第14話 おにぎり

 すっきりと片付けられたミユたちの部屋。

 荷物はすべてトランクに納められ、部屋の床には複雑な魔法陣が描かれている。

 この魔法陣が起動する時が俺たちの別れの時だ。

 不思議なもので、俺にはまったく理解できない魔法陣の複雑な幾何学模様も寂し気な抽象画のように見える。

 心臓が締め付けられるような寂しさを、俺は顔に出さないように必死にこらえる。

 ミユも内心はどう思っているのかわからないが、いつも通りに見える。

 元気よく、純粋で、子供のようにコロコロと笑う。

 ミユは魔法陣の周囲に魔法石を設置し終えると、額の汗をぬぐい、小さくため息を吐く。

 かなりの集中力を要する作業だったようだ。 


「お腹が空いたのう。なにせ魔法陣の作成を頑張ったからのう」


 ミユの食いしん坊っぷりも相変わらずだが、これで最後の食事になるだろう。

 日本の食事が大好きだったミユとエレノワ。なんでも食べさしてあげたいが……。


「とはいえ、もうどこかに食べに行っている時間はございません。手早く済ませないといけませんね」


 エレノワが少し寂しそうに言う。


「うむ。今日を逃すと転移時間のズレが大きくなるからのう。遅参は許されぬ」


 ミユの父である王の誕生式典に出席するための帰還。

 それに間に合わなくなると、ミユは王位継承者として不適格とのそしりを免れないらしい。


「異世界転移は星の巡りによって時間のズレが変化するのです。そのズレが最小になる日が本日なのです。本日を逃すと、本当に式典に出られない可能性が出てくるのです」


 エレノワが俺のために補足説明を行ってくれる。

 説明してもらっても結局は理解できないが……。

 とにかくもう時間がないということは理解できた。

 せっかくの最後の食事、豪勢にいきたかったのだが……残念だ。


「じゃあ、なに食べる? なんでもいいよ」

「お、おにぎりが食べたいんだな?」


 俺の問いに即答するミユ。


「どうした、その放浪の絵描きっぽい喋り方は?」

「き、聞いたことがあるんだな。おにぎりを……、よ、要求するときは、こ、この喋り方が、い、正しいと。だから、お、おにぎりが食べたいんだな」


 どこで仕入れたんだよ、その情報は……。

 おにぎりを要求する時の正しい口調とかないし……。

 元ネタは知ってるのか?


「我々の世界でも山下清やましたきよし氏の名は届いております。おにぎりと白のランニングを誰よりも愛した男として、そして小型の草食動物のようにすぐに逃げ出すと」


 俺の困惑を察してか、エレノワが裸の大将情報をさりげなく添えてくれるが……。

 画家としての情報は!?

 おにぎりとか逃げ足の速さ以前に、偉い画家だからね!


「ツナマヨが食べたいんだな」


 ミユはなおも裸の大将口調で言う。


「画伯はツナマヨ食べないから!」

「じゃあ、別のでも構わないんだな。い、石ころが入ってるのでもいいんだな」

「そんな具はないよ。あとその口調はもういいから」


 画伯口調を止められつまらなさそうに唇を突き出すミユ。


「そうであるか。とにかく、おにぎりは美味しく手軽で具もいろいろ選べて楽しいと聞いておる。それにこの日本のソウルフードであるとも。最後の食事に相応しいとは思わぬか?」


 口調が戻り、いつもの王女らしい威厳のある言葉遣い。でも「最後の食事」と言った時だけ、かすかに悲しげな表情を見せた気がする。

 おにぎりくらい自分でも握れるが、時間がないのだから仕方がない。

 少し寂しい気もするけど、コンビニのおにぎりにするか……。

 ミユたちはコンビニが大好きだし。


「ところで、おにぎりとおむすびの違いがわからないのですが……」


 おにぎりを食べることに決まったところで、エレノワが俺に質問する。

 最後の最後までこちらの世界の見聞を広めようとしているのだろうか……。

 じつに真面目なメイドさんだ。

 それに対する答えなんだが……。


「諸説ある……」


 これは諸説あるとしか言いようがない。

 東日本はおむすび、西日本でおにぎりと呼ぶ説、

 おにぎりは三角、俵型、丸型など形状を問わず、おむすびは三角でないといけない説。

 おむすびは女性風の言葉でおにぎりは庶民的で男性っぽい言葉である説。

 ちないにセブンイレブン、ローソンでは表記はおにぎり。ファミリーマートはおむすびだ。

 そういう意味ではファミリーマートは女の子。セブンとローソンは男子だと言えよう。

 それはさておき、ミユがおにぎりを食べたいと言っているのだから、おにぎりを買わなければいけない。

 となると、ローソンかセブンだ。

 ミユがはじめて来たこちらの世界に現れ、初めて食べた物がローソンのからあげクン。

 ローソンに始まり、ローソンに終わるのも悪くないだろう。

 俺たちは、家から一番近いローソンへと向かう。


   ◆


「青いのう……、今日はいつもに増して一段と青い」


 ミユはローソンを見ながら、しみじみと言う。


「まことに。青うございます、空の青さに溶け込んで、なんとも美しく……」


 エレノワが言葉を途中で詰まらせる。

 エレノワにとってもこれがローソンの見納め。

 そんなことに感傷的になるなよ、とツッコミたいが、俺もそんな精神状態にはない。

 俺はこれからこのローソンの青い看板を見る度にふたりのことを思い出すのだろう。

 からあげクンを買う度に、ミユの無邪気な笑顔を。

 レシートを断る度に、エレノワの礼儀正しさを。

 使いどころがなくて、台所の引き出しに溜まっている、一リットルの麦茶パックを買った時についてくる長いストローを見る度に、姉妹のように仲睦まじかったふたりのことを。


「エレノワ、そんな顔をするのではない。街のほっとステーションに泣き顔は似合わぬ。笑顔で楽しもうではないか」


 ミユがエレノワを励ましながら、自ら先陣を切って店内へと入り、真っすぐにレジのすぐ隣のおにぎりコーナーへと進む。

 三段に渡って並べられる、バリエーション豊かなおにぎりたち。

 これはミユたちにとってこちらの世界の最後の食事である。


「種類がたくさんございますね。目移りしてなにを選んでいいのやら」

「そうであるのう」


 エレノワの言葉にうなずきつつ、ミユがチラリと俺を見る。

 なにを選ぶべきかアドバイスが欲しいのだろう。


海苔のりはパリパリとしっとり、どっちのタイプが好き?」


 おにぎりを選ぶ際に大きな分かれ道となるのが海苔のしっとりとパリパリだ。

 これは本当に好みとしか言いようがない。


「ふむ……私としては、ネトネトしすぎず、噛んでこないタイプじゃの」

「そんなのないから! っていうか、なにと間違えているの?」


 改めておにぎりを包む、黒いペーパー状の食べ物がであることを説明する。

 ローソンの海苔は瀬戸内せとうち産と有明ありあけ産を使用。パリッとタイプのしっとりタイプも美味いのだ。


「それは知っておる。海苔といえば海藻であろう。こちらの海苔は噛んでこないのであるか、それは漁民も安全であるのう」

 

 恐ろしいことにミユは間違えていなかった!

 異世界の海苔は人を襲うのか……。

 それじゃあ、パリッとタイプかしっとりタイプかどころじゃないな。

 まあ、それならば両方食べてもらえばいい。

 俺はおにぎりを何個食べるかから、アプローチしていくことにする。


「ふたりはお腹空いているんだよね?」


 その問いに猛烈にうなずくふたり。

 どうやらふたりともかなりお腹を空かせているようだ。


「それに、召喚魔法中は食事ができませんから、できるだけ食べておかないといけません」


 エレノワが主人であるミユを気遣うように言う。


成彦なるひこ殿はあの魔法でパッと現れ、パッと消えていると思っているかもしれぬか、異世界間を移動する召喚魔法は、到着まで時間がかかるのじゃ」

「あの空間に時間という概念があるのかすら、わからないのですが、体感で八時間ほどかかっている気がします」

「それに肌寒くてかなわぬのう」

「私はあの聞こえるか聞こえないかのブーンという音がどうも気になって……」

「たまに急に音が大きくなって、気持ち悪いのう」


 魔法陣の中にそんなに長くいるのか……。

 しかもそこはかと漂う冷蔵庫の中っぽさ。

 それならばしっかりと食べておいてもらわないと。


「じゃあ、おにぎりは腹ペココースで三つでいいかな?」


 俺の言葉にうなずくミユ。


「すべて成彦殿お任せしよう。最後の食事である、失敗したくはない」


 こうして俺はおにぎり選びを任されたのだが……。

 俺はおにぎりは一種のコース料理だと思っている。

 三つならば、最初のひとつは前菜的に、ふたつ目はメイン、そして三つ目は〆的に。

 厳しい召喚の旅に出るふたりに俺がしてやれることはおにぎりを選んであげることくらい。

 ならば最高の三つを選ぼうじゃないか。

 まずひとつ目に食べるべき前菜的おにぎりは食欲を増進させること。

 あっさりとしつつも胃を食事モードにし、次のおにぎりを食べたくなるような、そんなおにぎりがいい。スタンダードなところだと、梅かわかめご飯おにぎりだが、ローソンであれば、ちりめん山椒おにぎりだろう。

 そして二つ目、ここでがっつりとしたおにぎりを食べる。肉系、マヨ系などこってりとした味わいのタイプを選択。ローソンならではと言えば、てっぺん盛り直火焼牛カルビを選びたいところだ。

 そして三つ目はおにぎりらしいおにぎりで〆たい。俺が調べたところ、おにぎりの具一番人気は鮭、キングオブおにぎりの具である鮭で締めくくるのが相応しいだろう。

 これで海苔もないタイプとしっとりタイプ、パリパリタイプすべてを含んでいる。

 これが俺のおにぎり感すべてを込めた、おにぎりチョイスだ。

 それを三人分カゴにいれ、会計する。


   ◆


「お、お腹ペコペコなんだな、は、早くおにぎりを食べたいんだな」


 家に戻ると、ミユの口調は再び画伯モードへと変わっていた。

 どうしてもおにぎりを食べる時はこの口調になりたいらしい。


「お、おにぎりに、や、野獣のように、むしゃぶりつきたいんだな。く、喰らうだけ、喰らって、残りは、に、握りつぶしたいんだな」


 山下清はそんな乱暴なキャラではない!

 どうなってるんだ、異世界での画伯のイメージは……。

 とにかく時間もないし、ミユは画伯になってしまうほど、お腹ペコペコの様子。

 さっそくおにぎりを食べることとする。


「まずはこれから」


 俺はそう言うと、ちりめん山椒おにぎりをミユとエレノワに配布する。

 この順番で食べると決めて買ってきたのだ。順番だけは守ってもらわなければいけない。


「いい香りがしますね」


 エレノワが山椒の香りうっとりとしている。

 そもそも〝椒〟とはかぐわしいとの意味がある。山にあるかぐわしい物、それが山椒なのだ。

 その香りに誘われて、ぱくりとひと口頬張るエレノワ。


「なんとも優しいお味です。魔法陣のチェックなどで張りつめていた気持ちがほぐされていく気がします」


 ミユもその言葉に釣られて、ちりめん山椒おにぎりを頬張る。

 その瞬間、ミユの顔がぱっと明るくなる。


「う、美味いんだな。こ、この、ふ、付着している、こ、小魚がゴ、ゴミ、みたいだけど、美味いんだな。ゴミのように、美味いんだな」

「その口調、もうやめなよ」


 本人は楽しいみたいだけど、キャラがブレブレで、もう誰なんだかわからない状態になっている。


「不思議なものじゃ、食べれば食べるほど、食欲が増す。これが成彦殿の意図であるか」


 ようやく口調を戻したミユは夢中でおにぎりを頬張り、あっという間にひとつ平らげてしまった。

 ならば続いては、てっぺん盛り直火焼牛カルビだ。


「こ、これは、先ほどのおにぎりとはまるで違うのう。まるで別の料理かのようじゃ」


 ミユはてっぺん盛り直火焼牛カルビを頬張りながら、目を丸くしている。

 たしかにこの味わいは、ちりめん山椒とはまったく違う。

 コンビニのおにぎりとは思えないしっかりとした旨味の肉。

 そして甘辛のタレ。これがご飯に合う。

 ご飯は偉大だ。

 ちりめん山椒にも合い、テリヤキっぽいタレにも合い、マヨにすら合い。野菜に合い、魚に合い、肉に合う。たぶん、未発見のブラックマターを具にしても合う。

 そのなんにでも合っちゃう圧倒的コミュ力を凝縮した食べ物。それがおにぎりなのだ。

 そんなことを考えているうちに、ふたりともてっぺん盛り直火焼牛カルビを完食している。

 いよいよ〆の鮭を配布する時が来た。

 なんだかんだ言って、おにぎりの具といえば鮭。

 山下清画伯が食べるおにぎりにてっぺん盛り直火焼牛カルビは似合わない。やはり鮭だろう。

 千と千尋の神隠しでハクが千尋に与えるおにぎりは、多分ただの塩おにぎりだろうけど、仮に具に鮭が入っていたとしてもセーフだが、あれの具がてっぺん盛り直火焼牛カルビではやはり変だ。

 鮭のおにぎりを食べずして、おにぎりを食べたことがあるとは言えまい……。


「ふぬぬ、むむう……どりゃあ!」


 ……って考えているうちにミユがおにぎりの包装をぐちゃぐちゃにしてしまった!

 ちりめん山椒とてっぺん盛り直火焼牛カルビは普通に封を切ればいいだけのタイプ、鮭はパッケージを縦に割ってパリパリの海苔を装着させるタイプ。

 そうかこのパッケージ初めてだったか。それにしたって、感覚的にわかりそうなものだけど……。

 俺は正しく剥いたおにぎりをミユに手渡し、海苔がくちゃくちゃになっちゃった方を自分の物として貰う。

 最後に食べるおにぎりが海苔くしゃくしゃではかわいそうだ。

 俺の渡したおにぎりにかぶりつくミユ。


「これが、成彦殿の言っていたパリパリであるか……。たしかにパリパリしているとより美味であるのう」


 しみじみと味わうミユ。

 どうやらミユはパリパリ派だったようだ。

 しかし、いまさらパリパリ派であったことがわかったところで……。

 あちらの世界の海苔は人を襲うわけだし……。

 しかし、こちらからしんみりするわけにもいかない。

 なにせ俺は異世界行きを断った側。

 せめて明るく見送ってあげたい。


「おにぎり買いすぎて、一個余っちゃったりする時は、インスタントの味噌汁を冷やで作って、そこにキュウリとかミョウガなんかを刻んで宮崎の冷汁風にすると、それも美味しいよ。ローソンのだと燻製たらことか冷汁アレンジが合うね。いつか、異世界にもローソンができたら、やってみるといいよ」

「私が王座についた暁には、必ずやローソン異世界支店を誘致するであろう。ふむ、宮崎みやざき風であるか……。その地にも行ってみたかったのう。それに、もっと食してみたいものもたくさんあった……。吉牛よしぎゅうにも行ってみたかったし、大戸屋おおとやのチキン母さん煮も食してみたかった。チキン父さんの様子も確認しておきたかった……」


 ミユは最後のおにぎりを食べ終わると、小さくため息を吐く。

 ……チキン父さんは存在しないので、様子の確認は必要ない。

 そう教えてあげたいところだが、もはやミユにこちらの世界の情報は必要ない。


「姫様、それではそろそろ」

「うむ、頃合いであるの」


 席を立つふたり。

 居候していた部屋へと戻る。

 ついに別れの時だ。

 ミユが魔法陣の中心へと立つ。華奢な身体を真っすぐに伸ばして、胸を張り、堂々と俺を見つめている。その姿はいつもよりも増して、王女としての威厳を感じる。


「それでは、本当にお世話になりました」


 エレノワが懐からこれまでの物より大きな魔法石を取り出し、セットすると、ゆっくりと魔法陣が輝きはじめる。

 魔法石がすべて所定の位置に設置されたことにより、魔法陣が作動したようだ。

 ミユの顔も青白い幻想的な光に照らされている。


「私はまだ諦めてはおらぬ。一度の失敗で諦めるような人間は国を統べることは出来ぬからのう」


 ミユはそう言うと、にっこりとほほ笑んだ。

 最後の最後まで気丈。実にミユらしい。


「また来なよ。いつでも歓迎するからさ。チキン母さん煮を食べよう」

 

 ミユの笑顔に釣られて俺も笑顔になる。


「ふむ。莫大な経費がかかるからのう。何年かかろうとも。必ずや官僚どもを締め上げて、予算をぶんどってみせる」

「ミユならやれると思うよ。やっていいのか俺にはわからないけど」


 ますます輝度を増す魔法陣。

 光がまるで風を起こしているかのように、ミユの髪とスカートをはためかせる。

 ついに、ふたりの身体が魔法陣の中へと沈みはじめた。


「成彦殿、最後にこれだけ。成彦殿への求婚の申し込みの件じゃが……、決して政治のためだけだったと思わないで欲しい」


 どんどん光の強さは増し、もはやふたりの姿を見ることも難しい。

 ミユの声もすぐ近くにいるはずなのに、随分と遠くから聞こえてくるかのようだ。

 それでも俺は必至に目を凝らし、ミユの声に耳を傾ける。


「最初はもちろんそうであったが、いまは違う。もし王女でなくとも、心から……。慕って……」


 閃光弾が爆発したかのように一気に光が強くなる。

 反射的に目を閉じ、身を屈める。

 俺の身体を貫くように吹き抜ける光の風…………。


 目を開くとふたりの姿は既になかった。

 あれほどの光を放っていた魔法陣も跡形もない。ただの空き部屋。

 窓の外から子供のはしゃぐ声が聞こえるだけ。


 ――もし次にミユたちが来てくれたら……。


 俺はその想いを自分でかき消す。

 戻ってくることを期待して、ずっと待ち続けるのはつらい。

 これが俺の日常なのだ。

 ミユとエレノワも本来の世界で懸命に生きることだろう。

 俺もこっち世界を生きていこう。


 ――ありがとう。


 俺はふたりに心の中で礼を言い、空っぽの部屋を出て、自分の部屋へと戻る。

 ふたりのおかげで、この世界が平凡に見えるのは自分が平凡だからだと気づかせてくれた。

 自分の心がキラキラと輝いていれば、この世界もまた輝きを放ってくれるのだ。

 俺もエクセルの練習でもしてみるか……。

 それともWEBで小説を投稿でもするか……。

 必死にパソコンと格闘していたミユを思い出しながら、俺は自分のノートPCを開く。

 電源をオフにしているノートPCにはぼんやりと俺の顔が映る。

 まったく、実に冴えない表情をしている。

 いつまでも寂しがっていても仕方がない。

 そんな俺の顔をかき消すべくPCの電源を入れようとしたときだった。

 モニターが勝手に光を放ち始めている……。

 いや、違う。これは光を反射しているのだ。

 振り返り、光の発生源を確認する。

 床のフローリングを浮かび上がる何本もの光の帯。

 それはさらに数と強さを増し、五芒星と六芒星を組み合わせたような、複雑な模様を描き出す。

 

 ――それはいわゆる魔法陣であった。

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