変わった探偵事務所

ワカン

第1話一人の女の子

「何だろう…此処?」


 色々と考え事をしながら、ウロウロと歩いていたら此処で足が止まった。

 パッと見上げると、そこには妖艶な館がポツリと建っている。何だか分からないが、奥に入って見たいと衝動的に駆られ入口まで足を伸ばす。

 玄関口に立つと扉をそぉーと開け

「すみません。どなたかいらっしゃいますか?」

 声をかけるが…返事がない。少し迷いと不安を感じながらも、その奥に行って見たいと思ったので再度…

「すみません…。どなたかいらっしゃいませんか?…お邪魔しますね…。」

 一言、挨拶をして玄関にあったスリッパを履き奥に進む。

 どんどん奥に行くと、内装がとても不思議だ。洋と和の小物が所々にあり、色合いもユウモアがありながらも合っている。キョロキョロしながら歩いていたら…大きな襖が目についた。

 また、その向こうには何があるんだろうと好奇心が沸き…ゆっくりと近づき襖をそぉーと開け小さい声で

「すみません…どなたか…!!」

と言いかけながら中を見ると…そこには大きなインテリアソファーがあり、そのソファーに人が横だわって居た。

 その人は…シルク素材の白着物を着ているのだが足を組んでいるので下がはだけスラッとした白い足があらわなうえ、胸元も何故か少しはだけている!当の本人は、気にせず煙管を吸っていた。

 その人の横顔もあまりにも妖艶で綺麗だったのでつい…

「うわぁ~綺麗な…人…」

心の声が出てしまい、ハッと急い口を閉じたが…私の声に気づいたらしく顔だけこちらに向け

「誰…?」

 その顔は…色白で目は少しアーモンド型で鼻筋はスゥーとして口は少しぽってとして髪は黒で前髪が少し長めの男の人。

 そんな綺麗な人と目が合い動揺しながらも


「あ…あっ…あのすみません!玄関で声をかけたのですが…その…返事がなく…その…ちょっと…中が…見てみたいな…と思ったので…つい…」


「で…何の用なん?」


「その…此処って…何ですか?」


「はぁ?そんなん知らんと入って来たん?」


「はい…その…不思議な館だなぁ~って思いまして…すみません。」


「ふ~ん」


その人は、それだけ言うとそっぽを向きまた煙管を吸い始めた。

 私は、戸惑いながらもう一度話かけようとした時…

「光ちゃん!またこんな所で寝てアカンってなんべん言うたら…って…あれ?お客様?」


右奥の襖から、何だか独特な柄の着物を自己流に着こなした人が現れた。顔はベビーフェイスで、クリとした目と鼻は少しふっくらで口は薄いショートヘアーだが前髪は少し長めで斜めに流しる。


「えっ!あっ…お邪魔してます。」


「いらっしゃい。そんな所立ってないでこっちに入りやぁ~!ほら。」


可愛い笑顔で、私の腕を引っ張りながらソファーに座らせるので


「すみません…。勝手に入って…一応、声をかけたのですが…その…返事がなくて…」


「ぅん?そんなん気にせんといて、今お茶入れてくるから。」


「剛好~。俺、コーラ!」


「ハイハイ。ったくお客さん来てるならお茶ぐらい出してやぁ~!全く…お前って奴は…」


グチグチと文句を言いながら出て行くと、また2人きりになり気まずい空気が…

 チラッと見ると、その人はさっきと変わらない体勢で煙管を加えていた。その姿を釘付けで見ていると…


「…何…?」


チラッと目だけこちらを向け言うので、私は慌てて俯き


「いえ…何でもないです。」


数分後…


「お待たせ~。ハイ、温かいお茶な。あっ…後、ケーキもどうぞ。あっ、甘いもんとかアカン?」


「いえ、好きです。ありがとうございます。」


「ほんま?良かった~。いやなぁ~貰いもんなんやけど…一人で食べきれへんからどないしようと思ってん!ほら、お前のコーラなってか…いつまで横になってんねん!!ちゃんと座り!お客さんの前ではしたない!!」


そう言う彼は、ベッシと彼の足を叩くと


「イタイなぁ!何すんねん!ってかわざわざ此処に座らんくてええやろ!!狭い!」


「何が狭いねん!狭ないです!!ほら、こない余裕やないか失礼な!!」


「チッ、何やねん。」


「んで?今日は、どういったご相談で?」


「えっ?相談?此処って悩み相談所ですか?」


「へっ?あら?何も知らんと此処へ?」


「はい…。フラフラと歩いてたら此処の前に…そしたら…ちょっと中が気になってしまい…つい…すみません。」


「そっかぁ~。でも、知らずにって事は…何か悩みとかあるんちゃう?」


「悩み…はありますが…言っても…信じてくれないと思います。」


「そんなん言ってみんと分からへんよ?」


「でも…」


私は、話していいものか迷っていると…今まで無言だった彼が


「めんどくさっ!!ウジウジするぐらいやったら帰れや!!時間の無駄!!」


「なっ!!お前!!何ちゅう事を言うねん!!これだからアカンって!!」


「めんどいのは、ほんまの事やもん!!コイツの家系から不の気が流れてるし!!」


「だからお前!!」


その言葉に私は動揺しながら


「何ですか!!不の気って!私の事知らないのに変な事言わないで下さい!!」


でも、図星だったのでついカァとなり声を荒げてしまった。


「ほんまやで!失礼やで謝り。」


「嘘は言うてへんで?どうせ…普通の人じゃどないする事も出来ひんし。このままやと死人も出るで?」


「え…死人…ってどうすればいいんですか!」


「光龍!!どういう事やねん!死人って?」


彼は、煙管を吸いながらやる気なさそうな顔をするので


「教え下さい!!お願いします!もう…どうしたらいいか…こんな話は…誰にも出来ないし…した所で信じてもらえないだろし…私…どうしたら…」


自分で言っていくうちに…段々悲しくなり、涙が出た。


「えっ!どうしたん?泣かんといて?えっ…どないしょう…光龍…。」


急に泣き出した私に、焦りながらティッシュを渡す姿を見た彼は


「だから言うたやん!めんどい奴って!ハァ~、だから嫌やん!!こんな仕事…。」


「何を今更言うてんねん!!ってか、お前も何とかせい!!ってかお前のせいやろ!!」


「なんで?勝手に泣いたんのはそいつやろ?」


「!!やからお前は!!」


それから数分後…何とか落ち着きを取り戻した私は…


「すみません。急に泣いたりして…何故か…涙がこみ上げて…」


「大丈夫?」


「はい、ご迷惑おかけしました。」


「ほんまやで…あぁ~無駄な時間やった。」


「お前!!誰のせいで!!」


「?」


「はぁ~今更言うても…しゃーない。それより、詳しく教えくれへん?きっと役にたつで俺達?」


「ありがとうございます。お二人は…何を…?」


「あっ、自己紹介してへんかったね。俺は、神田 剛好(かみだ つよし)でコイツが神代 光龍(かみしろ こうりゅう)よろしゅうな!ちなみに…此処は拝み屋で現実では有り得ない事件や相談を受けてるんやで。そんで…この口が悪いのが一応…陰陽師。」


「拝み…屋…?彼が…陰陽師…?」


まだ、理解出来ないってか彼が本当に陰陽師なのかと疑った目で見ていると


「ほんまやで!口は、めっちゃ悪いけどこの世界では優秀で警察からも依頼とかくんねんで!!


剛好は、必死に説明するが当の本人は他人事のように煙管を吸いながら遠くを眺めていた。


「お前も何か言えや!!俺がアホみたいやろ!!」


「別に、信じられへんなら結構!!コイツの九十九家がどうなってしちゃったことないし。」


「えっ!どうして私の…」


「なぁ?」


「すみません。疑って…しまい…」


「そない気にせんといて。誰かてこんな奴が陰陽師ですって言うて信じる人おらへんって。それより、名前…まだ聞いてへん?」


「あっ、すみません。私、九十九 彌生(つくも やよい)です。」


「彌生ちゃんか…可愛い名前やね。」


そんな事言われた事なかったので、照れていると


「詳しく事聞きたいねんけど…時間とか大丈夫なん?」


「えっ?今、何時ですか!」


「ぅん?今、5時半ちょっと過ぎやけど…?」


「えぇ!!もうそんな時間何ですか!!私、帰らないと色々と手伝いがあるので…」


「そうなん!!それは大変やん!!送るで?話は明日でも聞くし?」


「えっ?聞いてくれんですか?」


「当たり前やん!!そない事より時間?」


「ハッ!!電車!!後…15分で来ちゃう!駅ってどっちですか?」


「いやいや駅まで送るで!車やったら間に合う」


「でも、ご迷惑じゃ…」


「そんな事あらへんよ!買い出しついでや!!忘れ物あらへん?」


「ハイ」


「ほな、行くで!光龍…片付け宜しく!!」


「はぁ?何で俺が?」


文句を言うと、剛好はキッと睨んだのでシュンと小さくなる。私と剛好は、バタバタと出て行く。車の中で剛好は


「さっきは、ほんまごめんなぁ~。あいつほんま口悪くて…本人は悪気はないねん。まぁ~それが一番たち悪いんやけど…。」


「いえ…私も失礼な事したので…」


「彌生ちゃんは、何も悪くないで?あっ…それより明日やけど…何時に来る?」


「うーん。お昼ってお邪魔ですか?」


「そうやなぁ~。1時以降ならありがたいねんけど…。」


「じゃ、そのぐらいにお邪魔してます。」


「ほな、明日待ってるわぁ~。駅、着いたで時間大丈夫?」


「はい、8分も余裕があります。ありがとうございます。」


「気をつけ帰り?明日な!」


剛好は、彌生を送って終わると自分の買い出しに向かう。


 その頃、光龍は片付けを済ましお風呂を沸かす。数分後…湧いた音がするとのそのそと風呂場に向かう。

 檜風呂に浸かり


「あぁ~疲れがとれる。」


光龍は、あまりの気持ちよさに寝てしまう。それから、遠くから声が聞こえるが聞き取れないので、無視をしていると…


「光ちゃん!!光ちゃん!!」


体を揺さぶられてやっと目を開けると…そこに剛好が居た。


「剛好…?何…?」


「何?じゃあらへんやろ!!風呂で寝たら危ないやろ!!呼んでもビクともせーへんし!!心配したがな!もう…上がりなさい。ご飯も出来たし。」


「あ…ぉん。」


剛好は、呆れながら出て行く。風呂から上がった光龍は、欠伸をしながら椅子に座り


「いつ戻ったん?全然、気づかんかった。」


「あんな~1時間は経ってますよ!毎度、毎度同じ事言わせないでくれへん?お風呂で寝るのはやめなさい!」


「ええやろ?めっちゃ癒やされる。」


「アホか!!癒やされるのは分かるけど…溺れたらどないすんねん!!いい大人何だから分かるでしょ?」


また、剛好に説教され頬を膨らませていると


「そんなん顔してもアカンで!!後…もう少しお客様に優しいくな!!」


「そんなん出来ひん!!」


どや顔で言い放った光龍に


「いやいや、そないドヤ顔されても…そうですかってなるか!!全く…あっ、彌生ちゃんやけど明日の1時過ぎに来るから。」


「彌生…って誰?」


「お前な!今日、来た子や!!」


「あぁ…アイツかぁ~。何や結局話すんかい。」

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