Haves and have nots
会社の帰り道。数百人の行き交う路上でひとりのミュージシャンに出会った。見た目は清純な青年で歳は二十代前半だろうか。目の前には数枚の自作CDが並べられ、『一枚千円』と書かれたPOPが貼られていた。数百人の行き交う中でなぜか彼に魅かれ、気がつくと立ち止まっていた。それは別段、歌が上手いとか演奏に魅かれたからだとかではなく、彼の持っているもの、すなわち『夢に挑戦する』姿に魅かれたからだ。
学生の頃は「いい成績を取って、いい大学に行き、いい会社に就職する」それが当たり前だと思っていた。しかし、今になって考えると社会のレールを外れることを怖れた結果から保守的な考えになっていたのだと思う。そうして人と同じように行動し、同じように道を歩んできた。そうしたらいつの間にか自分がなくなり、ひとりでは怖くて未来を考えることができず、周りに流されるマニュアル人間になっていた。
気づくと片手にもっていた鞄を強く握りしてめいた。
そんなことを考えると深いため息をついて地面を見つめていた。そして徐にCDを一枚手に取り、金輪際こんな風に夢を追うこともなく、終わっていくのだろうと思いながらその手に取った一枚のCDを買って家に帰ることにした。
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