第1話
(こんな世界になんの意味があるんだろう……)
そんなことを考えている少女がいるのは、自らが通っている学校の屋上。
年齢は15歳。春に高校生になったばかりの女の子。
腰付近まで伸びた綺麗な黒髪は、秋になったばかりのこの季節の少し寒くなった風を受け、絹糸のように靡く。
制服のポケットに入れていたスマホを取り出して、メール画面を開く。そしてとある人物の名前を打ち込んだ。
「噂の……死神様……」
そう呟いて、馬鹿らしくなったのだろうか?名前を入力しただけで、それ以上は何もせずスマホを締まった。
夜も更けた時間に侵入し屋上にいる彼女は、屋上の縁に立ち空を見上げる。
そこには柔らかな光で夜の世界を照らす丸い月が夜空に浮かんでいた。
そして静かに瞼を閉じる。
(アイツらの笑い声……本当に不愉快!)
“それ”を思い出した彼女は、眉間にしわを寄らせ、目を開く。その瞳には夜より深い黒色の光が宿っている。
少女は両手を広げ、深呼吸をした。
(だから、これで……)
少女は前へと一歩を踏み出す。当然そこには道はない。
鳥の様に翔ぶことも出来ず、重力へと導かれるようにその体は地面へと引き寄せられた。
(終わり……)
落下していく中で少女が抱いた言葉。
その“音”が彼女の耳に届いたかどうかは分からない。
だがその音を例えるなら『グシャッ』という不吉極まりない音は、静寂の夜に異質さを響かせるのだった。
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