第六話 立仁、激昂!?

第六話 6-1

『鈴音―、ご飯出来てるよー、起きなさーい』

 予選二日目、日曜日の朝。パパの声がキッチンから聞こえて目が覚めた。外では小鳥のさえずりが聞こえるが、憂鬱な今の気分で聞いても、耳障りなだけ。眠い眼を擦りながらカーテンを開ける。

 今日は第三戦から決勝までの、超濃密日程。選手の大半は普段会社勤めの人達だから、そこまで長い日程が取れない、という大人の事情もあるんだとか。睡眠もしっかりとるべきだったのに、どうにも寝つけなくて、寝れたと思った時には、もう朝の光が隙間から差し込んでいた。

 昨日の試合内容は、結果だけ見れば上々の滑り出しだ。でも、蓋を開けてみれば立仁の個人プレーと相手の自滅に近いお気軽勝利。立仁は相変わらず私と連携する気配さえなく、私の方は立仁と一緒に戦えばいいのか分からず困り果てている。

 まだ予選とはいえ、本当に立仁は私と一切連携せずに自分の力だけで勝ち進む気なのだろうか。そうだとすると、立仁は私を最初からあてにしてないのではないか。考えれば考えるほど気分はずぶずぶと沈んでいく。

「ダメダメ、何考えてるんだ、私」

 頬を自分でパンと叩く。疑心暗鬼に陥ってる場合じゃない。今日の試合だ、今日の試合。起きて準備をしたら、会場に向かわなければならない。昨日連携できなかったのは運が悪かったから。そうだ、相手が弱すぎたのがいけないんだ。三回戦からの相手はこれまでとは違うだろうし、それこそ決勝戦まで続く、長い一日になるだろう。そう自分に言い聞かせて、布団からのそのそと這い出した。

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