第1章
第2話 致命的な脆弱性①
『ヴァーチャル=ネストは人類最後の希望! いつでも、どこでも、誰とでも! あなたの夢を現実に映し出し、色とりどりの世界を創造いたします! さあ、家族と、友人と、愛する人と、健やかに
「……うっせーな」
鼓膜にガンガンと響くアナウンスに、
振り向き、透き通る蒼い空へと視線を向ければ、そこには天を貫き破るかのような電波塔がそびえ立っているのが見えた。その広報用スピーカーから、耳障りなプロパガンダが流れていたのだ。
その電波塔の名は『プロポリスタワー』と呼ばれている。
この世界のヴァーチャル=ネストを管轄する、いわばシステムの管制塔だ。
その周囲には、先ほどまで精神情報を奪取するために訪れていた繁華街がある。にょきにょきとタケノコのようにビルが伸び並び、辺りは綺羅びやかな光の粒子で装飾されていた。
「なにが精神情報の共有だ。クソ憎たらしいホラ吹きめ」
足元に「ペッ」と唾棄しながら、蟲遣いは自分が歩く方向へと視線を戻した。
先には廃れた道が続いていた。ぺんぺん草が無造作に生え散らかる、そんなあばら道だ。辺りには黄土色の瘴気が漂っていて、うっかり深呼吸したら最後、即座に感染病に犯されてしまいそうな雰囲気だ。
周囲には今にも倒壊しそうな雑居ビルが立ち並んでいる。そのラクガキだらけの壁には、電子ドラッグに溺れる若者が持たれかかっていた。意識がぶっ飛んでいるのか、何とも形容しがたい崩れた表情をして、ヨダレを垂らしている。
「これが現実だ……夢じゃない……」
天国と地獄は、はっきりと境界を沿って安定している。
天国が大人たちの住む繁華街なら、地獄こそが若者たちの棲むこの場所、堕落街であろう。
「まぁ、俺みたいな呪われた犯罪者は、この堕落街こそがお似合いだが……」
自分で自分を皮肉りながら、半壊した雑居ビルのある道を抜けていく。右へ左へ、迷路のように入り組んだ裏道を進むと、ほどなくして蟲遣いが目指すべき目的地に到着した。
そこには、過去に『学校』と呼ばれていた施設があった。
と言っても外装はほとんどくたびれ、壁や屋根の塗装は剥がれ落ちている。昔は生徒たちに時間を知らせていたはずの大きな鐘も、今は錆だらけで動かない。庭にある花壇には花の球根が植えてあったが、どれもこれも枯れ萎びれている。
そんな、何者からも見捨てられたかのような学校の昇降口へと、蟲遣いは歩いていった。
「あ、ぐーちゃんが帰ってきた!」
昇降口付近に座っていた汚い服装の少年が、蟲遣いの姿を見つけるなり甲高い声をあげた。
それを皮切りに、昇降口から年端もいかぬ子供たちが勢いよく飛び出してくる。
「おかえり! ぐーちゃん!」
「ぐーちゃんだ! ぐーちゃんが帰ってきた!」
「僕らのヒーロー! ぐーちゃん!」
あっという間に、蟲遣いは子供たちに包囲されてしまった。
「うっせーぞ、物乞いのガキ共が。少しは音量下げろ」
耳の穴に指を突っ込みながら恫喝するが、子供たちは決して蟲遣いの側から離れることはなく、むしろトレンチコートのあちらこちらを引っ張っては懐いてくる。
「バグっちまうぞ……。俺に触れるな」
「関係ないよ! ちょっとくらい大丈夫!」
「そうだよー。
無警戒に近寄ってはくるが、このままだと子供たちが害蟲の毒に侵されてしまう。すぐに蟲遣いの側から離れさせないといけない。
「……わかった、わかったよ。ほら、精神情報を奪ってきた。これをやるから、あっちで遊んでろ」
観念した蟲遣いは、指を擦り、いくばくかの精神情報をフォルダからばら撒いた。
それは金平糖ほどの大きさで、眩しく輝いていた。
「わぁ! 綺麗な、あいどす!」
「さすがぐーちゃん! 我らがヴィジュアルハッカー!」
「わーい」「わーい!」「わ~い!」
子供たちは、ばら撒かれた精神情報をかき集め、大事そうに手で包み込む。
するとどうだ。精神情報は子供たちの手に触れた瞬間、思い思いの形に生まれ変わり、夢を現実にしていく。
そのほとんどはオモチャだ。男の子ならブリキのロボット。女の子なら可愛らしいお人形。運動が好きな子供ならサッカーボールを生み出した。
「ありがとう! ぐーちゃん!」
「ありがとう!」「ありがとう!」「ありがと~う!」
子供たちはまばらに感謝の言葉を述べると、そして手に持ったオモチャの仮想現実を使って、校庭で思い思いに遊び始めた。
子供たちは無垢な笑顔を見せる。
その束の間の平和を実感し、蟲遣いもまた、ほんの少しだけ笑った。
「精神情報は有限であって、使用期限も限られてる。計画的に使うんだぞ」
「かしこまりましたっ!」
「じゃあな。長生きしろよ、ガキ共」
蟲遣いはそう言い残し、そして学校の中へと足を踏み入れた。
学校の廊下は薄暗く、埃っぽかった。蜂の巣状に割られたガラス越しに差し込んでくる弱々しい太陽の光だけでは、この汚い廊下を照らすこともできない。
蟲遣いは、そんな瓦礫だらけの学校の、とある教室へと足を運んだ。
そこには薄い布団が引かれていて、その上には一人の幼女が横たわっていた。
幼女は頬骨が浮き出るほどに痩せこけていた。死の臭いを嗅ぎつけてきたのか、周りにはハエが数匹飛んでいる。もちろん、そのハエも仮想生物の
「あ、う……」と、幼女は言葉にもならない喘ぎ声を漏らしている。息は微かで、今にも止まってしまいそうだ。
「苦しいか? 待ってろよ」
蟲遣いは幼女の横にかしずくと、フォルダに閉まってあった精神情報を取り出した。そしてそれを、幼女の胸へと運んでいった。
精神情報はオレンジ色に発光し、幼女の華奢な身体を、柔らかい毛布のようにして暖かく包み込む。その光に照らされて、幼女の頬には赤みが増し、苦しそうにしていた表情も少しだけ和らいだのだった。
それを見て、蟲遣いはホッとする。
「あら、もう帰ってたのね」
蟲遣いに声をかけてくる者が一人。
蟲遣いは慌てて緩んでいた顔を引き締めた。
そして、声のするほうを見れば、そこには中年の女性が立っていた。掃除をしていた最中だったのか、手にはホウキとチリトリを持っていて、頭にはナプキンを絞めている。
「なんだ、
その女性こそが、蟲遣いが先生と呼び慕っている人物である。繁華街では二頭身のアバターとして、蟲遣いの仕事をサポートしてくれた人物でもある。
アバターではレトロな姿を披露していたが、今はそうではない。きちんと人間の姿だ。とは言っても、大きな胸を揺らしているのは変わらないし、短いタイトスカートを履いて若さを主張しているのも変わらない。チャームポイントである丸い黒縁眼鏡をかけているのもまた、まったくもってお馴染みである。
「帰ってきたのなら、ただいまの一つでも言いなさい」
先生は手に持っていたホウキの柄を、蟲遣いに向けながら叱った。
けれど蟲遣いは、「けっ!」と声に出して悪ぶった。
「ガキじゃあるまいし、行儀のよろしい挨拶なんてするか。クソ食らえだぜ」
「こら! そんな汚い言葉を、子供の前で使うもんじゃないわよん!」
パカンと小気味よい音が鳴ったのち、蟲遣いの頭に激痛が走った。ホウキの柄の硬い部分で、つむじ付近を叩かれたのだ。
「……っ痛ぇな」
不機嫌に睨む蟲遣いであったが、先生は保護者らしく腰に手を当て怒ったままだ。
「まったく、その反抗的な態度は誰に似たのかしらねぇ?」
「反抗的な態度を見たくないのなら、まずは褒めてくれよ。俺は褒めて伸びるタイプだからな」
「あら、褒められるようなことをしてきたのかしら? 違うでしょう?」
「……そうだな。これは犯罪行為だからな! かははは」
蟲遣いはからっと笑った。
精神情報を違法に奪ってきたのだから、褒められるようなことは一切していない。
「……でも、お仕事ご苦労さま。おかげで子供たちは今日も元気に生きていくことができる。褒められやしないけど、感謝はしているわよ」
先生もまた虫の息である幼女の前にかしずくと、その頭を優しく撫でながら言った。
幼女は相変わらず昏睡状態のままである。苦しそうに額に汗を溜めている。
「おい先生。こいつ、あと……何日だ?」
蟲遣いは先生に訊いた。
幼女の、その余命をだ。
「……もってニ日ってところかしらね」
表情は変えず、はっきりとした口調で、先生はそう告げた。
「俺が奪ってきた精神情報も、病を治すには効果が薄いようだが」
「そうね。彼女の精神情報は
先生はハエの仮想生物を手で払いながら嘆いた。
受け入れたくはないが、この幼女の命は、もはや風前の灯なのだ。
「
「それも仕方がないことよ。搾取される側ってのは、いつの時代も短命よ。過去も未来も、そのルールは変わらない。寸分狂わず実行し続けるシステム上のプログラムと同じようにねぇ」
言って、先生は幼女の枕元に置いてあった水桶にタオルを浸した。そして十分に水を浸したタオルを強く、とても強く絞り、幼女の額にそっと置いた。
「精神情報の枯渇……か――」
人間の、魂と呼ばれる未知の概念には、様々な情報が眠っているとされる。
例えば、生きているうちに魂に刻み込んだ『記憶』だとか。
未来を展望するための『夢』だとか。
それを実現するための『希望』だとか。
その魂は、難しい仕組みや手順の話を抜きにして、今やヴァーチャル=ネストと呼ばれるシステムによって数値化し、簡単に取り出すことができる。取り出したその精神情報は、形を加え新たに具現化し、それが仮想現実となって世界を彩っているのだ。
この幼女の場合、その精神情報が枯渇している。魂の器の中にある、夢や、希望や、記憶が無くなれば、人は生きていく目標を見失い、そして死に至る。
肉体的に、という意味ではなく。精神的に、という意味で。
人は目標を見失ってしまうと、死んでしまう脆弱な生物なのだ。
それが、この世界のヴァーチャル=ネストから切り離されるということの正体であり、切り離されれば人は無残にも死んでいく。
「こんな死にかけの子供を拾ってくるなんて……。先生も無駄なことをする」
「放っておけなかったんですもの。仕方ないわ」
この幼女は、先生がどこからか拾ってきた
そして蟲遣いもまた、先生に拾われてきた孤児だ。今は立派な青年へと成長し、先生の仕事の手伝いをしている。
その仕事というのが――
「そんなことよりも、報酬の話をしましょうか」
幼女の看病をした後、先生は立ち上がりながら言った。
にこっと下衆に笑い、先生は胸元へと古ぼけたネイル端末を近づけた。
すると電子マネーである黄金色の金貨が、チャリンチャリンと現金な音を躍らせて飛び出してきた。
「瀕死の子供の目の前で、下世話な金の話とはな」
指図通り、蟲遣いは奪ってきた精神情報を、フォルダより全て取り出す。
精神情報は蟲遣いの手のひらに浮かび上がった。それはちょうど、リンゴと同じくらいの大きさで、虹色のガラス球のようなモノである。それはとても新鮮な精神情報の集合体であるから、高値で取引きできるはずだ。
「ほらよ、ありがたく受け取れ」
その精神情報を、蟲遣いは粗雑に放り投げた。
「おっとっと、はい。確かに」
先生は精神情報を受け取ると、それを丁寧にフォルダへしまい、自らの胸へ格納した。
報酬として、蟲遣いは多額の電子マネーを受け取る。
だいたい、一週間は食べ物に困らない額である……はず、だった。
「ひぃ、ふぅ、みぃ……ん?」
電子マネーを勘定してみたが、おかしなことに気づく。
「おい、先生。これはどういうことだ?」
「はい?」
「しらばっくれるな。報酬が少なすぎるだろうが。こんなんじゃ赤字だ」
「あら、仕事に見合った報酬でしょう?」
「冗談だよな? 仕事をした分だけきっちり貰う。多くても少なくても駄目だ、残りをよこせ」
「相変わらずの銭ゲバねぇ……」
「あんたに言われたくない。そもそも、これはビジネスだ。精神情報が枯渇した子供たちを延命させるために、俺は繁華街の大人たちから精神情報を違法に奪ってきている。もちろん、命がけでだ。そいつは慈善事業でやってるわけじゃねぇ。俺自身が、生きていくためだ」
蟲遣いが、この学校の子供たちに精神情報を配っているのは、それが理由だった。
決して子供たちに同情して働いているわけではない。
金のため。生きるため……。そう自分に言い聞かせている。
「ごめんなさいね。精神情報のロンダリングだけど、今じゃあまりお金にならないのよん。だから、報酬の額も下げなきゃいけないのよねぇ」
先生は苦笑いしながら言い訳を始めた。
「……また、相場が下がったのか?」
「暴落よん。精神情報で溢れかえる繁華街の大人たちには、高値では売れないわ」
「……っち。統治者の畜生め」
蟲遣いは割れたガラス窓の先から見える空を睨んだ。
そこからでも繁華街の立派なビル群は見てとれるし、雲海を貫く電波塔だって目に入る。周りにはギラギラと輝く精神情報の粒子が飛散していて、とても幻想的ではあったが。
その無駄な光の装飾こそが、子供たちから抽出した精神情報だった。それを繁華街の人々全員に平等分配し、幸福を
だが、それは表向きの口実にすぎず、平等なんて言葉は当てはまらない。
本当は、夢、希望、記憶――子供たちが持っているとされる無垢な精神情報を過度に奪っているのが、今のシステムの実態だ。その奪われた精神情報は権力を擁する大人たちへと配給され、湯水のように活用される。
つまり、子供たちが持つ精神情報は、大人たちに奪われ、無駄遣いされているのが現状だ。
「この世界も、いよいよもって終末よねぇ。未来ある子供の命を
先生は悲しげにつぶやき、そして横たわる幼女の髪を優しく撫でた。
幼女は「あう……」と、乾燥した唇を弱々しく動かすだけ。もはや満足にお喋りをすることすらままならない。その原因は全て、体内にある精神情報が枯渇しているせいだ。
この幼女に限らず、堕落街に棲む若者の夢や希望はすでに枯渇しつつある。共有できる精神情報が少なくなれば、必然的に世界のいとなみは破綻する。それをわかっていながらも、大人たちは精神情報を搾取し続けることを止めやしない。
それはなぜ?
理由は簡単だ。
もう、この世界は終末を迎えているからだ。
廃れて終わり行く世界には、もう未練は無い。だから大人は皆、お祭り騒ぎをしながら余生を過ごしているのだ。死にゆく子供の強烈な未練など、つゆ知らずに――。
「ふん、人類の衰退や滅亡なんぞ、俺にはどうでもいい話だ」
蟲遣いはその状況を鼻で笑った。
それは仮想現実に身を委ねる現代人の罪と罰。物事をやたらと簡略化し、煩わしい仕組みを切り捨ててきたからこそ、人類もまたシステムに無益とみなされ排除される。だからこの世界もきっと、今まで滅んできた文明と同じように、歴史の表舞台からひっそりと消えていくのだろう。
つまりは人類の滅亡こそ、自然の摂理なのだ。
「そんなことより目先の金だ。ほら、早くよこせ」
この腐り果てた世の中で、唯一信用できるのは金だけだ。蟲遣いは手のひらを先生に向けながら、足りない分の催促を繰り返す。
「仕方ないわね……。なら報酬の足りない分は、これで補ってもらおうかしら」
先生は電子マネーとは別に、小さな箱に入ったファイルを添付してきた。
「なんじゃこりゃ? 中身は黄金色の小判ってわけじゃないよな……」
蟲遣いは箱をまじまじと観察する。その箱は鍵によって施錠され厳重に密閉されており、中身を探ることはできない。
「その中身はね、繁華街の定置網にひっかかっていた、害蟲よ」
定置網とは、先生が繁華街に仕掛けているとされるトラップ型ウィルスの通称だ。そのトラップには精神情報を自動で奪う目的があるが、どうやらそれに、意図に反して害蟲がひっかかってしまったようだ。
「害蟲ねぇ。そんなこったろーと思った。ゴミはゴミ溜めに、害蟲は俺に押し付けるのが手間が省けると考えたわけだ。駆除するのがメンドクセーから……そうだろ?」
「自虐かしら?」
「正論だろ」
蟲遣いは少々の怒りを露わにしながら言った。こんな汚い害蟲と同類扱いされるのは嫌だったからである。
「まぁ、害蟲のことなら先生よりぐぅちゃんのほうが専門家でしょ。だから、焼くなり煮るなり捨てるなり、箱の中身をどう料理するかは任せたわん」
「どんな害蟲なんだ? またカマドウマの類か? 正直、ゲテモノは勘弁だが」
「さあ? 害蟲だなんて危険で気色悪い仮想生物には触りたくもないわ。だから詳細なんて調べずに、さっさと隔離したの。でも、ぐぅちゃんなら有効利用できるかと思って」
「そうかい。中身がびっくり箱じゃないことを祈るばかりだな」
蟲遣いは害蟲が入っているとされる箱を受け取った。
その箱に圧縮されたデータサイズはさほどではなかったが、質量自体はとても高いようだ。かなり濃密で凶暴な害蟲が隔離されていることだけは、経験でわかった。
「じゃあ、私はこの子の看病があるから……」
報酬の受け渡しが終わると、先生はそっと幼女の隣に寝そべった。絵本でも読み聞かせて、寝かしつけるつもりなのだろう。耳なんて聴こえないのに……。
「先生よ、その子供には随分と熱心だな」
「そうかしら?」
「特別な子なのか?」
「別に。ただの子供よん。死にゆく運命を背負った、可哀相な子供よん」
「そうか……」
先生はいつだって明るく振る舞っている。今日も終始笑顔を絶やさなかったくらいだ。しかしそれは、作られた笑顔であることを蟲遣いは知っている。子供たちにはせめて、気鬱な姿を見せないようにと、保護者としての立場から配慮し、取り繕っているのだ。
蟲遣いは、その作られた笑顔が大の苦手であった。
作られた笑顔は、裏を返せば哀傷に直結するからだ。
先生は、この世界で虐げられる子供たちを愛することのできる、稀な大人であった。まだ成人になりきれていない蟲遣いに対しても、道を違わないようにと、いつだって優しく、時には厳しく指導してくれる。
だから蟲遣いは、先生の作られた笑顔を見なかったことにした。流し目に踵を返し、部屋の生ぬるい空気にトレンチコートをひるがえした。
「俺はもう行くぜ。害蟲を引き連れている俺みたいな奴は、純真な子供にとっちゃ、疫病神でしかないからな」
「ありがとうね。また近日中にも仕事を頼むわよん」
「ああ。また金儲けさせてくれよ」
「金儲けねぇ……。貴方にはもう少し、建設的な目標を持って生きてもらいたいものだけど。例えば、子供たちを助けるために……とか」
「そんな英雄みたいな綺麗事、俺には似合わなねぇよ……」
蟲遣いはそう吐き捨てた後、先生と幼女に背を向け、両手をズボンのポケットに突っ込み、逃げるようにして学校を後にしたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます