絵地図と骨石 (2)



 朝に始まった須佐乃男すさのおと高比古の模擬戦は、夕方まで及んだ。


「思いのほか興に乗った。長いこと付き合わせてすまんかったな。戻っていいぞ、高比古」


 須佐乃男からそのように声を掛けられてはじめて、高比古は、舘に備わった突き上げ式の窓の向こうの光が弱くなっているのに気づいた。


「楽しかったぞ。明日もまたやろう。――と、いうわけで、さっさと出ていけ。わしは狭霧と夕餉を食うんじゃ!」


 ただの爺様に戻ったように甘ったれた文句をいって、須佐乃男は高比古を追い出すが、時の流れに置き去りにされたと不気味に感じるほど、高比古は、朝からいままでのことを覚えていなかった。


 宗像むなかたの侍女が運んできた食事にも手をつけず、あぐらをかいたまま、姿勢も崩さず――とにかく夢中で駒を操った。出雲を負かすまい。そして、須佐乃男に……老獪な笑みをたたえて高比古を試すこの男に負けるまい、と。


 ふらふらと自分の仮宿に戻ると、足はまっすぐに寝床へ向かう。


 敵軍の規模や戦略にいっときも休むことなく目を光らせ、大地をくまなく覆う潮の流れや、異国同士の行き来に気を配り――。しばらく忘れていた呼吸が、ようやく戻ってきたとも思う。


(……疲れた)


 どさっと音を立てて寝床に崩れ落ち、ぐったりと寝そべると、空腹を思い出した。そういえば、朝からなにも食べてなかった。


(なにか食べるものは……。いいか、水で。動くのも億劫だ)


 小屋の隅には、水で満たされた壺があった。それが目に入ると、迷いを捨てるように目を閉じていった。


 その時。ふと、戸口の薦が揺れた。


「……入ります」


 むりやり出してやったといわんばかりの、かすかな声がする。薦をよけ、姿を現したのは、桐瑚きりこだった。


 凛とした美貌は朝と変わらないが、表情もそう変わり映えしなかった。桐瑚の顔は、渋々やってきたのだといい張るように、不機嫌に歪んでいた。


 袖から伸びた細腕には籠が抱えられていて、中には、器がいくつか乗っている。


「食事を。須佐乃男様が、ここへ持っていけと」


「須佐乃男が?」


 もう、から笑いしか出てこない。


 丸一日の対峙で疲れているせいで、苛立つ気力も残っていなかった。


 どうにか身を起こして木床に座ると、桐瑚へぼんやりと笑った。


「あの爺様は、よっぽどおれをからかうのが好きらしい。――夕餉をありがとう。腹が減ってたんだ。助かった」


 桐瑚は強張った真顔を崩さなかったが、気の抜けた微笑を向けられると、唇を噛む。


 止めていた足を浮かして、寝床に腰掛ける高比古のそばまでゆっくりと近づいてくると、腰をかがめて、高比古のそばに食事を乗せた籠を置く。すると、後ずさるようにして戸口まで離れた。仕草は、背中を見せてたまるかと高比古を警戒するようだった。


 桐瑚が運んできた食事は、芋の団子がいくつかと、焼いた魚。どちらも、出雲では見たことのない料理だ。


 空腹に任せてさっそく手をつけるが、食べている間中、桐瑚はずっと戸口に立ったままで動こうとしなかった。


 器が空になってもまだそうしているので、声をかけた。


「片づけもおまえの仕事か? なら、ついでに水を持ってきてくれないか。喉を潤したい」


 桐瑚の足元にある水壺を指すと、桐瑚は一度、どうしようかとためらうような素振りをした。それから、腰をかがめて木の器で水をすくうと、再び高比古のもとへ歩み寄ってきた。


「ありがとう」


 受け取って飲み干すと、そばの籠を顎で指す。


「食事は済んだ。片づけていいぞ」


「……はい」


 桐瑚は応えたが、いやいや振り絞ったような、かすかな声だ。


 にこりともせずに器を籠に戻し、高比古が水を飲み干したばかりの木の器も籠に盛ると、やはり桐瑚はじわじわと後ずさり、木の器を水壺の隣に戻した。


 器が片づけられていく物音を聞きながら、高比古は再び寝床にごろりと横になった。


 でも、器と器がぶつかり合う硬い音が消えても、薦が動くかすかな音が聞こえない。


 顔を傾けて戸口を見やると、まだ桐瑚はそこにいて、高比古が夕餉を食らっていた時と同じように突っ立っていた。


「まだなにか用か?」


 桐瑚は目を合わせようとしなかったが、答えた。


「今夜もここにいろと、須佐乃男様からいわれた」


「――あの爺様らしいな。――おれはいいから、ねぐらへ戻れ」


 苦笑しつつそう告げるが、戸口でたたずむ桐瑚が小屋を出ていこうとする気配はない。


 桐瑚は娘の高い声で、いい訳をするようにいった。


「いま戻ったら、別の男のもとへ遣わされるだけだ。……この島には、高貴な客が多くて困る」


 彼女の言い分には失笑してしまう。癖のように、高比古は鼻で笑った。


「ここにいたら、奴婢ぬひの娘の宿命から逃れられるって?」


 桐瑚は、恥ずかしそうに頬を赤らめた。


「……あなたは、まだましだ」


 桐瑚は不満を見せつけるようにうつむいていたが、時おり高比古の表情を探るように、前髪の隙間からちらりと覗いてくる。そこにあったのは、好意だ。


 それと目が合うなり、高比古はぱっと顔をそむけた。


(なんなんだ、これは)


 たちまち脈打つ胸が気味悪くて、目を逸らしたまま言葉を返した。


「また朝までここで過ごすつもりか?」


「そうさせてもらえると、ありがたい。わたしなら隅っこでおとなしくしている」


 ふてくされるようにいいきった桐瑚は、大げさな動きでそこにうずくまってしまった。どうやら本当に居座る気でいるらしい。


 高比古は、馬鹿にするように声をかけた。


「……こっちに来れば?」


「……命令か?」


 桐瑚の声は苛立っているように聞こえた。少なくとも、さきほど自分でいった「ありがたい」という言葉とは不釣り合いな、とげとげしいいい方だ。


 喧嘩を買うように、高比古の声も冷ややかになった。


「好きにしろよ。おまえが冷えた土の上で寝ようが、おれは気にしない」


 桐瑚の姿など見る気も起きないとばかりに寝返りを打って、横顔を見せつけた。でも、内心は、どくどくと高鳴る胸に焦っていた。


 日は落ち、小屋の中は薄暗くなっていた。


 昨晩と同じように、通りに焚かれた炎の明かりが、小さな木窓からじんわりと漏れ入っている。


 天井を向いてまぶたを閉じた高比古のもとに、ひそやかな足音が近づいてきた。足音と桐瑚らしい気配は寝床のそばで立ち止まり、おずおずと高比古の隣に膝をついた。それから、高比古のそばで、そっと身を横たえた。


 小屋の前の通りには、今夜も往来がある。


 男が数人、なにかを話しながら向こうからやってきて小屋の前を通り過ぎ、遠ざかる。そういう人の気配や賑やかな雑踏を何度も見送っているあいだ、高比古は、ほとんど身じろぎもしないでまぶたを閉じた。


 すぐそばに、桐瑚の気配があり、温もりがある。他人の息づかいも、すぐ耳もとにある。そういうものがいちいち気になるのが気味悪くて、平静をとりつくろった。


(――いい。寝てしまおう)


 しかし、眠気は来ない。さらにしばらく沈黙が続くと、耳元で、長い髪がこすれた音がさらりと鳴った。


 桐瑚が顔を上げたらしい。見つめられている気配も感じた。


「なにもしないのか?」


 へんな問いだ。高比古はそう思いつつ、目を閉じたままでいい返した。


「なにかされたいのか?」


「べつに。……あなたは、へんな策士だな」


 すねるようないい方だった。


 とうとう、高比古は小さく吹き出した。わざわざ高飛車な態度をとる桐瑚が、急に可笑しくて仕方なくなった。


「おまえこそへんだ。――へんな策士? いい加減、名前で呼んだらどうだ」


「あなたこそ。まだ一度も名を呼ばれていない」


 高比古と桐瑚は、わずかに身体を傾けただけで触れてしまいそうほど近い場所に二人で寝そべっている。それほど近い場所にいるのに、互いにどうにかして触れないように、ぎりぎりの距離を保っていた。


 まぶたを開け、高比古はそっと隣を向いた。


 思った以上に桐瑚の顔はすぐそばにあり、形のよい鼻とまつげが、影になって近い場所に見えていた。枕にするのに折り曲げた高比古の肘と、桐瑚が頬を寝かせている手の甲などは、布一枚の厚さほどしか離れておらず、わずかに傾ければ触れ合ってしまう位置にある。


 そのわずかな隙間をかたくなに守らなければと、高比古は、胸からいい諭されている気分だった。でも、こちらへ来いと、呼ばれている気もした。


 高比古は、しらばっくれて答えた。


「おまえの名? 忘れた」


 暗がりに目が慣れたのか、それとも、目を凝らす必要がないほど桐瑚の顔が近い場所にあったせいか。桐瑚の端正な顔立ちは、高比古の目にはっきりと見えていた。


 見る見るうちにそれは、高比古を責めるようなしかめっ面になった。


「名くらい……」


 桐瑚は文句をいったが、最後までいうことはできなかった。


 その時、とうとう高比古の手のひらが、吸い寄せられるように桐瑚の頬に触れた。


「いってみただけだ。……覚えてる。桐瑚だよな」


 暗がりの中でも白く見える桐瑚の頬は、触れてみると、手のひらが驚くほど滑らかで、それに温かい。


 目と鼻の先から見つめると、涼しげに凛と伸びた鼻筋が印象的は桐瑚の顔立ちには、静かな月夜の雰囲気があった。緩やかな丸みのある唇は薄闇の中でも柔らかに見え、琥珀色に近い明るい色のはずの瞳は、闇夜のもとでほのかに輝く水面のように澄んで見えた。


 高比古の手のひらが頬を包むと、桐瑚はうつむき、自分も顎の下に横たえていた指を伸ばして、高比古の手のひらに触れた。


 一度触れると、どうしていままで、あれだけ懸命にわずかな隙間を守っていたのかが不思議なほど、手と手は自然に触れ合って、そのうえ、吐息も重なった気がした。


 桐瑚の吐息に誘われるように、高比古は片方の腕も伸ばして、細い肩を抱いた。桐瑚も、みずから高比古の肩口に額を寄せて、寄り添ってきた。


 背中に腕を回して抱きしめると、顎の下のあたりから、からかうようなつぶやき声を聞いた。


「あなたの手のひらは……いや。手のひらのように、ほかも優しければいいのにな」


「いちいち偉そうなんだよ、おまえは」


 互いの言葉も仕草も、やはり喧嘩の続きだと高比古は思った。でも――。


(喧嘩の続き? いや……)


 無言の喧嘩には違いなかったが、すこし違った。


 顔が近づくと、触れてはいけないものだと緊張するし、一度触れてしまえば歯止めがきかなくなる。ただ、手が動いて気が急き、桐瑚の温かみや、柔らかみのようなものを感じると、肌と胸は安堵する。


(なんだこれ、なんだ……)


 胸は焦っていた。しかし、表情に乏しい高比古の顔は、それらしい戸惑いを表すことがなかった。手のひらや、唇もそうだ。


 はじめ、桐瑚は、高比古の顎の下に埋もれるようにして寄り添っていた。


 それが、いつのまにか高比古の両肘は桐瑚が逃げ出せないように小さな顔を囲んでいて、唇が唇に重なりゆく。力ずくだろうがもっと近くへ抱き寄せたくなり、唇は桐瑚の頬や首筋を伝った。


 ひどいことをしてはいないか……。身分に驕って。


 かつて自分を苦しめた連中と同じことをしてはいないか。


 怯えた瞬間は何度かあった。でも、目がくらんだように我に返るそのたびに、桐瑚の柔らかい腕が、高比古をいざなうように首にからまっているのを感じて、ほっと息を吐いた。



 平気だ。いまのこれはあれとは違う。

 あれとは……。



 その時は落ち着いたのに、眠りに落ちると、高比古はうなされた。


 風邪をひいたり、戦場で矢傷を負ったりして身体が弱ると、いつも見る夢があった。


 その夢は、背後から見張り続ける記憶の番人じみていて、これまで高比古に恐怖を与えたものを、一番恐ろしかった瞬間だけうまい具合に連ねて脅かしにくる。それは、自分は怯えている、恐怖の対象を覚えていると認めざるを得ない、胸の芯のさらに奥に刻みつけられた記憶だった。


 海の賊に襲われた、故郷の村の風景。家族も村人も、一人残らず殺された。


 いや……怖かったのは、その風景ではなかった。目の前で繰り広げられる残虐な光景を前にして茫然と立ちつくしたものの、幼い高比古は、心の底のどこかで喜んでいた。ざまあみろ、と。


 人が……よく見知っている人が殺されていく姿を見て、喜ぶだなんて――。


 おれはなにもの? 精霊? 死霊? ……人じゃないの?


 ……その時の違和感。


 皆殺しの目にあった村からは、目立った品が略奪された。


 穀物を詰めた袋や鉄具と一緒に、若い娘や、肌の色が白かったせいか娘と間違われて連れ去られた高比古も、担がれて賊の船に乗せられた。


 ぶしつけに顔を近づけて覗き込んでくるひげ面の男の、気味悪い目。


『男だぞ、こいつ。娘みたいな顔だな。……への、いい土産だ。あいつは、こういう女みたいな坊主が好きなんだ』


 そいつがいった名前は、最後まで覚えられなかった。耳慣れない異国の名だった。


 でかい手のひら。おぞましい目つき。人の肌というものが、あんなに気色悪いものだとは……。誰かに触れてほしいと願い続けた幼い夢が砕かれた瞬間の、愕然とした思い。


 幼い夢――。


 それを思うと、きまって場面は切り変わる。


 その夢にうなされ慣れている高比古は、そこまで夢が進むと夢の中でもうなされた。


(わかったよ、もういい。知ってるから。……止まれ。もういい!)


 たしか、三歳かそこらだったはずだ。


 まだ足取りがおぼつかないわが子を見ておののく、母の青い顔。


『……呪われた子だ、私の子じゃない! 私の子じゃ……!』


 母の腕に抱かれた記憶どころか、母の笑顔すら高比古は覚えていなかった。もしくは、はじめから知らないのか。


 髪を振り乱して後ずさる母の肩を抱き、慰める父の姿。


『落ち着け、大丈夫だ、おまえの子じゃない。あれは悪霊が置いていったんだ』


 そんな、とうさん。――じゃあ、おれはなに?


(覚えてるから。忘れないから。もういい、やめろ!)


 夢の中で泣き喚こうが、夢は止まらなかった。


 母の嘆きを聞きつけた村人たちの冷ややかな目線。それは、幼い高比古を縛める堅固な檻そのものだった。


『美しい娘だから、化け物に悪さされたんだな……可哀そうに』


『この子はどうする? ……殺すか?』


『殺して化け物に祟られたらどうするんだ? この子は、村の守り神に。村の外れの岩室に繋いで、生かさぬよう殺さぬように。……魔除けだよ』


 魔除け? 化け物? おれはなに? 


 人じゃ……かあさんととうさんの子じゃなかったの? 


 ……人ってなに?


(ちゃんと覚えてる! 人じゃなくてもいい。だからもうやめろ。やめろ……!)


 夢の中で絶叫する。そして、はっと目覚める時。たいてい真夜中で、周りは真っ暗だ。


 いまも、高比古は暗闇の中で、本当に叫んでいたかのように唇を大きく開けていた。


 力がこもって、身体は石のように硬くなっていた。握りしめた拳の内側では、汗が冷え切っている。


(……夢)


 まだ胸は、早鐘を打ったままだった。こわごわと息を吐き、あれは過去だと胸を落ち着かせる。


 夢の続きを見はしないかと閉じるのを怖がる瞳を宥めて、無理やりゆっくりとまばたきをしていると、冷えきった腕に触れる温かな手のひらを感じた。そこには、ぼんやりと開けられた薄目で高比古を気づかう視線もある。隣に寝そべっていた桐瑚だった。


 真夜中の暗がりで目が合うと、桐瑚はからかうように笑った。


「うなされていたぞ? 怖い夢でも見たのか? 子供みたいだな」


 ……喧嘩の続きだ。


 ということは、いまは夜の続き。夢ではないうつつの世界だ。


「……ばかにするな」


 唇はいい返したが、腕は桐瑚の背中を引き寄せようと動いて、細い身体を抱きしめるのに夢中になった。


(こいつを抱いていれば、今夜はもう夢の続きは見ない)


 腕の中の優しい肌触りを感じると、胸の強張りはあっさりと溶けていく。


 幼い頃に触れてほしいと夢見た人の温かみは、自分を包み込んでくれる母の腕だ。こんなふうに、自分より小さな身体ではなかった。


 これは過去に望んだものでも、自分に痛みを味あわせたものでもない。


 こういうものがあるという存在すらこれまで知らなかった、はじめてのものだ。


 これは過去でも夢でもない。……現実だ。


 いざなわれるままに胸に頬を寄せる桐瑚の髪を、手のひらで撫でる。言葉ではいい返したが、手のひらでは、感謝を告げるように丁寧に撫でた。


 胸元で、桐瑚がくすりと微笑んだ。


「やっぱり、手だけは、優しいな」


 そして、そっと身を寄せてくる。


 その仕草にも、高比古の胸はほっとした。





 桐瑚はすこし素直になった。


 朝が来て高比古が小屋を出ていこうとすると、うつむきながら恥ずかしそうに衣の端をつまんで、引きとめた。


「また、夕餉を運びにきてもいいか?」


 とはいえ、かなりの仏頂面をしている。おかげで、いくら可愛らしい言葉を口にしていても機嫌が悪く見える。


 そのうえ、高比古が無言でいると、返事を待たずにそっぽを向いた。


「……べつに。邪魔なら頼まない。ただ、ここにいれば最悪な相手のもとへいかされずに済むから」


 いい加減、高比古は桐瑚のそういう態度に慣れていた。それが可愛らしいとか可笑しいとか、そんなふうにも思うようになったが、面と向かって「あなたはまだましだ」といわれると、素直にはうなずけない。


「冗談じゃない。おまえに利用されるのはごめんだ。二度と来るな!」


 か細い指を振りきると、薦を開け放って小屋の外に出た。


 いらいらと数歩踏み出すものの、桐瑚を一人残した小屋から遠ざかると、胸が悔やむ。


(本気にしたかな。いや、もういい、あんな高飛車な女。……でも)


 結局、高比古は思った。


 女は鬱陶しい。邪魔だ。


 それから、足元に転がっていた小石を、思い切り蹴り飛ばした。胸で渦巻くちぐはぐな願いを、蹴散らしたかった。




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