第一章  魔法戦闘(1)


 「皆さんこれから一年間よろしくお願いします。皆さんの担任を務める山田進です。契約精霊種は『土』です」

 どうやら、眼鏡を掛けているイケメン青年教師の元で一年間学ぶようだ。ちなみに俺のクラスには紗雪も智彦もいる、同じクラスで本当によかった。

 「皆さんが知っての通りこの魔法学院で魔法を学ぶのは、8年前から突如出現した魔物を倒すためです。そしてこれらの魔法は個々が精霊と契約することによって発動ができます。精霊には主に得意とする要素があるのですが・・・・・・そうですね、坂本君答えてください」

 眼鏡の教師は智彦を指さし自分の質問に答えるように促した。

 「いきなりっすね。えっと、要素には主に7つあります。火、水、雷、土、風、闇、光です。ですが闇と光は特に魔力の大きな人間でないと精霊が認めないと聞いたことがあります」

 智彦は堂々と発言を終え、どや顔をして座った。

 なんだその顔は答えられて当然だろう。

 「そうですね、正解です。ですが、闇光種の精霊は魔力の大きい人間でないと選ばないわけではありません。闇光も大まかには皆さんが出会ってきたようにどこかで出会い、そしてお互いを認めた人間と契約します。少数のため、そういった噂も流れているみたいですね。さて」

 そう言うと先生は胸元からペンダントを取り出し、それを握りしめて魔力を送り込む。するとペンダントが輝き先生が「トランス」と言うと今まで着ていたスーツがローブを纏ったいかにも魔道士という格好になった。

 魔道士は自分の魔力を使い戦闘服へと姿を変える。そうすることにより自分の魔力で作られた鎧となり敵の攻撃を防ぐ事ができる。

 「せんせーい、何でトランスしたの~?」

 クラスの女子が立ち上がって手を振りながら質問をすると、握りしめていたペンダントから手を離し、眼鏡をあげて一言。

 「皆さんの実力を知るためです」

 ―――・-――・-――・-――・-―――・-―――・-―――・-――

 先生の命令によって全員がトランスをして第三訓練場へと足を運んだ。俺達は訓練場の観客席に座らせられている。ちなみにトランスした時の服装は自分の想像した服装のため、皆それぞれの特徴が出ている。

 首にもふもふしたファーがついている奴や、ミニスカの女子、胸の谷間を強調する女子、きれいな美脚を強調す――――――

 「目がいやらしい!」

 「うごっ!」

 皆の特色を知ろうとしていただけなのに、紗雪は俺の頬を殴った。俺も戦闘服を着ているため防御力は上がっているが、痛い物は痛い。あ、頭ががんがんする・・・・・・

 「紗雪ちゃんそれやりすぎだから!大丈夫か真白」

 智彦が俺の肩に軽く手を添えてから手をさしだして起こしてくれる。その手を掴んで立ち上がると智彦は俺の耳元で

 「その気持ちはわかるぞ、特にあの太ももまで出ているあの子は素晴らしい」

 と小声で言う。

 さすがだぜ親友・・・・・・俺もあの子を見ていたんだ。あの手で触れると跳ね返って来そうなほどの質感、そして触ったら柔らかそう、なんだが鍛えてきた証の筋肉の張り。すべてにおいて素晴らしい!

 「だからきもい!」

 「うごっ!」

 紗雪の強烈なエルボーが俺の鳩尾に入った。あ、これ本当に痛い。え、何、心で考えることがわかるの貴方?

 そんなやりとりをしていると訓練場のフィールドに先生が姿を現した。

 「それでは一人一人、自分の得意な攻撃をしてください。名前と精霊種も忘れないように!それでは一番の生徒から、四番までの生徒も降りてきなさい。それからは随時一人ずつ降りて終わった生徒は観客席に戻りなさい」

 「はーい!」

 先生にそう言われ一番の生徒らしき人物がフィールドへと降りて、それに続きぞろぞろと四番までの生徒が降りていく。

 「一番、霞 真木!精霊種は雷です!」

 そう言うと霞さんは魔方陣を描き魔法を打つ準備をする。

 「はぁぁぁあああああああ!サンダーボルトッ!」

 真木さんが放った魔法は雷種の中でも基本中の基本であるサンダーボルトだ。手を相手に向け、魔法を打つときに現れる魔方陣からいくつもの電撃を纏った玉が飛んでいく。一つ一つがしっかりと魔力がこもっており、すごく完成度が高い。

 先生は真木さんが放った技をバリアを用い、涼しい顔で防いだ。

 「一番弱い基礎魔法だがあのサンダーボルトを余裕で防ぐのか、教師なだけあるな~」

 「それくらいできないと教師なんて務まりません」

 智彦と紗雪はお互いの意見を言い合っている、確かにそうなんだが。あの教師・・・・・・

 「シロ、どうかしたの?」

 「あ、あぁいや何でもない」

 俺は少し感じた違和感を抱えながらほかの生徒の紹介も見て自分の番を迎えた。

 「矢頭真白、精霊種は火です」

 少し、確認してみるか。

 「はぁぁああああああああ!」

 俺は魔力を最大限に高める、そして突き出した手で魔方陣をどんどん描き最初にできた魔方陣を取り囲むように残り6つの魔方陣も浮かびあがらせ、合計七つの魔方陣を描いた。

 「なっ、七式!? これはまずいですね、耐えられるでしょうか?」

 「喰らえ、業炎円激」

 目の前にあった魔方陣を一つ殴る、すると殴られた魔方陣を先頭に残りの魔方陣も業火に焼かれながら先生を取り囲みくるくると高速で回転を起こす。一つの円と勘違いするような錯覚を覚えさせた時、今度は対象の上の天井すれすれの所に新たな魔方陣が現れ魔力の放出を始める。

 「焔!」

 俺の声と共に拳を握る。すると上空に出現した魔方陣から業炎が対象めがけて焼き尽くすために円の範囲内に一つの火柱を建てた。

 「くっ、これは強力ですね・・・・・・」

 そして少しの間魔法が永続した後、魔方陣ごと消えてなくなった。この魔法は本来すべての万物を焼き尽くすほど強力な魔法だ。直撃したら死んでしまうほどの・・・・・・だが先生は見事耐えきっていた。しかも皆と変わらず立ったままの状態で少しも息が切れていない。

 やっぱりな・・・・・・

 この魔法を普通は防げない。ほかの生徒を見ていて気づいたが、あれだけ熟練したサンダーボルトを何発もうけて少しもひるむこともないということはまだあり得る。だが先生はこれまで多くの生徒の攻撃を受けてきた。そしてバリアは解除していない状態でだ。どれだけ魔力の大きい魔道士であろうと、疲れる物は疲れる。魔力は精神と同じ物だ。使えば身体共に疲れて休憩が必要になる。だが先生は休憩もなしでバリアを作動させたまま俺の放った強力な魔法を耐えきった。

 「シロ、何やってるのよ!」

 「いってぇ!」

 紗雪の容赦ない拳骨が俺の後頭部を思いっきり殴った。

「あんな強力な技使って、先生殺す気!?」

 「いやいやいや死なないって、な、先生」

 「あはは、真白君は私の特殊魔法に気付いたようですね」

 「特殊魔法?」

 紗雪が何言ってるの?とでも思っている顔をしている。

 「はい、中等部では習っていないので知らないのも無理はありません。契約精霊とある一定の仲になると特殊魔法と言って、固定魔法が使えるようになるんです。そして私の特殊魔法は相手の魔力を吸収し自分の物とするバリアを発動する物です」

 「だと思った、じゃないとあんなに体持ちませんよね」

 「真白君は洞察力がすごいですね、七式を放った事も含めて面白い生徒だ。さて、時間もないですし、まだしてない生徒は続きをしましょう!」

 そして最初の授業である自己紹介が終わった。

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