいか。
「あぁはい、いいですよ。」
会話が長持ちせず嫌な雰囲気で40分ほど。
電車が目的地に着き、扉が開いた。風と同時に嫌な雰囲気が吹き抜けた。
歩いて約15分、俺が三か月前まで通っていた中学校、についた。
泥沼につれられるがまま、俺は職員室前で待たされた。
三分ほどたち、泥沼が職員室から出てきた。
「悪い悪い、探すのにてまどって。」
濃い紺色でシンプルなデザインのアルバムを渡された。中を開いて見るのは家に帰ってからにしよう。
「ありがとうございます、じゃ僕はこれで」
「お、、おう!」
家に着いたのは午後2時、自室に戻りアルバムに目を通す。特にこれと言った目立った俺の写真はなく、隅に映っていたり、ピントが合っていなかったり、カメラに人間として認められてないのねそうなのね。
俺はアルバムをそっと閉じた。
ダッダッダッダッダ
この音は俺が母に起こされるとき、母が階段を上ってきたときの音だ。
ん?起こす?
「ヘッヒョウ!!」
俺の奇声と同時に母が扉を開けた。
「今何時?!!!」
今度は俺から声が出た。
「6時だけど」
終わった。昨日の二の舞だ。赤点必至か。ガクッ
「今日早く出るから飯いらない。」
「は?今からどこか行くの?」
「学校に決まってるでしょ」
何か気が付いたように、母は笑った。
「ふっふ、あんた、今は6時、18時の6時だよ?」
今は6時?午後の6時、、、、
俺はこのとき程世界の時間表記が12までだということを恨んだことはない。
「俺の、、、勘違い、、、」
蟻を殺されたと言わんばかりの勘違い。
「はいはい。ごはんできたから降りといで」
昼ご飯を食べてないので今日は箸が進みそうだ。
夜ご飯を食べ終わり俺は自室に戻る。明日もまだテストがある。少し勉強するとしよう。国語は多少できると自負しているので社会を重点的に覚えていこう。
テスト二日目、テスト勉強のおかげか、そこそこ解けた気がする。赤点は避けられただろう。2時間で終わった今日、3時間目は何をするのか。まぁ直にわかるだろう。
休み時間終了のチャイムが鳴り、担任の馬場が移動の指示を出した。
詳しいことは話されずそのままクラス全員、実際は学年全員が集められた。
しばらくして学年主任の先生が話し始める。
「来週からの野外合宿についてこの場を借りて話をします」
あぁなるほど、うっかり忘れていた。6月中旬に1年生全員で野外合宿、小学生的に言うところの山の学習に行くことになっていたのだった。
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