殯宮 (2)

「では、私がいってまいります」


 名乗り出た武人が、馬にまたがって一行のもとを去りゆこうとする時。日女が、しめ縄を編んでいた手を止めて、天の方角を見上げた。


「何か、来る――」


「手を止めないでくれよ。あなたがその神具とやらをつくらないと、我々は次へ進めないのだろう?」


「ま、まあまあ、八重比古さん。それより、日女、何かって――?」


 不機嫌に咎めた八重比古を宥めて、狭霧も、日女の目が向く方角を見た。


 そちらは東の方角で、意宇おうの都や、神野くまのがあるあたり。そこには、穏やかな春の空が広がっている。薄青の色をした天には、薄い白雲がいくつも筋をつくって流れていて、時々、鳥が横切っていく。


「――」


 日女は茫然として、身体が固まったように身動きをしなくなった。


「何かあるの? わたしには何も見えないんだけど……」


 狭霧がさらに目をこらした時、ぐいと腕が引っ張られる。高比古だった。


「いやだ」


 狭霧の腕を掴んだ高比古は、立ち上がると、進んできた方角へ向かって飛び出そうとした。


「ちょ、ちょっと!」


 狭霧がそうはさせまいと力を込めても、高比古は聞く耳をもたない。狭霧を引きずるようにして道を逸れ、草むらに入った。


「いやだ。会いたくない」


「会いたくないって、誰に? 待って、高比古、待ってってば――!」


 高比古の足が緑の野に入ると、日女が目をむいた。


「おやめください、高比古様。私の結界を一歩でも出たら……武人ども、高比古様をおさえろ!」


「偉そうに――」


 八重比古はぶつぶつといったが、結局日女に従って、高比古の進む方向へ先回りをすると、両腕を広げて立ちはだかった。


「高比古様、どうなさったのです。あの巫女のもとを離れてしまっては、まずいようです。みな、手伝え!」


 武人たちは、総出で高比古を取り囲み、押さえた。


 騒動が目に入ったのか、馬に乗ってその場を離れていた武人までが戻ってきて、高比古を押さえる輪に加わる。


「放せ!」


 高比古は暴れ続けて、押さえつける腕の隙間から飛び出ようと手足を動かす。


 高比古の半身が何度か輪の外へ飛び出そうになると、日女はため息をついて嫌味をいった。


「何人がかりだと思っているんだ? 武人なのだから、腕っぷしくらい自信があるのだろうが。不甲斐ない――。すぐさま高比古様を私のそばにお戻ししろ。そうしないと、高比古様は、〈御津〉の化け物に食われるのだぞ?」


「食われるだと? ということは、〈御津〉というのは化け物なのか!」


「どうでもいい。人は、自分にとって都合がよければ神、不都合なら化け物と呼ぶものだろうが? 私は知らんし、あれが神だろうが化け物だろうが、どちらでも構わん。食われるといったが、食われると思うかそうでないかも、どうでもいい」


「投げやりな……なんて巫女だ」


 文句の応酬とばかりに、八重比古は不満を訴える。


 そして、それまで以上に高比古を囲いこむと、草むらの中でじわじわと追い詰めて、高比古の足を道の上へと戻した。


「高比古様、どうなさったのです。お気をたしかに――!」


 狭霧は、腕を高比古に引かれていたものの、武人総出のもみくちゃの押し合いで、いつのまにやら輪の外に押しやられていた。


「もう、なんなのよ」


 あちこち引っ張られてよれた衣を直し、崩れた横髪を耳にかけ――。狭霧は、日女を探した。


 いまや日女は、騒ぎから目をそむけて、東の空を見つめている。


 狭霧は、そばに歩み寄った。


「ねえ、何が来たの? どうして高比古があんなに脅えているの? 厄介なものが来るの?」


「おまえに話して、どうにかなるのか?」


 日女は冷笑したが、日女のこういう態度に狭霧はもう慣れていた。


「それは、どうにもならないわよ。でも、高比古があんなに脅えているんだもの。ここから逃げ出したくなるほど苦手なものが来るなら、わたしは、あなたを振り切ってでも高比古と一緒にここを離れるわよ」


 狭霧は口調を強めた。


「ねえ、教えて。いったい何が来るの? 高比古があんなに嫌がっているのよ? 教えてもらえないなら、わたしは高比古を信じて、あなたから離れるほうを手伝うわ」


 不機嫌にいった狭霧へ、日女は小首を傾げてみせた。


「なぜ高比古様が脅えているか? 知らん」


「――知らないって、無責任ね。じゃあ、いったい何が来るのよ」


「べつに、脅えるようなものではないと思う。神野の大巫女だ」


 狭霧は、天を見つめて眉根をひそめた。


「神野の大巫女様?」


 日女の目が見つめる方向には、はじめ何も見えなかった。しかし、じっと見つめていると、しだいに薄青の春の空には、鳥の群れに似た陰りが現れ始める。烏や雁など、大型の鳥の群れに見えたが、近づいてくるにつれて、もっと小さなものの集まりだとわかる。陰りをなしているのは、蝙蝠こうもりや羽虫のように、小型の身体をもつものに見えた。


 黒の陰りとなったもやの塊は、ゆっくりと天を駆けてくる。


 さらに近づいてくると、蝙蝠や羽虫とも違うことが、狭霧の目にもわかった。


 まず、色が違った。そのもやは暗い色をしていたが、黒ではなく、赤黒かった。


 狭霧は、はっと息を飲んで視線を落とした。目がいったのは、日女の腰元。そこには、拳大の小さな壺が結わえられている。


(あれは、この壺の中身だ。血だ――)


 日女は眉の上に手で笠をつくって、やってくる赤黒いもやを見つめていたが、ある時、奥歯をぎりと噛んだ。


「人を運んでいるな。――須佐乃男だ」


「えっ、おじいさま?」


 狭霧も、眉の上に手のひらを重ねた。


 目を凝らすと、赤黒い色をした小さなもやの中に人影があるのが見える。人影は二つあり、一人は身体が小さく、長い裳をなびかせている。一人は身体が大きく、腰にきらりと輝く鉄の塊――剣の鞘を提げている。


 日女は、やってくるもやから目をそらすと、忌々しげにいった。


「また、鹿が一頭死んだな。いや、二人運んでいるんだから、二頭か」


「えっ?」


「哀れな――くそじじいのために殺されるなど」


「――えっ? くそじじいって、それ、もしかして、おじいさまのこと?」


 須佐乃男は出雲の賢王と呼ばれ、出雲だけにとどまらず、近隣諸国でも勇名を誇る老王だ。


 今の王、大国主と彦名すら一目置く老王のことを、そんなふうに呼ぶなど――。


 狭霧は耳を疑ったが、日女はかえって不機嫌にいった。


「それ以外に誰がいる? 大巫女のことを呼ぶなら、くそばばあと呼ぶだけの見識は私にもある。大巫女は女で、くそじじいではないからな」


「見識とか、そういう問題じゃなくて……」


「くそじじいをくそじじいと呼んで、何が悪い? もういい、おまえのじいさまがしゃしゃり出てきたからな、私は知らん」


「ちょっと……知らないって、日女――」


「知らんものは知らん」


「日女!」


 日女はへそを曲げてぷいと背を向け、高比古が武人に取り囲まれている道の端より、さらに奥への草むらへ遠ざかってしまった。


「武人ども。もう高比古様を道へ戻さずともよい。いまは私がここにいるし、これからは、大巫女が高比古様をお守りするはずだ」


 日女は渋々といい、草むらの上に腰をおろしたかと思えば、ばたんと足を投げ出す。


「ねえ、ちょっと、日女」


 日女を目で追い、それから八重比古たちに囲まれる高比古を見て、やって来る赤黒いもやを見て――狭霧は、肩を落とした。


「いったい、なんなのよ――」


 そのうちにも、赤黒いもやは天を滑りつつやってくる。近くに見えるようになると、たしかに、もやの中にある姿は、須佐乃男と神野の大巫女のものだった。


 やってくる奇妙な靄を見上げて、八重比古たちはぽかんと口をあけた。


「空を飛んで、いらっしゃった……?」


 狭霧も同じ思いだった。


「鹿の血――っていうことは、もしかして、日女もああやってここまで来たの?」


 しかし。日女はすでに、われ存ぜぬという風に背を向けて、知らんぷりを装っている。


「もう……」


 日女の態度に呆れつつも、狭霧は一行の先頭に立って、やって来た祖父を出迎えた。


 野に降り立つと、須佐乃男と大巫女を包んでいた赤黒いもやは、ふっと泡がはじけるように小さく分かれて、強く吹いた一陣の風にそよがれ、薄れていく。


 地に足がつくと、須佐乃男はつま先を浮かして、一行のもとへ近づいてきた。


「おじいさま、あの、高比古が大変なんです。実は……」


 なぜ、祖父がここにやってきたのか。空を飛んで山を越える奇妙な術は、神野の神威となのか?


 尋ねたいことは他にもあったが、まずは経緯を説明しようと、狭霧は一歩を踏み出して、祖父に話しかけた。


 須佐乃男は狭霧と一度目を合わせたが、すぐに目を逸らして、そばを通り過ぎた。


「狭霧や、おまえの話は後で聞こう。わしも大事な話がある。高比古はどこだ?」


 狭霧のそばをすり抜けた須佐乃男の目は、八重比古たちに囲まれてうずくまる高比古を向いていた。


 とうとう、お咎めか――。そこにいた全員がはっと息を飲み、広々とした野原が、しんと静まり返った。


 ざ、ざしゅ……と、須佐乃男のくつが土を踏む音が、奇妙なほどうるさく響き渡る。


 須佐乃男が足を進めるたびに、八重比古たち、高比古を囲む武人は、一人、また一人とそこを離れて場所を譲っていく。


 人々が固唾を飲んで見守る中、須佐乃男はまっすぐに高比古のもとを目指し、真正面までいくと、そこで歩みを止めた。


 須佐乃男が目の前に立っても、高比古は居心地悪そうにうつむくだけで、目を合わせようとしなかった。


 須佐乃男は高比古をじっと見下ろし、尋ねた。


「神野が、出雲の女神からの神託を得た。おまえも、何か聞いたか? 神野の大巫女は、神はおまえに何かを伝えたと聞いたそうだ」


 高比古は、答えない。唇を動かそうとすることもなく、ひたすらうつむいた。


 須佐乃男は、一度肩で息をした。


「――わかった。そういう時もあろう。神託の話を聞きたかったが、今はいい。しかし――」


 須佐乃男は、夢の中をさまようような今の高比古を許した。しかし、冷ややかな氷の拳で殴りつけ、手ずから現実に引き戻すように、須佐乃男は事実を伝えた。


「いま、どうしても報せなければならんことがある。――意宇の事代が、急報を伝えた。穴持の軍が、敗走している」


 その瞬間、高比古の顔がさっと上を向いた。まばたきを忘れたように、目は見開かれた。


 須佐乃男は、表情を変えなかった。老王は淡々と告げた。


「事代が伝えるには――穴持が持っていった戦船はすべて失われたらしい。しかし、兵の大半は生き残っており、陸路で出雲に向かっている。――奴らを、一人残らず出雲へ戻せ。急務だ」






「まぁた、くそじじいが出しゃばりやがって……」


 日女は、ぶつぶつと文句をいい続けた。高比古の身を守る役が日女から奪われ、大巫女に託されることになったからだ。


 日女の態度は悪かったが、須佐乃男も神野の大巫女も、咎めることはなかった。神野の大巫女などは、日女のことなど目に入らないとばかりに無視をして、淡々と準備を進めた。


 神野の大巫女の腰には、日女のものとほとんど同じ形の拳大の小壺が結わえられている。中に入っているものも同じで、大巫女が壺の封を解いて中に指をさしいれると、指は、ねっとりとした赤黒いものをすいくとった。血だ。


 赤く染まった指が、大巫女の頭上でさっと一振りされる。すると、指の先から霧状のもやが生まれて、一面に散る。それを何度か繰り返すと、もやは、人の身体を包みこむ大きさにまで膨らんだ。


 血の色のもやで包まれたのは、神野の大巫女と、須佐乃男、高比古、狭霧の四人。


 もやの中にいる狭霧から見ると、上下左右が赤黒く濁ったもので覆われていくのは、不気味な姿をした檻に囲われていくようで、少々心もとない光景だった。


「わぁ……」


 思わず、高比古の衣にしがみついた。しかし、高比古は、さっきまでの逃げ腰がうそのように、自分の仕事に没頭している。目を閉じ、小刻みに震える唇からは言霊が漏れ聞こえた。


 初めの音を立てて、四人の身体を包んだ赤黒いもやが、上空に浮かびあがる。


 滴のもやという手ごたえのないものに乗って宙に浮き、進み始めたが、奇妙なことに、浮いている感覚はなかった。足元がおぼつかなくなることもなく、ただ、もやの向こう側でびゅうびゅうと唸る風を、もやの中ではいっさい感じることができないのが不思議だった。


「すごい、風に乗ってる――高比古……」


 悲鳴混じりに、狭霧は高比古の腕にしがみついた。


 でも、高比古は答えない。まぶたを半分閉じて、心ここにあらずというふうにぼんやりとしている。狭霧の声に気づく様子もなかった。


 ふと、狭霧を諭す女人の声があった。


「話しかけようが、むりだよ」


 高比古を挟んだ向こう側から狭霧を覗きこんでいるのは、神野の大巫女。齢は五十半ばとの噂だが、肌に目立った皺はなく、齢よりずっと若く見えると狭霧は思った。いや、その女人は、もともと実の齢を感じさせない顔立ちをしていた。


 神野の大巫女は、日女と同じ神野風の姿をしていた。目尻に朱色の化粧をほどこし、丁寧に洗われた純白の衣装を身につけて――。


 大巫女は、朱で彩られた唇の両端をわずかに吊り上げて、笑った。


「〈みこと〉とは、人に命令を与える男王のことで、誰からも命じられることのない存在だ。見つめるものは出雲の大地で、出雲の母神であり、人の妻ではない。出雲が危機に瀕しているとあれば、それ以外を見ない。そうだろう?」


 大巫女の言い方は、判じものの問いかけをするようだ。


 言葉ではなく雰囲気で、狭霧はなんとなく意味を解した。しかし、納得する気はなかった。


(なによ、わかりにくい言い方をして――つまり、高比古が〈命〉だっていいたいのね? 〈命〉は出雲の王で、女神の夫になる人だって、日女が前にいってたっけ。だから高比古は今、わたしを見ないんだって、そういいたいのね?)


 狭霧は、高比古の衣を握る手に力を込めた。


「わたしは、高比古に命じているわけじゃありませんし、高比古の名前は〈命〉じゃありません。それに、高比古がいずれ〈命〉と呼ばれる出雲の王になるにしても、王には、いろんな人がいるはずです。高比古が、あなたがおっしゃる通りの人になるかどうかは、まだわかりません。高比古だって、そういうと思います」


 応戦するように答えると、大巫女は驚いたといわんばかりに口を大きくあけて、笑った。


「そなたは、両親にそっくりだね」


 狭霧はむっと眉をひそめた。


「答えになっていません」


 大巫女は、それ以上口をつぐんだ。しかし、意味ありげに微笑んで狭霧を見つめている。


 狭霧は、ふいと目を逸らした。狭霧のほうも、これ以上あえて追及して、答えを求める気は起きなかった。


(へんな人。つんとして、わけのわからないことをいうところは、日女に少し雰囲気が似ているけど――)


 日女は、巫女の神威という狭霧にはよくわからない力をふるう巫女だ。しかし、長く一緒にいてみると、ただ奇妙な娘というよりは、ずけずけと子供っぽいわがままをいったり、ふてくされた仏頂面をしたりもする、童女のような娘だった。


 思う存分つむじを曲げる日女の顔が脳裏に浮かぶと、狭霧はため息をついた。


(似てないか。日女のほうがよっぽどかわいいわよ。あの子は、なんていうか、素直な感じがするもの。自由というか――)


 思えば、日女には、身分や血筋など、ふつう人を縛り上げるものからいっさい束縛されていない、気ままな雰囲気があった。


 それから、日女と初めて会った時のことを思い出した。


 その時、狭霧の目に日女は、ただ怖い娘としか映らなかった。妙なことをいって高比古を追い回しては、狭霧や、高比古の妻、心依姫を敵視する妙な巫女だと――。


 今、狭霧は、その時ほど日女のことが苦手ではない。それが、不思議だった。


(付き合ってみないと、人ってわからないものね……。あんなに苦手だと思っていたのに、今はもう、どうして苦手だったのかも思い出せない――。それに……)


 もう一人、別の娘のことを思い出して、狭霧はひときわ重いため息をついた。


(前は、苦手だと思ったことは一度もなかったのに、今は、会うのが怖い……。心依姫は、わたしを恨んでいるだろうなあ――。自業自得だっていうことは、よくわかっているけれど)






 やがて、山をいくつか飛び越えると、青色をした水平線が見えてくる。海ぎわに広がる宍道しんじの湖面がきらきらと輝いているのが前方に現れ、見慣れた形をする山々や、丘に囲まれた意宇の野が近づいてくる。


 意宇の野に広がる都に近づくと、薄青の天を進んでいた赤黒いもやは降下をはじめる。


 空の旅が終わりに近づいた頃、それまで息を止めたかのように黙っていた高比古が、ようやくぶりに長い息をした。


「佩羽矢を、見つけた……」


 声を聞いてほっとしたのもつかの間。狭霧は、血相を変えて尋ねた。


「佩羽矢さん? ――とうさまといる? 安曇や、みんなは?」


 高比古は狭霧を向くと、笑みを浮かべた。


「みんな無事だ。これからも、無事だ。おれが、全員を出雲へ連れ戻す」


 高比古は、ゆっくりとした動きで背後を振り返った。そこには、須佐乃男が立っている。


「今、大国主の軍にいる佩羽矢の目と耳になって、向こうの様子をうかがいました。大国主の軍は長門の都を出て、出雲を目指しています。――それで、おれを届ける先は、意宇ではなく、杵築にしてもらえませんか? 杵築で援軍を組み、支度が調い次第出立して、大国主と合流し、杵築へ戻します」


「よかろう」


 一通りのことを告げ、今後のことが決まると、高比古は黙った。それから――用心深く言葉を選びながら、話を続けた。


「お伝えしなければいけないことがあります。大国主が船団を失ったのは、長門が裏切り、大和の側についたせいのようです。そのため――長門が滅びました」


「え?」


 狭霧は、目をしばたかせた。


 須佐乃男は、無言のままじっと高比古を見つめた。


 白い頬を下げ、高比古がうつむく。まつげで瞳が隠れるほど目を伏せると、高比古は小声でいった。


「長門は、大国主によって滅ぼされました。しかし、それ以上に考えなくてはいけないことが多くあります。たとえば、引島や――」


 高比古がすべてをいい終えるより先に、須佐乃男はじわりとうなずいた。


「わかった。まずは、穴持を杵築へ戻せ。話は、それからだ」


 高比古は、うなずいた。


「はい」





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