NEET
男が目覚めると時計は昼過ぎを差し、
一日の半分が終わったことに一種の絶望を感じていた。
こんな生活が5年近く続いている。
体を起こすと毎日の習慣の様にパソコンの電源を起動させ、
当たり前の様にパソコンの前に座った。
そこで何をするわけでもなく、
ただ、無意味な時間が流れていく。
無意味な時間は男を堕落させ、考えることをしなくなった。
『無』という時間は男から
『存在』や『生きる意味』を奪っていった。
男の心は隙間だらけの空虚な入れ物と化していった。
男は突然、孤独感に襲われ、体中に悪寒が走った。
しかし、男は自分では何もできなかった。
動こうとしても男は動く術を知らず、
代わりに自分の中の偶像が手足を縛り、
前に出ようとする思いを遮ってしまった。
頭の中で雁字搦めになった男はある答えに辿り着いた。
『死』だ。
男の中で「これ以上生きていても仕方ない」「死んだ方が楽だ」
そんな言葉がサブリミナルのように頭に響いてくる。
そして『無』から『死』へと変換したとき、
男は「死にたい」と呟いた。
その言葉はまるで言霊の様に男を死へと駆り立てた。
やがて『死』しか見えなくなった男は誰にも気づかれることなく、
存在が無くなり、七十億の蝋燭の一本の火が儚く消えた。
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