第10話 逃避行の果てに奴はいる⑤

 電子戦が始まった。


「おっほほほほほ! 蟲遣いグリッチャー様ぁあああ! 覚悟なさい!」


 先制攻撃をしかけてきたのは重戦車ジャガーノート

 彼女はマスケット銃から放たれる仮想現実の銃弾を、景気よく乱発し始めた。


「そうそう、あたってたまるかよ」


 蟲遣いは、その場から前転するようにして緊急回避し、銃弾を回避する。

 当たれば一撃で瀕死になるサイバー攻撃であるが、遠距離攻撃であるぶん、命中率は低い。

 そもそも、重戦車はまだ本気を出していないようだ。子供が虫をなぶり殺すかのように、この戦いを楽しんでいるだけだ。

 そのチャンスを、蟲遣いは逃さない。


「いくぞっ! グリッチ=ノイズ!」


 蟲遣いは切り札の一つ、特殊フォルダに閉まってあった一匹の害蟲を召喚した。脚が何本も生え伸びた、気持ち悪い造形の害蟲だ。その名は『ゲジ』と呼ばれている。

 ゲジは足が速い害虫として広く知られている。その素早い身のこなしは、昆虫という種の中でもトップクラスだ。

 そのゲジを、蟲遣いは自分の脚に貼り付ける。そうすれば、自らの身体能力にバグが生じ、筋肉繊維の処理速度が異常化される。


「勝負だ、重戦車!」


 蟲遣いは、フットワークを活かしながらジグザクに走り、重戦車に戦いを挑んだ。

 それは、音をも追い越す凄まじいスピードであった。ゲジによって身体能力にバグが生じ、一瞬だけではあるが脚の回転速度を向上させているのだ。

 もちろん人間の身体能力の限界を大幅に超えた荒業、つまり不具合であるので、大腿筋は悲鳴を上げている。今にもふくらはぎが千切れてしまいそうなほどに、激痛が走っている。

 けれど我慢だ。

 唯一、蟲遣いに勝機があるとすれば近接戦に持ち込むことだ。肌と肌とがぶつかりある程に近づき、そして重戦車の精神情報に害蟲を埋め込むことができれば、その暴虐的な仮想兵器の数々をバグらせ、あわよくば自爆を促すことも可能であろう。


「あらあら素早いですこと。残像が見えていますわね」


 重戦車の動体視力では、蟲遣いの動きを捉え切れていないようだ。


「けれど、そうくると思って、ファンタスティックな罠をしかけておきましたわ」


 が、しかし。ほんのわずかな勝機ですら、すでに重戦車には読まれていたようだ。

 蟲遣いが、その余裕にも似た重戦車の笑みを目撃した、丁度その時、


「んなっ!」


 足元でコンクリートがめくりあがり吹き飛んだ。辺りに地響きが巻き起こり、粉塵が上がるほどの凄まじい爆発が起きたのだ。


「ぐああ!」


 その爆発に背後から飲み込まれ、蟲遣いは上空へと投げ飛ばされた。地面と空があべこべになり、身体のあちこちから精神情報が散った。

 そしてそのまま、ボロ雑巾のように地面に堕ちた。

 足に貼り付けていたゲジは、衝撃によって消滅する。

 勢いは殺され、失速――。


「わぁ……ぐうちゃんが! 花火になった!」


 シスタは心配して声を張り上げている。


「大丈夫だ……生きてるっつーの……。花火ってなんだよ……馬鹿にすんな……」


 グッジョブと、蟲遣いは親指を立ててみせた。

 それを見て、シスタは「はふぅ……」と安堵していたが、現状はやはり不利だ。


「何をされたんだ? いつものように榴弾を撃ち込まれた様子はなかったが……」


 そもそも身体能力を大幅に超えた素早い動きをロックオンすることは不可能であろう。銃による照準も定まらないはずだ。ならば、この爆発はどこから湧いて出た?


「……地雷、ですわ」


 重戦車は冷たい声で、手の内を披露しはじめた。


「私の周囲には地雷の仮想兵器を設置してある。だから私に近寄ることはできない。そして近寄れないのなら、蟲遣い様のバグらせる能力は無意味ということですわ」

「地雷とはな、足元をお留守にしちまった……。ぬかったぜ」


 蟲遣いは震える膝を手で押さえつけながら、その場に立ち上がる。


「おやおや、傷は浅かったようですわね。ダンゴ虫の害蟲やらを防御に当てて、爆風を凌いだ……。お得意の防御方法といったところでしょうか?」

「それもお見通しか……」


 蟲遣いの足元には、焼け焦げた害蟲の死骸がポロポロと剥がれ落ちていった。いずれも、その爆風を凌ぐために利用した、使い捨ての甲殻虫である。


「さて、どうなさいますか? その場からも動けない。動かなければ、私の遠距離攻撃で絶命。どちらにせよ死に一直線ですわよ」

「そのようだな……。絶体絶命ってやつかねぇ」

「それでも、この状況から脱出するための奇策も考えていらっしゃるのでしょう? 蟲遣い様がこんな場所で野垂れ死ぬなんて、つまらないですわ」

「奇策か……」


 そんなものは無かった。

 相手が重戦車でなければ、隙をついて端末をバグらせる方法もいくつかあった。

 例えば、バッタの跳躍能力を使って宙に跳び立ち、空中から遠隔攻撃をしかける方法や。

 例えば、オケラの潜航能力を使い、地下に潜って攻撃を凌ぐこともできた。

 だが、どの奇策も付け焼き刃だ。

 空に上がれば、対空砲で撃ち落とされることだろう。

 地下に潜れば、自分の足場ごと爆発させ、一網打尽にされることだろう。

 重戦車は、夢現狭でも屈指のを誇るヴィジュアルハッカーだ。その魂に潜む精神情報は、どのハッカーよりも膨大であり、いくらでも高純度の火力を精製し、高威力の仮想兵器を創り出すことができる。

 だからこそ、小手先程度のサイバー攻撃は通用しない。


「どうなさったの? その場から動かなくなってしまって。まさか万策尽きたとは言わないでしょうね? まだ殴り合いの喧嘩は始まったばかり。私を楽しませてくれないと、納得できませんわよ」


 重戦車はガトリング砲の銃身をこちらに向けながら生意気に笑っている。自信に満ち溢れたその態度は、幾度となく強者と対峙し、難なく勝利を収めてきた絶対女王としての勇姿だ。


「ぐぅちゃん……頑張って……」


 シスタは心配そうに祈っている。よほど蟲遣いが苦戦しているように見えるのだろう。

 だが、蟲遣いだってタダで負けるつもりはない。むしろ劣悪な環境や苦しい逆境に立たされるほどに、害蟲というものは真価を発揮する生物なのだ。


「おい、重戦車……」


 ここで蟲遣いは、地面に手のひらを添えてから喋り始めた。


「何ですか、蟲遣い様」

「いやぁ、お前ってすげぇなって、感心しちまってよぉ。その底なしの強さが俺にもあれば、あるいは俺の惨めな人生も、変わっていたかもしれねぇなぁ。なんつって」

「唐突に褒めちぎってくるとは嬉しいですわねぇ。でも、なぜそんなことを?」

「羨ましいって言ってんだよ。お前は強い。本当に強い。勝てる気がしない」

「……何を企んでいますの?」


 重戦車は訝しげにしている。

 が、蟲遣いは言葉を無視して、話を続ける。


「なぁ、前々から訊きたいことがあったんだ。お前さ、俺のどこに惚れたんだ?」

「あらっ!」


 重戦車は今までにない、女の子らしい声を出した。恥ずかしがっているのだろうか。


「それは……ほら……蟲遣い様って、どこか物事を達観したような性格をしていて。そんなクールなところに、私の胸はキュンキュンしてしまいますの。その三角に尖った目つきとかも、私の好み。ああ、一度でいいから蟲遣い様に罵られたい。一晩中ベッドの上で」

「そうか……。相変わらず、てめぇはキモイ妄想女だな……」

「それだけじゃありませんわ。もう一つだけ――」


 重戦車は夢見る女の子のように手を組んで、胸の辺りに持っていった。


「蟲遣い様といると、なぜか胸の奥が暖かくなりますの。一緒にいると、凄く落ち着きますの。それはなぜでしょう? 貴方様は、まるで燃えたぎる暖炉のよう……」


 その台詞に、蟲遣いは首を傾げた。それは女性特有の詩の類だろうか。


「何を気持ち悪いこと言ってんだよ。てめぇ自体が熱い火薬みたいなもんなのによ」

「メルシー、それも褒め言葉ですか?」

「けなしてんだよ。豚」

「その氷のように突き刺さる台詞も、それはそれで濡れますわね……」


 重戦車は恍惚な表情を浮かべ、股に手をやった。


「つまるところ、私は追い求めてきたのですわ。この触れれば爆発してしまう危険物のような精神情報に、恐れもなく手を突っ込める強い男を。この火薬を具現化する特殊能力もまた、世の殿方が持つを試すためだけに発現した、私のストレス=アビリティ」


 そして重戦車は、蟲遣いのことを愛おしそうに眺めた。


「貴方様は、私の乾燥した精神情報を、湿気らせることはできますでしょうか? うふふ。期待と熱望に応えてもらいますわよぉ……。もう、他の弱々しい男のように、簡単に死んでしまうのは許しませんことよ……ジュテェェェェム!」


 重戦車もまた、過度なストレスを身に受けてきたようだ。おそらくは自分の満足できる異性と出会うことができず、凄まじい欲求不満を貯めこんでいるのだろう。その欲求不満が、火薬となって爆発しているのだ。


――『ストレス=アビリティ』とは?

 その名の通り、過度なストレスを身に受けることにより発現する特殊能力だ。

 蟲遣いは、幼少の頃に凄まじいストレスを受けて『グリッチ=ノイズ』を手に入れた。

 重戦車もまた、この世界には自分より弱い男しかいないと落胆し、ストレスを受けることによって、『エクスプロージョン=エクスプローラ』という、特殊能力を手に入れたのだろう。

 人は過度なストレスを感じると、ホルモンのバランスが崩れ、鬱になる。ほとんどの場合はそれを乗り越えることができず、最悪死にいたる。

 しかしそのストレスを乗り越えた時、人はポジティブに進化する。

 そして、このヴァーチャルネストで魂を共有している限りは、その進化こそが特殊能力として現実世界に発現してしまうのである。


「男気を試すため、ねぇ……」


 馬鹿らしい能力の発現の仕方に、蟲遣いは「やれやれ……」と手をあげた。


「なら期待に応えてやるぜ。てめぇを壁際に追い詰めて、ごめんなさいと土下座させてやる。覚悟しておけ。いいな?」


 その脅迫めいた一言に、重戦車の蕩けた顔が、ハッカーとしての凛とした表情に戻った。


「ほう、どうやって?」

「ふん……。それを言っちゃ勝ち目が無くなっちまうだろうが」


 当然、蟲遣いだって、このまま一撃も与えられずに負けるつもりはない。確率は低かったが、一つだけ重戦車を倒す方法がある。


「重戦車よ、お前にも弱点があるはずだ。そうだろ?」

「そうですわね。私は生まれながら足が不自由で。だから車椅子にずっと座っていて。つまり機動力が無いという弱点がある。けれど、その弱点を補うために、私は攻撃力に全ての精神情報を極振りしている。それがどういう意味か、賢明な蟲遣い様になら理解できていますわよね?」

「攻撃こそ最大の防御ってか……。つまり弱点は無いと言いたいわけだ」

「もちろん! 私に弱点は皆無! あるとするなら、エレガントすぎる容姿だけ! 美しいって罪ですわっ!」

「なら……」


 蟲遣いはトレンチコートのポケットに手を突っ込むと、背筋をピンと伸ばし、そして重戦車のいる場所めがけて、余裕綽々よゆうしゃくしゃくに歩き出した。


「雑談をしているうちに忘れたのですか? 周辺には地雷が設置されていて――」


 と、説明を繰り返そうとした重戦車であったが、蟲遣いが何事もなく歩き続けることに、その台詞を止め、「なぜっ!」と戸惑いの表情を見せた。


「どうして地雷が爆発しない? そう思ってるんだろ? ふん、そんなもん、俺には通用しない」

「どんな小細工を」

「どうでもいいお喋りをしている時に、俺は害蟲を散開させて、周辺をスキャニングしていた。地雷を虱潰しに見つけ出すのには苦労したぜ」


 地雷が埋められている場所を着実に避けて歩きながら、蟲遣いは言う。


「スキャンですって? 地中に埋もれた地雷を目視し探知するなど不可能。ましてや広範囲にバラ撒かれた地雷原の中を探査する方法など、この短時間では――」


 重戦車の饒舌な口ぶりがはたりと止まった。

 その視線が見ていたのは、蟲遣いの足元で触覚を揺らしていた、ゴキブリ型の害蟲である。


「……なるほど。ゴキブリの触覚ですか。聞いたことがありますわ。ゴキブリの触覚は虫の中でも感覚神経が鋭いという話を。その方法で見つけだしたのですわね」

「バレちまったか」


 ゴキブリの持つ長い触覚は、音や振動を察知する他にも、匂いまでをも探知する生存能力が備わっている。口元から零れ落ちたクッキーの食べカスを見つけられるのも、その嗅覚が昆虫という種の中でも一際に鋭いからである。

 一方、地雷にはもちろん火薬成分が含まれている。ゴキブリの生存能力を使って、そのすえた匂いを探知することができれば、地雷の埋まっている場所も特定できる。


「だがそれだけじゃねぇ。ゴキブリならまとめて周囲に放つこともできる。目の前に敵がいたとしても、その小柄で素早いゴキブリの動きなら、小細工をしているのにも気づかれない」

「なるほど。私を口説いているのかと思っていましたが、全ては時間稼ぎだった」

「そういうことだ。ヴィジュアルハッカー同士の戦いっつーのは、口先での騙し合いから始まるんだよ。狡猾に……そしてしたたかに……。利用できるもんはなんでも利用させてもらう」


 蟲遣いの戦い方はいつだってそうだ。泥臭く戦い、相手を翻弄することこそが、ヴィジュアルハッカーとしての美学だと、先生に教わってきた。


「ブラボー! さすがは蟲遣い様! けれど敢えて騙されてあげたのですわよ? 貴方様を殺そうと思えば、いつでも殺せましたから」

「だろうな。結局お前は、俺と真正面からヤリあいたいんだろ」

「少しはわかってきたようですわね。私の一途な乙女心をっ!」


 重戦車はネイル端末を小刻みに動かして、全ての銃火器を車椅子の上に引き寄せ始めた。そして安全装置のようなモノを次々と外していく。どうやら重戦車もまた、本気のようだ。


「第二ラウンド開始だぜ。ここからは総力戦だ!」


 蟲遣いもまた両手を広げ、自らのネイル端末の、そのリミッターを外した。

 ネイル端末は赤く点滅し、熱を帯びる。そうすれば情報処理能力は十倍から二十倍に引き上げられる。もちろんそれほどまでに無茶をすれば、代償として数分と機能を維持できなかったが。

 出し惜しみは無し。機能の限界を越えて全ての害蟲を展開し、真正面から重戦車に立ち向かうことにする。それこそが唯一、勝てる可能性であった。


「地雷を撤去したくらいで、勝ち誇ってもらっては困りますわね! 言ったでしょう、私の本領こそ、その火力にある! この有り余る愛の精神情報によってぇ! 貴方様の土手っ腹に穴をあけるくらいぃぃ! 造作のないことですのよぉぉぉ!」


 感情を剥き出しにし、歌舞伎のように長い髪を振り乱しながら、重戦車はその全ての兵器の銃口を蟲遣いに向けてきた。

 結局のところ、地雷の場所を特定できたところで、戦況は依然として重戦車が有利である。


「ピュタン、デュメルドュ! 火薬に揉まれて爆りなさい! 蟲遣い様ぁぁぁぁ!」


 重戦車は力強くトリガーを引いた。

 フルバースト。一斉に放たれた榴弾は弧を描き、銃弾は閃きとともに一直線に飛んでくる。その全てが蟲遣いの心臓を寸分狂わぬ精密性で狙ってくる。

 凄まじい連撃だ。紛争地帯に単身で突っ込んでいるような状況である。


「我慢だ。ここは凌げ……」


 その銃弾を害蟲で弾きながらも、蟲遣いは身を護り続けていた。

 現在、蟲遣いの操っている害蟲の数は、全部で一万匹程度。体内に残った精神情報量を全て放出しても操れるのがそれが限界。

 対して、重戦車の放つ銃弾や榴弾は、毎秒500発を越えていた。

 銃弾の軌道をバグらせ、ダメージを最小限に抑えるために、害蟲を一匹犠牲にして相殺している。榴弾の爆風を防ぐなら、鎧虫が百匹は必要だ。

 ならば計算上、あと10秒もすれば、蟲遣いの操る害蟲は全て叩き落とされ、そして丸腰になってしまう。結果、その砲撃の暴風雨に裸のまま晒され、爆散して絶命だろう。

 だとするなら、その10秒の中で最善の隙を狙わなければならない。


「私の攻撃は、貴方様が死ぬまで、一生終わりませんわよっ!」

「それはどうかな……。どんなモノも、延々と続きはしないものだ……」


 その時はやってくる。重戦車は背中に担いだ火薬庫から、新しい榴弾と銃弾を補充するため、リロードを開始した。それが一瞬の隙である。


「……ここだっ!」


 蟲遣いは意を決して、足元に待機させていたゴキブリ型の害蟲に一つの命令を下した。

 ゴキブリはカサカサと足音を鳴らしながら、一斉に地雷の上へと移動した。すると、すでにハッキングして無効化していた地雷の信管に、カチリと誤作動が生じる音がした。

 辺り一面に敷かれていた地雷が、同時に暴発を起こした。地面はどこもかしこも捲り上がり、大地は割れる。まるで火山が噴火したかのように噴煙が辺り一面を覆う。コンクリート片は空を舞い、視界は遮られる。

 その噴煙に、蟲遣いは自分の姿を溶けこませた。


「煙幕のつもりですか。小癪なことをなさる……けれどっ!」


 重戦車は小さな鼻の頭をクンクンと動かした。

 そして蟲遣いの残した影の方向に、身体を向けてきた。


「隠れても無益! 無益! 無益ィ! 初撃で与えた地雷の攻撃によって、貴方様の身体には微量の硝煙が付着している! 私もまた、その硝煙反応を探知することができますのよ!」


 言って、重戦車は肩に担いでいた戦車の砲身を、蟲遣いの影に向けた。


「ちょこまかと逃げ回ってばかり! いい加減に撃ち落としてくれますわ!」


 戦車の砲身に火が点いた。放たれた砲弾は、砂煙を吹き飛ばし、音の壁を真っ二つに割りながら飛んでくる。

 だが、晴れた砂煙の先に、蟲遣いの姿はなかった。


「――んなっ!」


 重戦車は呆気にとられたような声を出した。

 そこにあったのは、蟲遣いのトレンチコートと、擬態を得意とする害蟲の群れである。硝煙の臭いはコートに付着したもので、蟲遣いの影は害蟲による擬態であった。


「コッチだウスノロ!」


 蟲遣い本人は、すでに重戦車の懐に飛び込んでいた。

 慌てて体勢を立て直す重戦車だったが、もう遅い。


「目眩ましすると見せかけて、さらに擬態を使った。二重に私を騙したのですわね」

「知ってるか? 騙されるほうが悪いって言葉をよぉ!」


 蟲遣いはここぞとばかりに、重戦車の枯れ木のように細い手首を掴んだ。


「とらえたぞ! もう仮想兵器のトリガーを引かせはしない! 俺の勝ちだ!」


 蟲遣いは同時に、袖から害蟲を放つ。

 掴んでいる重戦車の手首にそって、害蟲が次々と飛び移っていく。そして牙を食い込ませ、ファイアーウォールを破壊し始める。


「うふふ……。近くで見ると、よりいっそうにハンサムですわねぇ……」


 不利な状況であろうに、重戦車はうっとりと頬を赤らめている。


「いいのかよ、余裕ぶっこいてる暇はねぇぜ。懺悔するなら今のうちだ」


 辺りには紫電が迸る。重戦車のセキュリティソフトが、害蟲によるバグ攻撃に抵抗している証だ。だがそれも時間の問題であろう。あと数秒もすれば、セキュリティを破壊し、ファイアーウォールも破ることができる。


「うおおおおおおお!」


 蟲遣いは全力で体内の精神情報をひねり出し、害蟲による攻撃を敢行する。あと少しで勝てる。最強のヴィジュアルハッカーをほふれる。


「ふふふ……あははは……おーっほっほっほ!」


 ここで重戦車が三段に分けて笑ってきた。


「なぜ笑える? もう勝負は見えている。ごめんなさいされても、絶対に許さねぇ!」

「その言葉、そっくりそのままお返ししますわ」

「負け惜しみか? あん?」

「私の胸を見てごらんなさいな」


 蟲遣いは言われるがまま、重戦車の胸元へ視線を落とした。

 重戦車は着痩せするタイプだったのか、そこにはたわわに実った胸があった。露出度の高いドレスを着ていたので、胸の谷間もくっきりと見てとれた。

 その胸の谷間には、ゴツゴツと丸い、パイナップル状のモノが挟まれていた。


「……手榴弾か! てめぇ、自爆する気かっ! 正気かよっ!」

「おーほっほっほ! この距離での爆発は、もはや害蟲を持っても凌げきれやしないですわ! さあ、今度こそ今度こそ今度こそ! アデュー……。弾け飛びなさい!」


 重戦車が叫んだと同時に、手榴弾の安全ピンが跳ねた。

 蟲遣いは慌ててその場から退散しようとしたが、その手を重戦車が握り返してくる。


「どこに行きますの? 一緒にダンスを踊ろうじゃありませんか……」

「くそったれ!」


 ドカンと一発。

 即座に手榴弾は爆発し、辺りに細かな破片が飛び散った。

 とてつもない爆風も同時に発生。半径三十メートルという規模で、そこにはキノコ雲と土埃が舞う。


「ぐはっ……」


 蟲遣いは爆風に晒され、吹き飛ぶ。そのまま宙を乱雑に回転し、頭から地面に突っ込んだ。そのまま数十メートルほど地面の上を転がり、植え込みに背中をぶつけたところで、ようやく勢いは止まった。

 蟲遣いの身体の至るところから、深緑色の精神情報が吹き出した。口からも盛大に吐血。寸前で害蟲による防御を行ったが、やはりダメージを吸収することはできなかったようだ。

 とくに腹部にえぐるようにして食い込んだ、手榴弾の破片が致命傷だった。痛みを通り越し、もはや何も感じないほどだ。


「ぐはぁ……。はぁ……はぁ……」


 不規則ではあったが、かろうじて息はある。耳鳴りが酷かったが、意識はある。

 蟲遣いはその場に大の字で倒れつつ、爆心地を眺めた。


「自爆なら、あいつもただじゃ済まないはずだ……」


 胸の中央で手榴弾を爆発させたのだ。蟲遣いよりも、重戦車のほうが重症なはずだ。この勝負、ぎりぎりのところで勝ちのはず。

 けれど、しぶといのは蟲遣いだけではなかった。

 どこからともなく、ぎこぎこと鉄の擦れる不協和音が聞こえてきた。それは壊れかけた車椅子を漕ぐ音だ。

 そして、爆心地であるクレーターから顔を覗かせたのは、煤に塗れた汚い顔と、針金のように乱れた髪型になった、瀕死の重戦車だった。


「……はぁはぁ。コマンタレブゥー……? 生きてますよねぇ? 蟲遣いさまぁ?」


 もはや狂気である。

 あの殺傷力抜群な爆風に巻き込まれながらも、重戦車もまた生きていた。


「てめぇ……どうやって助かった……?」

「屈辱ですわ……この私が、防御に精神情報を割くだなんて……」


 おそらくはファイアーウォールを限界まで多重起動し、トーチカを形成して、爆風による破片を凌ぎきったのだ。体内の精神情報が莫大な重戦車なら、それくらいの緊急措置もやってのけることができるはず。

 だが、その代償なのか、重戦車の周りに展開していた仮想兵器にはヒビが入り、腐敗しては崩れ落ちている。どうやら彼女もまた、体内の精神情報の大部分を枯渇させてしまったようだ。


「バケモノめ……」


 さすがの蟲遣いも、認めるしかなかった。

 重戦車の、その勝利を欲するが故の強き信念と、ヴィジュアルハッカーとしての技量をだ。


「多量の出血で瀕死である貴方様と違って、私にはまだ戦い続けるだけの余力は残っている……。うふふふ……勝った!」


 重戦車は乱れ髪を櫛で整えた後、倒れる蟲遣いのすぐ側で車椅子の車輪を停めた。


「……クソが」


 もはや満足に喋ることもできない。蟲遣いは倒れたまま、重戦車を睨む。


「あと一歩でしたわね。貴方様の敗因は、害蟲に頼りすぎていたこと。そんな得体の知れない仮想生物に自らの命を預けるとは、愚の骨頂ですわね」

「害蟲は悪くねぇよ……。こいつらは立派に戦ってくれているさ……」


 蟲遣いには、それしか戦う術がない。

 ずっと一人で戦ってきた蟲遣いに、仲間と呼べる者がいるとすれば、その特殊能力だけ。


「はぁ……はぁ……。やっと蟲遣い様に勝てる。この銃弾を心臟に撃ちこめば、もはや貴方様は私の虜……。うふふ、楽しみですわぁ! 心がウキウキしますわぁ!」


 重戦車は、震える右手に単発式のラッパ銃のような仮想兵器を創りだした。おそらくそれが、彼女の最後の武器であろう。

 そして重戦車は、短銃の照準を蟲遣いの心臟に合わせ、片目を瞑って狙いを定め始める。


「くそう……。こいつにだけは絶対に負けたくねぇ……」


 万策尽きてもなお、蟲遣いは勝つための糸口を探していた。

 恐怖はない。傷による痛みなんて我慢すればいい。ヴィジュアルハッカーを名乗った時から、そんな不要な感情は捨てていた。

 感情があるとすれば、今そこにあるのは、悔しさ。

 何事も成せずに敗北する。そんな虫ケラのような自分が哀れで許せなかった。

 結局、自分のやろうとしていたことは、子供のヒーローごっこと一緒だったのか。口だけは達者で、何事も成せずに蹂躙されてしまうのか――。


「俺は、負けねぇぞ! 絶対に!」


 そんな魂の叫びが、一つの小さな勝機を導いた。


「――ぐぅちゃんに手を出すな!」


 漆黒の闇を引き裂くような声に、蟲遣いは「はっ」とした。

 そこには、重戦車の腕に噛み付いているシスタの姿があった。身体を鎖で縛られているにもかかわらず、それでも必死に歯を立てている。


「シスタ……無茶すんな。お前の攻撃なんぞ、重戦車には効かない」

「この可愛らしい仮想生物とは、随分と絆が深いようですわね……」


 重戦車は妬むように言いながら、シスタの頬を叩いた。


「はうっ」


 シスタは舞い落ちる枯葉のように軽々しくいなされ、地面に伏した。

 それでもシスタは諦めんと、腹筋に力をこめて上半身を強引に起こす。


「ぐぅちゃんは、こんな所で負ける人じゃないです! まだ付き合いは浅いけど、いつだって強い態度で自分の意志を貫いてきた男です! 料理勝負の時だって、ずっと勝ちにこだわっていました!」

「シスタ……かいかぶるんじゃねぇよ……。俺はそんな、熱い男じゃねぇ……」

「でも、約束したですよね! あたしをプロポリスタワーまで連れてってくれるって! それは嘘だったですか? 絶対に負けちゃだめです!」


 シスタは必死に食い下がり、蟲遣いを応援している。

 必死に、必死に、唾を飛ばしながら熱く応援してくれている。


「はん。お前に言われなくてもなぁ、負ける気はねぇよ……」


 蟲遣いは、その消えかけた闘争心に、再び火が灯るのを感じた。

 こんな所で負けていいのか。まだプロポリスタワーに侵入してもいないのに。

 蟲遣いは頑固だった。

 負けず嫌いでもある。

 瀕死の状態の中で、勝てる方法を模索し続けた。この状況で、何か利用できるモノはないか。藁をもすがる思いで――。

 悪あがきしている時に目に入ったのは、しきりにウィンクをして、何かの合図をしてくるシスタの姿だった。


「ねえ、ぐぅちゃん……。私は弱い子です。けど、強くなろうと、努力するくらいならできますです……」

「シスタ……お前……」


 シスタの言葉に、蟲遣いは身構えた。が、最後のチャンスだ。


「蟲遣い様、言い残すことは?」


 重戦車にそう訊かれ。

 蟲遣いは首を横に振った。


「もはやその軽々しい口も動きませんか。ならば貴方様のココロを、私が貰い受けると致しましょう。さぁさぁ、これでトドメですわ……。オールボア……」


 慈悲も無く、同情も無く。

 重戦車は、まるで野ウサギを狩るかのように、着実にトリガーを引いた。

 ズドンという、火薬の弾ける音。網膜が焼けるほどに火花が近距離で散る。

 その後、

 蟲遣いは、にぃと口角を上げ、揃った白い前歯を見せつけた。


「……おや? どうやら俺は死んでないようだが? お前が持っているのは、壊れて音の出ないクラリネットだったのか?」


 その皮肉に、重戦車は瞳孔を大きく見開いて焦った。


「なっ、なぜ!」


 慌ててトリガーを引き直す重戦車。ズドンともう一つ篭められていた弾は勢いよく発射されるが、その弾道は蟲遣いの心臓には当たらず、紙一重で頬をかすれ、飛んでいった。


「当たらない! この至近距離で、なぜ弾が当たらないのですか!」

「自分の腕を見てみろよ」


 重戦車は即座に自分の右手を確認した。

 右手には、ドス黒い斑点が浮かび上がっている。まるで毒に侵されたかのように、その部分だけがバグによって侵食されている。さらにその腕には、フンコロガシが一匹だけ、「ざまぁみろ!」と言いたげにぶら下がっていた。


「よくやったシスタ……首の皮が一枚のところで、助かった……」

「フンコロガシさん、仕事しましたですかね? えへへ……」


 シスタは照れくさそうに笑った。


「何をしましたの! 私はただ、シスタさんに噛まれただけなのに!」


 重戦車に至っては狼狽しっぱなしだ。彼女にとって、この事態は想定外だったのだろう。


「ざまぁねぇぜ。よく見ろよ、その噛まれた跡は確実にバグってるんだぜ。弾ニ発分、照準を逸らすくらいはできるっ!」


 害蟲の侵入経路こそ、シスタによる噛み付き攻撃であった。その噛み付いた傷跡に、フンコロガシがバグを注入したのである。つまりは傷口から、些細な神経毒が回っているのだ。


「ぐぅちゃん、ハッキングってやつ、うまくできましたかね?」

「前言撤回だな……。シスタ、お前は弱い子供なんかじゃなかった。手足が拘束されているにもかかわらず、まさかサイバー攻撃を敢行するとはな……驚いたぜ」


 シスタは十分に強い。少なくとも勇気もある。蟲遣いは今、それに気付いた。

 シスタはやればできる子だ。蟲遣いのハッキング技術を参考にして、それを真似るくらいの芸当はできるはずだった。

 だって、ヴァーチャル=ネストの管理者、つまりは神様なのだから。


「くぅ……。冷静に……冷静に……。リロードをすれば私の勝ちですわ……」


 重戦車は狼狽した自分の気持ちを打ち消そうと、そう呟き冷静を保ちながら、予備の弾を詰め始めた。

 けれど上手く弾を詰めることができない。ポロポロと弾はこぼれ落ちていくばかり。重戦車の右手から指の先にかけては、完全にバグっていて、思い通りに動いていないのだ。

 その慌てっぷりに半笑いしながら、蟲遣いは腕の力のみで地面を這った。この、ほんのわずかな勝機を是が非でもモノにするためには、もはや体裁など二の次だ。害蟲のように惨めな姿を晒しても、絶対に勝つと、心に決めて。


「重戦車ぁ……。今度こそ終わりだ……」


 蟲遣いは重戦車の焼け焦げたドレスを掴みながらよじ登った。


「何をする気でっ……! もはや貴方様に、ハッキングする余力は残っていない! このフンコロガシによるバグ攻撃も、しばらくすれば自然と治癒するはずっ!」

「だからって、今のお前を倒す武器くらいは用意できている!」


 蟲遣いは重戦車の肩を掴み、顎を引き寄せ、そして自分の顔を勢いよく近づけた。


「奪わせてもらうぜ! てめぇの生粋を!」


 ――キスである。

 蟲遣いは、重戦車の唇に、濃厚なキスをした!


「――ッッッ!」


 重戦車はあまりの出来事に反抗できずにいる。背筋をピーンと伸ばし、身体を緊張させて震わせている。喉の奥から「うっ……ううっ……」という、言葉にもならない声も漏れていた。

 無抵抗なのをいいことに、蟲遣いは舌を使い、重戦車の唇を内側からまさぐった。

 長いキスの後、蟲遣いはようやっと、重戦車の唇から離れた。

 重戦車は「ぷはっ!」と大きく息をして、口角から垂れた涎を拭う。


「……蟲遣い様ぁ、一体、コレはぁ……」

「へへ。どうだった? 俺との念願のキスは? 嬉しいか?」

「嬉しいはずがない! ムードもへったくれもない! 一体なぜ……キスを……」

「取り乱すなよカッコ悪い。これはキスじゃねぇよ。直接お前の体内にバグを送りこんだ。この俺と交わるってことは、つまりそういうことだ」

「ま、まさかっ! そんなことっ!」


 慌ててネイル端末を起動させようとする重戦車。だがネイル端末はうんともすんともいわず、セーフモードすら起動しない。手に持っていた拳銃も効力を失い、消失している。

 それはつまり、重戦車の魂の中にある精神情報が、蟲遣いのキスによって汚染され、バグってしまったことを意味する。


「キス一つで、この私の精神情報がバグるはずがない! なぜ! どうして!」

「アイスクリームだよ……」

「……は?」

「道端に落ちてた、俺が作って捨てたアイスクリーム……。それは料理の過程で確実にバグっていた。それを直接お前の体内に流し入れた……。ウィルスとしてな……」

「はぁっ!? まさかの残飯を、この私の口に、ダイレクトにっ! いやいや、そんなことで、この私の精神情報がバグるはずがないっ!」

「それがバグっちまうんだよ。人の魂ってもんは案外と脆い。免疫力が低下した今なら、それも十分に可能だ。残念だったな重戦車。俺の……勝ちだ」

「は、はうぅ……私の……ファーストキッスが……」


 先ほどまで威勢の激しかった重戦車は、キスをされたことにより、借りてきたネコのように大人しくなった。今は顔を真っ赤に沸騰させ、背中を丸めながら顔を覆い隠している。

 無力化した重戦車をプイとほっといて、蟲遣いは後ろで縛られていたシスタの元へと、足をひきずりながら歩いていった。


「遅くなったなシスタ。ようやっと助けにきたぜ……」


 シスタの鎖はすでに断ち切れている。重戦車が戦闘不能に陥っているため、鎖としての効果が消えてしまったのだ。


「それにしても、シスタがハッキングまで覚えているとは盲点だった……。ぶっちゃけシスタがいなけりゃ負けていたぞ……。俺も少しは反省しなきゃいけねぇな……」

「ねぇ、ぐぅちゃん」

「……あん? なんだ?」

「サイテーです……」


 言われてしまった。


「助けてやったのに、サイテーはないだろサイテーは」

「ジャガイモさんが可哀想。いきなりキスするだなんて……デリカシーがないです」

「そんな難しい言葉、どこで覚えた?」

「話をはぐらかさないでください」


 シスタの目は可能な限り細くなっていた。軽蔑、という言葉が見え隠れしている。


「そんな顔するな。せっかく命がけで助けたんだ……。俺はシスタを……」


 蟲遣いはふらつき、そして膝をついた。

 目の前がチカチカしている。「ゲホッゲホッ……」吐血も止まらない。

 もはやほとんどの精神情報は枯渇している。立っているのもやっとの状態であり、お喋りするのも限界だった。


「大丈夫? ぐぅちゃん?」

「大丈夫だ。シスタが無事でよかった……」

「どうして?」


 シスタの大きな瞳から、涙がポロリと流れ、角ばった顎へと伝った。


「どうしてそんな、ボロボロになるまで、あたしを助けてくれるのです?」

「愚問だな。何度も言ってるが、シスタを助けるために、俺は命を張ってるんじゃねぇよ。俺は自分のために、自分が強い人間だと証明するために、戦ってんだ……」

「強い人間だと証明するため……?」


 蟲遣いの意識はどんどんと白い靄に侵食されていった。ご丁寧にも、三途の河原のようなモノまで見えてくる。いよいよもって正気を保つのも限界のようだ。


「ここは危険だ……。騒ぎを聞きつけた雑魚のハッカーたちが、ハイエナのように おこぼれを狙うはずだ……。お前は逃げ……ろ……身を……隠……せ……」

「そんなことできないですよ! ぐぅちゃんと一緒じゃなきゃ嫌です!」

「あとは任せたぞ、フンコロガシ……。シスタを守ってやれよ……」


 蟲遣いは最後の力を振り絞り、フンコロガシをシスタの肩に乗っけた。

 フンコロガシは「任せとけ!」と敬礼している。


「ぐぅちゃん! ぐぅちゃん!」


 シスタに肩を揺すられる蟲遣いだったが。

 しかし意識は戻らず。そのまま前のめりで倒れ、その場に沈黙するのだった。


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