第3話

「うわ、マジか。」

町の中心に位置する駅 松田駅の前で僕は思わず呟いてしまった。

理由は明白だ。この七年前と全く変わらない街並に驚いたのだ。

真っ白な壁に黒の瓦。昔ながらの風景をそのまま残した街並に、

懐かしい、そんな感情が芽生えた。

「さあて、やりますか。」

まずは当時仲の良かった友人宅を訪ねることにした。

「こんにちわ、電話した早島です。隼人います?」

「……はい、少々お待ちください。」

出てきた隼人の母親は怪訝そうな顔をしていたが、隼人を呼んでくれた。

草彅隼人。なかなかいい顔をしており性格も良いため当時なかなか人気だっあ記憶がある。

僕の当時の大親友でなんでも相談していた。ちなみに、今でも無料通話アプリで話すほどである。

「ちっす。おお、元気だったか、奏太?」

「おう、久しぶりだな、隼人。」

隼人は、片手を上げながら出てきた。

久しぶりに見た隼人は大きくなっていた。

僕の身長が今170ちょいだから隼人は180くらいだろうか。

大きくなったもんだ。

「まぁ、いいや。上がれよ。」

「うん、お邪魔します。」

僕は、奥にいると思われる隼人のお母さんにも聞こえる声で一言言うとそのまま隼人について行った。


「それで?何の用でこんな田舎に戻ってきたんだ?」

胡座をかいた隼人が聞いてくる。

「実は、な。夢を最近見るんだよ、女の子の夢なんだ。女の子の顔は、ぼんやりしてて分かんないんだけど会ったことある子ではあったんだ。だから、隼人覚えてるかなぁって。」

隼人は、顎に手を当てた。これは、隼人の考えている時の癖だ。隼人曰く爺さん譲りらしいが。

「うーん、いなかったな。お前と仲良かった女の子なんて。」

隼人はきっぱりと言った。

そんな……微かな希望だったのに。

僕の夢は、幻想なのかもしれないなと

ネガティヴな方へと思考が加速していく。

「でも、一つだけ言えることがある。それは、……その子は存在した。」

諦めかけていた僕にはっきりと隼人はそう言った。

隼人は、言葉を続けた。

「あれは、いつだっけなぁ?……兎に角ある日とだけしておくか。」

そう言いながら隼人は、自分の覚えていることを話してくれた。

「あの日、皆んなで好きな人の話になったんだよ。それで、お前は○○ちゃんって答えたんだ。その○○ちゃんって誰か分からないから幽霊ちゃんって呼ばれてたよな?」

「……確かに言われてみれば。」

小4の時のあだ名は、幽霊彼氏だったような気がする。

「今その○○ちゃんを思い出しそうなんだが……あっ確か名前は……」

うーんと思案する隼人を見ていたら言葉が口をついてでた。

「桜坂藍花」

「あっそれそれ。よく思い出したな。」

「うん、ぱっと頭の中に浮かんだんだよ。」

本当に突然だった。なんとなく浮かんだのだ。隼人が覚えているんなら尚更だ。

「……ありがとう、協力してくれて。」

「いいって。その代わり俺が困ったら助けてくれよ。」

「もちろん。」

僕は、立ち上がって礼を言うとそのまま部屋を出た。

次は……爺ちゃん家か。

爺ちゃん家は、松田駅から徒歩15分のちょっと中心とは遠い場所に存在する。

爺ちゃんの家。あそこに、僕は住んでいた。あそこには、きっと手掛かりが残っているはずだ。そう思い僕は、隼人の家を後にした。

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あの頃の夢と今の僕 @324

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