第6話 夢のハーレム

 窓ガラスの補修は帰って来たエクソシストが最早魔法か何か分からないもので行ってくれた。家族にどう説明したものかと思いながら一人風が吹き抜ける部屋に取り残されていた僕は安心したものだった。

 しかし、死神はもう現れているのか。実感はないが、エクソシストの死の予言を思うと恐ろしい。そう思う一方、琥珀の事を考えてみる。人形という印象が強いのだが、なんというか、ある種の美少女フィギュアを思わせるのだ。ミニチュアの、低頭身のちんちくりんで、鞄にでも付けている子がいれば一発でオタクだと判断できるようなアレだ。

 琥珀の目はくりっとしていて黒目がちで、衣装もさることながら顔立ちもアニメチックなところがある。

 鼻が低くて額が広く、幼女的なバランスはその体格にうまく合致していた。

 琥珀以外にも使い魔は居るようだし、これはもしや俗にいうハーレム展開が期待できるのではなかろうか。

 エクソシストだって、現実と服装や瞳の色の違和感が勝って意識していなかったが相当な美形である。

 格好こそ純和風ではあるが顔立ちは西洋に通じるものがあり、美人が多いと言われる人種の混在地である東欧の辺りの雰囲気だ。

 交ざり物のように見えるから当然なのかもしれないが、鼻は高くてすっと通っているし、目はツリ目ながら大きく見開いていて東洋人特有の蒙古襞も存在しないし、平行の二重幅もかなり広い。絵に描いたような鼻から唇を通って顎へと渡るEラインも完璧に整っている。いつもどこか機嫌が悪そうに眉を顰めているが、それを差し引いても文句のつけようのない目鼻立ちなのだ。

 僕が自分の死の危険に瀕しているというのにこんなことを考えるのも妙な話ではあるが、今までそれだけ女性というものに縁がなかったということをご理解いただきたい。急に美人や美少女が周辺に集まりだしたのだ。ある意味では契約した『僕』に感謝するべきなのかもしれない。それにしては魂を抜かれるという対価は大きすぎるが。

 半分は冗談としても、エクソシストや琥珀が僕の元に来てくれたことには何かしらの意味があるはずだ。退屈だった日常はここ数日ですっかり覆ってしまった。


 そんな美少女たちが僕の命を守るために日夜戦ってくれているのだ。妙に優越感を覚える。

 エクソシストに関しては素っ気ないものの面倒見はいいと見えて、彼女が最初に言った通りにタリスマンさえ掲げればすぐにでも駆け付けてくれる。

 これまで大した用事で呼んではいないから、期待外れを思い切り顔に出して悪態を吐くのであるが、内心僕の命が狩られていないことに安堵を覚えていてくれているといいというのは僕の勝手な希望的観測である。

 危険ではあるが、僕のために動いてくれている彼女たちの勇姿を見てみたいと思い始めた。望まなくてもいつかは訪れるのかもしれないが、死神との闘いとはどういったものであろう。

 琥珀は補助だと言っていたから、RPGなんかの発想で行けば味方強化のバフや敵弱化のデバフなんかの使い手と思われる。陰陽師然とした服装から察するに、結界なども張るのだろうか。

 琥珀が補助として、他に攻撃特化や回復なんかもいるのだろうか。というか、使い魔は何人くらいいるのだろう。

 叶うことなら琥珀以外も可愛らしい女の子ならいいと思うのは、僕の人生において実に女性との縁がないことの証明にもなるわけだが。そんなことは放っておいてほしい。夢を見るのは自由なはずだ。

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