Dead
昔々、一人の変わった十歳になる少年がいました。
少年は幼いころに父親と母親を亡くしたせいか、
医学書や宗教など死に対して人一倍興味をいだいていました。
先生や大人の人に「死ぬってどういう気持ち?」と問いかけていました。
周囲からは大層気持ち悪がられてしまい、少年は孤立してしまいました。
時が過ぎ、少年は青年となり、祖父母の家から高校に通っていました。
常に学年トップの成績を取っていましたが高校に入っても
周囲と馴染めずに一人黙々と勉学に励むことしかすることがありませでした。
この頃になると青年は『死』に対して一番身近に体験できる仕事は
医者だと考え、医学の道に進むことを決めました。
高校卒業後は近隣の都会にある医大に通い、一方で宗教を始めて
更に死に対して一層興味を抱くようになりました。
しかし、大学でも異形の者として扱われ、孤立してしまいました。
大学卒業後は地元の大病院に就職し、医者として手術に立ち会い、
時には警察の依頼により検死解剖をすることもありました。
青年にとっては生者を生かし、死人を解剖することは退屈で仕方ありません。
その結果、人を殺すことで死の体験ができると考え、
人里離れた山の一角に家を建てました。
そして医者の肩書を借りて女を連れ込んで殺しをおこなっていました。
殺した後には必ず、「死ぬってどんな気分?」と問いかけていました。
それでも青年にとって死に対して納得のいく答えを
見出すことができませんでした。
警察はこの女性連続行方不明の一件に関して最初のうちは
手をこまねいていました。
その間にも青年は女性を殺し、死への探求をしていました。
しかし、青年の行動は計画性がなかったため、
事件発覚から一か月後には青年の犯行であることが明らかになりました。
警察は青年がいない間に家宅捜索を行い、家から十二人の遺体が発見されました。
そのころ、青年は十三人目となる女性を連れて家に帰っていました。
警察は現行犯逮捕すべく、家で待ち伏せを決行することを決めました。
青年が扉を開けると同時に数人の警官が銃口をむけました。
青年はとっさに胸ポケットに入れていたボールペンを
隣にいた女性に突きたてました。
しばらくの間、硬直状態が続きましたが青年の方が腕の疲労により、
ボールペンが首元から少し離れました。
警官はその隙を見逃さずに青年の肘めがけて打ちました。
放たれた銃弾は見事に肘に当たり、ポールペンが手元からが離れました。
そこまではよかったのでずが、銃声に驚いた新人警官が誤って発砲してしまい、
銃弾が青年の脇腹に当たってしまいました。
青年はその場で倒れこんでしまい辺り一面が血の海となりました。
薄れゆく意識の中で『死』という長年追い求めてきた答えに
たどり着けたことに満足し、笑みを浮かべながら死んでいきました。
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