第5話治療方法
子供たちが寝静まった後、居間へ行き、スマホのロックを解除する。
松原先生に提案された、セカンドオピニオンをするに当たって、まずは自分が色々と調べなければならない。
本屋に行って調べるよりも、今は便利なネットだ。
「膵臓癌 セカンドオピニオン」
「膵臓癌 治療」
「膵臓癌 完治させるには」
色々なタグをつけて、検索をする。
検索結果一覧を読み進めると、「APT分子免疫治療法」という言葉を見つけた。
その文字をクリックする。
「症例数日本一、当院では、癌のスペシャリストがチームを組んで、あなたの癌に、共に立ち向かいます!」
スマホを操作する指が止まる。
治るのは...初期症状だけなのか...??
私のように、余命を伝えられた患者には、その治療は出来ないのだろうか...。
再び、画面をスクロールし、自分の中の「疑問」の答えを探す。
画面の左端のメニューに、「治療対象」という言葉があるのに気付いた。
心音が自分でも外から聞こえるような程高まる。
その文字をクリックすると、ステージ事に詳しい説明が書いてあり、その言葉の隣に、「治療対象」と、記載されている。
合否採決をされているかのような気持ちで、下へ読み進める。
唯一一つだけ、「治療対象外」の文字が見えた。
ドクンッと、大きく心臓が脈を打つ。
「食事が出来ず、自立歩行が出来ない」
「治療対象外」
私...ご飯食べれてる...。
私……自分の足で歩けてる...。
出来る...この治療、セカンドオピニオン、出来るんだ...。
必要事項を読み進める。
セカンドオピニオンを受けるに当たって、の注意事項。
保険適応対象外の為、費用は全額自費になります。
ご相談の際は、時間で費用が掛かってくるので、聞きたいことなどがあれば、簡潔にまとめておくと、費用がかさばらずに済みます。
主治医の紹介状と、検査結果をご持参下さい。
「主治医の紹介状と検査結果...。
お話しなければ...。先生に。」
明日やることは分かった。
あとは、きちんと説明できるように、今日はもう寝よう...。
_____________________…
翌朝、子供たちを見送った後、病院へ向かった。
「今日はどうしました?入院するお気持ちになられましたか?」
何度も、無理難題をお願いしていた私に、「今日はどんなことを言いに来たのか」と少し、面倒くさそうな表情で、椅子の背もたれに寄りかかる。
「あの...セカンドオピニオンを受けてみようかと思うんです!
先生の治療が納得いかないわけでないんです、ただ...
やっぱり、あんなに小さな子供たちを置いて逝くのは...あまりにも酷だと思ってしまって...
諦めたくないんです、私!!
お願いします!!紹介状、書いて頂けないですか!?」
ぎゅっと目を瞑り、セカンドオピニオンの意思を伝える。
「セカンドオピニオンねぇ、やっても変わらないとは思いますけど、まぁ受けるだけ受けてみたらいいんじゃないですか?
紹介状と検査結果はご自宅に送っておきますので」
溜息混じりにそう言うと、出口へ促される。
「ありがとうございます!!!
ありがとうございます!!
宜しくお願いします!!!!」
診察室のドアの前で深くお辞儀をし、受け付けで支払いをすると、足取りが軽くなって家に帰れた。
治るかも知れない、そこだったら。
家に着くと、インターネットで調べた病院へ電話をかけてみる。
事情を話し、先程、セカンドオピニオンを受ける旨を主治医へ伝え、紹介状も書いてもらえることなどを話した。
「そうですか、かしこまりました、では、紹介状が届きましたら、予約のお電話をもう一度して頂けますか?」
「はいっ、わかりました!!では、宜しくお願いします!」
放課後デイへも、電話をかける。
松原先生へ取り次いで貰い、保留のメロディを、高鳴る気持ちで聞いていた。
「あ、もしもし、お電話かわりました、松原です。」
「ショウの母ですが、昨日はありがとうございました!」
「どうですか、イイ情報は得られましたか?」
「はい!早速、主治医の先生にも先程お話をさせてもらって、紹介状と検査結果を頂けることになりました!」
電話をしながら、顔が綻ぶ。
「そうなんですね、私も、色々調べたのですが、免疫治療というのが良いそうなんですよ!」
「「APT分子免疫治療法」」
2人の声が重なる。
「同じことを調べていたんですね〜フフフっ。」
「では、病院も、同じ所を調べていたんですかね?」
「「ABCクリニック」」
またまた、言葉が重なる。
「プッ、アハハハ」
「フフフっ同じでしたね」
「そうですね、セカンドオピニオン、上手くいくといいですね。」
「はい、セカンドオピニオンを勧めてくださって、ありがとうございます!」
電話を切り、カレンダーの、今日の日付に丸を付ける。
「紹介状と検査結果は郵送で家に届く」
赤いペンでそう記入し、カレンダーを眺める。
この日付の何処かで、セカンドオピニオンが受けられているのかもしれないな...。
どうか...うまく行きますように...。
カレンダーに手を合わせ、目を閉じて祈る。
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