第2話彌生の相談

家に着いた彌生は、急いで自分の部屋に向かい着替えた。そして、慌てて手伝いに向かうと…


「彌生!!どこ行ってたの?」


「ちょっと…。」


「遅くなるなら、連絡ぐらいしなさい。お兄ちゃんが心配してたわよ!!」


「ごめんなさい。」


「次からはお願いね。ほら、仕事!!今日は、貸し切りの宴会があるからお料理運ぶの手伝ってちょうだい!!」


「うん。」


私は、母に言われて急いで兄の所に向かった。


「彌生!!どこに行ってたんだ!!遅いから電話したのに出ないし…心配したんだぞ!!」


「ごめんお兄ちゃん!今度は、すぐにお兄ちゃんに連絡するね!」


「当たり前だ!ほれ、料理出来上がってるから仲居さんと一緒に運んでくれ。」


「うん。」


私は苦笑いしながら、料理を運んでいく。


 翌日…剛好は朝から、自分の用事を済ませ家に帰るが…光龍の姿が見当たらない。

 嫌な予感をしながら、部屋に行くと…ベッドでまだ寝てる光龍の姿が!!


「ハァ~。やっぱりなぁ~、あんだけ言うてもアカンって…ほんま、手のかかる子やねぇ~。」


剛好は、呆れながらベッドに近づき


「光ちゃん!!起きなさい!!今日は、彌生ちゃんが来んねんで!!」


体を軽く揺さぶりながら言うが…ビクともしない。剛好は…小さいため息をして


「最終…手段やなぁ~。」


光龍の耳元に口をもっていきフゥーと息を吐いた。すると…さっきまでビクともしなかった光龍がバッと起き上がり


「何すんねん!!キッショイやろ!!」


「おはようさん。」


「何が…おはようさんやねん!!胸くそ悪い気分や!!」


「あぁ?今日は、彌生ちゃんが来るってあれほど言うてたやろ!!俺は、自分の使用を早く済ませて家に戻って来たのに…誰かさんが起きてないのが悪いんちゃう!!」


「……。」


「ほら、起きて顔洗って…ご飯作ったから食べて準備な!!」


「飯は…いらん。起きてすぐなんて食えへん。」


「あぁ?」


「…軽く食べます。」


「そうやね。ほら、早くな!!色々とする事あるから。」


剛は、呆れながら出て行く。それを確認して、小さい声で


「魔物より…アイツの方がコワッ!!」


光龍は、気だるそうに洗面台に行き顔を洗い下に行くとテーブルにはご飯が置いてあったので席に着き小さい声で


「頂きます。」


「光ちゃん!!それ食べたら片付けよろしゅうな!!俺…ちょっと買い出しに行くから!」


 剛好は、光龍が口に入れるのを確認してから出掛ける。光龍は…一口入れながら頷くとチラッと確認する。

 剛好が居なくなると…


「ごちそうさまでした。」


サッと片付けコーヒーを入れ煙管を吸う。ちょっとしてから着替えをしていつもの場所に移動をしてソファーに横になる。

 数分後…剛好が買い出しから戻る。台所を見るとちゃんと片付けられていたが…光龍が見当たらない…多分、あの部屋だろうと思い無視をした。チラッと時計を確認するともう少しで彌生ちゃんが来るので、慌てて自分の服を着替えに行く。


 一方、彌生も朝から手伝いをして時計を確認するとそろそろ出ないと間に合わないと思ったので


「お母さん…ちょっと人と会う約束してるから…上がっていい?」


「うん?あぁ…そうなの、大丈夫よ。あまり遅くならないようにね!!」


「うん。じゃ、行くね。」


私は…急いで着替え出る。電車に乗り、降りて歩きながら小さい声で独り言を言う。


「あぁ…何か緊張する。剛好さんは平気なんだけどな~。光龍さんが…苦手…何だよなぁ~。あんなに綺麗なのに…なに考えてるか…分からないし…。」


 そんな事をグチグチ言っていると…いつの間にかあの館に着いていた。少し、驚きながら玄関に着くと…一瞬このまま、引き返そうか悩んでいると…


「あっ、彌生ちゃん!いらっしゃい。今、遅いから迎えに行こうかと思ってん!」


「剛好さん…こんにちは。今日はお願いします。あの~、これ私のお気に入り店のケーキです。どうぞ。」


「えぇ!!そんなん!!気を遣わんでええのに!!でも…ありがとうさん。」


可愛い笑顔を見せられ…私は照れながら


「いえ…これぐらいしか…」


「中…見てもええ?」


「あっハイ。」


剛好は、嬉しいそうに中を見ると


「うわぁ~めっちゃ美味そうやん!!ほんまにありがとう。はっ!!こんな所で…早よ入り!!今、お茶準備してくるから、昨日の部屋で待ってて!!」


「あっ、はい。お邪魔します。」


私は、靴を脱ぎスリッパを履き昨日の部屋に向かう。そぉーと開けると…昨日と同じ光景が…私は戸惑いながら光龍さんに


「こんにちは…光龍さん…。今日は、宜しくお願いします。」


光龍は目だけ、私を見てすぐに煙管に目を戻す。私は、昨日と同じソファーに静かに座ると…数分後…


「お待たせ!!今日は、ケーキに合うように紅茶にしてみたんやけど…あっ!!コーヒーの方が良かった?」


「いえ、私は紅茶の方がありがたいです。」


「ほんま?なら良かったわぁ~。これとケーキな?俺も!!んで、光龍はコーラな!」


「あれ?光龍さんのケーキは?」


「あぁ…コイツ…甘いのアカンねん!」


「え?でも…コーラって…甘いですよね?」


「アハハ…確かに!!」


「あぁ?炭酸飲料だからいいんだよ!!」


「はぁ~?それなら、他の方が良かったですね…すみません。」


「いいの!!気にせんといて!!俺は大好きやから。頂きます!!うわぁ~めっちゃうまっ!!」


「良かった。」


私は、緊張が解けて笑顔になると


「彌生ちゃん。やっと笑顔になった!笑顔の方がめっちゃええよ。なぁ…光龍?」


「あぁ?どうでもええ。」


「な!!お前!!」


「そないな事より…今日はお前達のお茶会か?なら…俺いらへんやろ?」


「すみません…。」


「また、お前は!!」


「で…?何をどうして欲しん?」


「その…どこから話ばいいのか。祖母が亡くなってから奇妙な事が…色々と…」


「奇妙な事?そんなら…その…おばあちゃんの亡霊?」


「亡霊とは…違うと思んですど…私の家は…代々旅館をしてまして…祖母が大女将兼経営者をしてまして。つい最近、それを私の母が受け継いたんですけど…その頃からちょっと奇妙な事が…。

最初は、母が店の帳簿を書いている時に…声が聞こえたそうです。最初は空耳と思って無視したそうなんですが…次に襖に目を向けると人影があったので声をかけ開けると誰も居ないみたいで…気のせいと思い閉めた時…はっきりと自分の名前を呼ばれたそうです。一回なら別にと思うんですけど…それが何回か続くと…。

次は、一番上の魁(かい)お兄ちゃんで…いつものように…料理の仕込みと研究している時に名前を呼ばれ振り向くと、そこに祖母が居たそうです。何か言っているみたいなのですが…聞こえず近くに寄ると消えたみたいで…。次が、二番目の正留(まさる)お兄ちゃんで…最近、祖父の書斎に出入りしているみたいで…自分の部屋に戻ろうと階段を降りてる時、落ちて軽い捻挫を…兄いわく誰かに押された気がするって…。」


「彌生ちゃんは?」


「私は…金縛りによく合うように…。最初は、疲れから来るものだと思ってたんですけど…あまり頻繁に起こると…ちょっと…怖いって言うか…。」


「確かに、頻繁は辛いなぁ~。ぅん?お父さんは?」


「父は…祖母…の…葬式帰り道…交通事故に…遭いまして…今もまだ…意識不明…で…」


私は…説明をしていくうちに悲しくなり目から目が溢れだし、我慢しようとするが止まらず


「えぇ!!彌生ちゃん?ごめんな辛い事思い出させて…泣かんといて?」


「…すみません…急に…涙が…うぅ。」


「えぇ…どないしょう?光龍?」


「はぁ?知らん。」


光龍は、完全に無関係と言わんばかりに顔を背けて煙管を吸う。その後の、剛好は優しい言葉をかけながらティッシュを渡したり背中をポンポンしたりする。その様子を気だるそうに見てこれ以上時間の無駄と判断した光龍は…足を組み替え手の甲に顎をのせ、やる気なしの声で


「で?俺達にどうして欲しい訳?なだめて欲しい訳?それとも…その原因を突き止めて欲しい訳?」


「ふぇ?その…原因と現象を止めて…欲しい…です。」


「はぁ?両方かよ!!」


「ハイ…。無理です…か…?」


「そないな事ない!!コイツに任したら解決や!!」


「な!!あんなぁ~、原因だけなら此処で出来んねん!!でも、それを止めるって事になるとお前家に行かなアカンし!!料金やて…なんぼになるかしらんで?これは、ボランティアちゃうし!!」


光龍は、呆れながら言う。


「お金なら何とかします!引き受けてくれるなら母に相談して部屋を用意します!!」


「はぁ~、お前さぁ~そんなすぐに人信用し過ぎちゃう?普通…警戒するやろ?」


「えぇ?この人達なら大丈夫と思ったので?」


「はぁ?何やその根拠?」


「…分からない…ですが…勘です。」


「…勘ねぇ~。くだらねえ~。」


「光龍!!彌生ちゃん、この件受けるで!!安心し?」


「はぁ?何でお前が決めんねん!!俺は、やるなんて一切言うてへん!!」


「あぁ?俺がええ言うてるから成立や!!」


「何でお前に権限があんねん?どうせやるのは、俺やろ?」


「ハイそうです。俺、陰陽師ちゃうし!!何や?意見でも?」


剛好は、ドヤ顔で言うので


「あぁ~わかったよ!!やりゃええんやろ!!やれば…面倒くっせ~」


これ以上、意見が言えない光龍は悔しさから投げやりな態度で部屋を出て行く。その姿に、私は不安になり


「あの~本当に大丈夫ですか?」


「ぉん。決まった以上、アイツはやるから心配せんでもええよ。」


剛好は、悪戯っ子のように笑うと紅茶を飲む。


「あの~気になってたんですが…お二人の関係って…?」


「う~ん?そうやね…しいて言えば…幼なじみ?」


「幼なじみ…ですか…。」


「ぉん。そないな事より…日取りやけど…決まったら此処に電話くれへん?」


剛好は、着物の袖から紙とペンを取り出し書いて渡す。私は、それを鞄にしまう。

 その後は、ケーキの話だったり小物だったりと女子トークをした。









  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る