第10話 使い魔・翡翠
「タリスマンには五芒星がありますよね。この一角が琥珀なのです。使い魔は他に4体居ます。それぞれこの世界線でいうところの五行に対応しています。琥珀は金なのです」
陰陽五行とかいうやつか。漫画とかで偶に見かけるな。悪霊退散とかって。それこそ陰陽師の世界だな。
「水が魔術、木が回復、火が攻撃、土が守備、金が補助になります。エクソシスト様の戦闘を我々使い魔がそれぞれの特性を以って援助するのです」
「なんかRPGっぽくなってきたな」
ちょっとワクワクする。しかし僕はもうその戦闘に巻き込まれてるんだよな。画面の中での話なら良かったのに。
「一応、適性外の訓練も受けてはいるのですが、適性外の働きについてはあまり期待しないでください」
ん?
「っていうことは、守備が別にいるわけだし、琥珀の結界って紙装甲?」
「うう……そう言われてしまうと弱いのですが……」
まじで? 今襲撃されたら、俺死ぬんじゃない?
「一応補助なので、平均的に何でも熟せるといえば熟せますよ!? ……ただ、器用貧乏と言いますか……他の使い魔やエクソシスト様の力を引き出すのが本分と言いますか……」
さっきからごにょごにょしてるな。
「あっ、それでですね。話を戻しますと、もう一人くらいは使い魔を呼べるだけの時間が充填されました」
話を逸らした!?
「五芒星をなぞってみてください」
琥珀は乗っかっていたタリスマンからちょこんと下りると、鎖にぶら下がって僕の肩に乗った。
言われた通りに人差し指でタリスマンの五芒星をなぞってみる。光が溢れ出し、ぼふんと噴煙が上がった。
「まだ寝てたいのですぅ……」
欠伸をしながら現れたのはジト目の使い魔で、侍女のような服装をしている。髪を大きな2つのお団子頭に結い上げて、
楽器のウィンドチャイムのような髪飾りを揺らしていた。
「回復の翡翠ですね!」
琥珀は自信満々に言うけどさぁ、回復って攻撃を受けること前提ですよね?
倒すとか守るとかを引かないのは何でだ。確かにスマホゲームのガチャでも引きは悪いけれども!! まぁ、五回引けば全種類揃うだけスマホゲームよりはマシなのかもしれない。掛かっているのは金じゃなくて命だけども。
「翡翠です。御用もなくお呼び付けですか? マスター」
これまたいきなりえらいやる気がねぇのな。そんなに面倒臭そうにしなくてもいいだろうに。僕、泣くよ?
「エクソシスト様が暫しお留守にするのでお留守番を仰せつかったのです」
「琥珀しか居ないのですか?」
翡翠は常時ジト目で琥珀を見つめる。
「うう……そんな目で見ないで……。琥珀だって心細かったのですよ」
やっぱり一人じゃ不安だったんじゃないか! 口では何とかなる風なこと言ってたくせに!
「補助と回復ですか……。マスターをお守りしきれるかどうか……。」
意外と現実的だな、翡翠は。良かった、まともな人(?)で。
「でも次の充填完了までにはまだ時間が要るのです……。琥珀たち二人でどうにかしないと……」
みみっちい会議は続く。どうでもいいが俺の両肩に乗って顔を挟んで会話するの、やめてくれないかな。息が掛かってこそばゆい。しかも内容は先行き不安そのもので。この二人で本当に大丈夫なのか?
「翡翠が来たからには魂を抜かれない限りはマスターの体力は回復し続けられます」
「いや、それ攻撃を受ける事前提だよね!?」
「見つかったらとにかく全力で逃げてください」
ええっ。何かもう不思議とか魔術とか関係ない。肉弾戦みたいな話の方向になってるがな。
「えいえいおーなのですよ」
「えいえいっおーう!」
「えいえいおう……」
ああ……不安だ。頗る不安だ。死神さんよ、出てきてくれるなよ。エクソシスト、転校とかいいから早く帰って来てくれ。俺、このままだと死ぬ。死ななくてもめっちゃ痛い目に遭うことが予想される。勘弁してくれよ……。守るって言ってくれたじゃないか。
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