マミーストライキ02

 幸いにも次の日は金曜日。

 学校で出来るだけ情報収集をしてみたところそこそこ使えそうな情報が集まった。

 まずは美久ちゃんから聞いた情報によるとどうやら部活は美術部らしい。美久ちゃんのお兄さんも美術部で写真を見せてもらったから間違いない。

 それと何処に住んでいるか。これはあの特徴的な外見ですぐに知っている人を見つけられた。

 とあるアパートの一階に住んでいてお姉ちゃんから聞いた通り一人暮らしだそうだ。

「どうしよう?」

 住んでいる場所が分かっているから最悪そこに行けばいいかもしれないけど見知らぬ子供を家に入れてくれるだろうか?

 お姉ちゃんの名前を出してもそんなに仲がいいって感じじゃなかったから意味がないかもしれないし、普通に考えて友達でもない人の家に入ろうとしちゃダメだね。

 でもそうなるとそれ以外のところで会って話をするしかないけど学校内だとお姉ちゃんがいるから論外。運動系の部活だったら外で走ったりしてる時を狙えばよかったんだけど美術部だからなぁ……。

 となると帰りを待って途中の道でーーってそれ怪しまれるじゃん。そめそも場所は分かっていても私がその辺の道を知らないから待ち伏せなんて無理だし。

 万事休すとはこのことかな?

 そう思った矢先、ふと視界に例の包帯だらけの霧場さんが入った。何も学校とか部活とかが彼女の行動理念ではないということをうっかりと忘れていた。

 霧場さんの趣味は美術部に入っていることからも連想出来たけどこれは正志くんに聞いた。

 街にあるものをスケッチブックに描くこと。

 ジャンルは様々で動物だったり風景だったりピカソみたいな絵だったり。

 とにかく、絵を描くのが好きなようで部活以外でも絵を描いているらしい。

 そして絵を描く上で周りが静かで描くものに事足りない公園にいると何故考えなかったんだろう。

 こうして偶然にも発見出来たから良かったけどもしそうじゃなかったら路頭に迷うところでした。

 けどここの公園って何もないのにな。あるのはベンチと申し訳程度の遊具。

 だから子どもが少なくて静かで描く人にとってはいい環境なんだろうけど。

 さて、さりげなく話しかけたいところですが第一印象で全てが決まるとあの伏見さんで知っていますから考えなくてはいけません。

 でもナンパをするわけではありませんし相手は同性ですからそう気負うことなく、あの子ども名探偵みたいに無邪気に話しかければいいだけ。

「どうも、お隣いいですか?」

 頷いてくれたのでそっと隣に座った。けど何も変わらずただスケッチブックとにらめっこして黙々と筆を進めている。

「何を描いてるんですか?」

「木。目の前にある木を描いているの」

 スケッチブックの角度を変えて見せてくれたそれは本当のように生き生きしていた。まるで絵に魂が込められているみたいだ。

「そんなの描いてて楽しいですか? 正直私はそんなの描いてたら退屈で死んじゃいそうです」

「ふふっ、確かに普通の人だったらこんなの退屈かもね。でも私にはこれが生き甲斐なの。絵って描いていたらその描いていたものが良く分かるから。何処に何があってどういう風になってるかとか」

「生きがい……。私にはないから理解出来ませんけどそれは何だか悪いことを言ってしまいました。退屈そうとか」

 私にはそう思たけど捉え方は人それぞれ違う。決めつけで言った自分が恥ずかしい。

「いいのよ。実際、退屈な時もあるの」

「絵を描くのが好きなのにですか?」

 それは少し矛盾しているような気がする。だって好きなら退屈はしないと思うのに。

「好きだからだよ。たとえば貴方がなりたい職に就いて仕事をするのはいいけど、やっぱり仕事だから上司ーーええと、偉い人には逆らえない。自分がやりたいのとはまるで違う仕事をやらされたら嫌でしょ」

「なるほど。それじゃあその絵も上司に言われて描いたと」

「ううん、これは気分転換に。でもやっぱ駄目。今は素直に絵を描けないな」

「落ち込むことはありません。私はそんなあなたを助けるためにはるばるやって来た名探偵ですからどんなお悩みもズバッと解決させちゃいます」

 お姉ちゃんに怒られたくないから包帯の話を聞いて終わりにしようと思ったけど気が変わりました。これは私が力になってあげないと。

「ありがとう。気持ちだけで十分だよ。それじゃあ私はこれで」

「気が変わりましたらいつでもご相談ください。私はあなたの味方ですから」

 だってもう私たちは友達だから。

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