第6話 時間魔法戦《マジック・タイム・バトル》
機動突撃艦シルバーソードの右舷に、
しかし、その直後、不自然な次元流の乱れからこちらの位置が捕捉される。
刹那、一斉に放たれた
回避不可能の攻撃……、のはずだった。
しかし、シルバーソードにいつまでたってもレーザーの直撃は到達しなかった。
いや、よく見れば
「右舷、
【
有能だけど、不気味だわ、この
「はぁーい、自然な感じで通り過ぎます」
天海士のチャムは神業的操艦で無波動航行を維持しつつ、光子レーザーの直撃圏を離脱していた。
一瞬、遅れて四百万の光子レーザーの軌跡が虚空へと消えていった。
「では、光子レーザー、光子魚雷全弾発ーーー、あれ、ロックされてる」
まだ、完全に捕捉されてないんだから、隠蔽航行しないとダメでしょ! 作戦会議を聞いてなかったのか! いや、全く聞いてないな(泣)
「このまま、無波動航行を維持しつつ、次元深度200メタから500メタへ、少し深めに潜ります」
天海士のチャムは何事もなかったように通常航行に戻っている。
「
リー・ファ・リーが静かに補足する。
「……すいません。フェアリー隊長。次元爆雷を感知できず、申し訳ないです」
異次元レーダー担当の通信士
二枚羽も震え気味にパタパタさせている。
「いいの、いいの。そういうこともあるわ。それよりも、
可愛い子ちゃんを慰めつつ、ド派手ピンクにちょっと皮肉を言ってみた。
「いや、どうせ捕捉されるのは時間の問題だと思われますし……ブチッ」
ド派手ピンクの音声管制をロックしてみた。
何か言ってるけど無視、無視。
「ーーーラクトエル、気になってるんだけど、そのメガネ、誰かにもらった?」
リー・ファ・リーが変なことを言い出した。
いや、隻眼が鋭く光ってるし、何か重要なことに気づいたようだ。
私もなんとなく、あのメガネ、見覚えがあるんだけど、あまり思いだしたくない感じがする。
「え………あ、それはですね………」
頬が赤く染っていくラクトエル、ああ、それはもしかして恋なの? そうなのね?
とても嫌な予感がするけど。
「………カノン様に、頂いたんです」
「やっぱり!」
リー・ファ・リーがうなづく。
「やはり、そうなの!」
チャムも気づいてたらしい。
「嫌な予感が当たったわ、まったく」
サイクロー二・カノン、それはムーア王国第十三番聖騎士団所属の火星世界一の伊達男というか、ナンパ師として、かつては彼女の数が100人を超えてたけど、今は10人の美女に絞ったと豪語する男、いや、困った奴である。
ちなみに、「ルナの戦巫女」とか「白い魔女」は通称で、正式名称はムーア王国第零番聖騎士団であり、サイクロー二・カノンとはいわば戦友ということになるのだが、ちょっと、そういうのが恥ずかしい感じもする。同類と思われるのは非常に不名誉である。心外である。
「ちょっと待ってよ、カノンとどこで会ったの?」
「………カノン様は、私たち、第一軍の機動突撃艦ブラックソードの乗組員は、この前の天界の【エデン】で起こった【メルキゼテク騒乱】の次元震で
ラクトエルが【地味メガネ】になった謎が解けた。
そんなこと知りたくもなかったけど。
「コーシ隊長も生きてるんだ! よかった! ブラックソードの艦長のタイガルと言えば、トラ耳の怪力無双の天使よね」
チャムがうれしそうにつぶやく。
チャムはムーア王国第十三番聖騎士団長のコーシ・ムーンサイトファンである。
「コーシ隊長、健在なのね。いや、しぶといから、あるいは天界に転生してると思ってたけど、
リー・ファ・リーは興味深げに話を聞いている。
「パミール・フェノンはいなかったの?」
別にファンではないけど、フェアリーはついでに訊いてみた。
「パミール様もいました。あの方も渋くてかっこいいですね」
あんた、意外と気が多いのね。
【地味メガネ】のくせに!
「前から気になってたのよね、訊いてみるもんね」
リー・ファ・リーはそんな自分を誉めてあげたいという風に胸を張っている。
でも、胸はないけど。
貧乳なのがさびしい。
「フェアリー隊長!
異次元レーダー担当のファジエルがかわいい声を上げた。
「数は?」
「数万というところです。
ファジエルは真剣な眼差しで、円らな黒い瞳でフェアリーを見つめた。
ほんと、かわいいなあ、この子。
「ファジエル、
「 <<
ふたりの天使の声が艦橋にひびいた。
シルバーソードの背面の光子魚雷発射管から、数万の
次の瞬間、
「ちっ! こちらから行く前に、位置を特定されちゃったわね」
フェアリーは舌打ちした。
「チャム、急速浮上! 通常空間に出たら、光子波動エンジン点火、全開!
「
静かなエンジン音だが、時空間が歪んで、一瞬、意識が遠のきそうになる。
次の瞬間には、
「よし! 光子波動エンジン停止!」
「ラクトエル!
「はい」
地味なラクトエルの返事で、ナノマシンのウィルスプログラム弾頭が
あっけない感じだが、周囲の数十万の
「ふう、これで一安心ね」
フェアリーは一息ついた。
「約2エルぐらい本艦は【いないこと】になります。
リー・ファ・リーの開発したウィルスプログラムの効果である。
ひとつの
「
リー・ファ・リーは解説した。
「超接近戦かあ、【いないこと】になってるとはいえ、気持ちのいいものではないよね」
チャムが嘆いた。
ド派手ピンクも何か言ってるけど、今まで忘れててごめん。
「まあ、コーシ隊長とパミール、カノンに会えるのを楽しみに、ちょっと頑張ってみましょうか」
フェアリーは珍しく自分を鼓舞するように言い放った。
テメエは恋する惑星か!
いや、恒星だったか。
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