ライアースネーク06

 寿に電話をかけてみたが繋がらず、しばらく待ってみると非通知で返ってきた。

「ごめん、ごめん伏見くん。突然色々と起こって君の頭の中はパニック状態だろうけどこっちの事情で連絡が取れなくてね」

「なんだ携帯でも失くしたのか?」

 非通知ということは公衆電話からかけてきた証拠だ。となると僕がかけたのを知らなかいとみえる。

「あっはー。君じゃないだからそれはないよ。けど、万が一に備えてああいった物は持たないようにしてね。それにしても公衆電話は結構少なくなったから大変だったよ」

「その万が一は僕に護衛をつけたのと関係があるのか」

 僕の部屋にまで入って来る勢いだったけどそれは麗嘉姉さんに止められた。

 部屋は近いし、何かあったら大声で助けを呼ぶからと言って今は燗南と同じ部屋にいる。

「ご明察。伏見くんはあの吸血鬼の成れの果てについて何か疑問に思ったことはあるかい? どんな些細なことでもいい」

「数がやたら多かった……くらいかな。あの大群がどうやって移動して来たのか。それは疑問に思ったけど」

「あれは人道的にここへ運び出された。明確な目的は現在調査中だけど奴らが動き出したとみて間違いないだろうね」

「奴ら?」

「君も一度は会っている連中だよ、緒方 和弥。奴のような不死コレクターが動き出した」

「不死コレクター」

 グールとなった天宮の妹を従えたあの男。どうやら寿とは知り合いでなにやら因縁がありそうだったあいつと同じ存在。

「僕が最近音沙汰なしだったのは奴らに対抗すべく仲間を募っていたからなんだ。でもついさっきそれは終わったところ。寂しい思いをさせてごめんよ」

「別に。てかお前の存在忘れかけてた」

「酷いな伏見くん。でもそう言われても仕方ないかな。僕が君を不死身にしたせいでこんなことに巻き込んでしまったから」

「気持ち悪いこと言うな。それよりそっちから電話をかけきたのはちょうど良かった。聞きたいことがあるんだけどお前はこの街に最近広まってる蛇の噂を知ってるか?」

「蛇? それはまた随分と興味深いね。まるで待ってましたと言わんばかりのタイムリーな噂だ」

「僕もそう思うよ。なんせ噛まれた人が不死身になるってんだ。不死コレクターが飛びついてくる可能性大だよこの噂」

 不死コレクターなら自分自身も不死になりたいと思っている奴もいるかもしれないからもう蛇を捕獲しようと動き出しているかもしれない。

「ん? ちょっと待って伏見くん。今、噛まれた人が不死身になるのかい?」

「ああ、人から聞いた話だけどそうらしいぞ。何かまずかったか? そりゃあ蛇自体が不死身なんじゃないのかって僕も驚いたけどさ」

「何もまずくないよ。けど、その噂なら僕が今から指示する場所に行けば万事解決だ。一応護衛の銀を連れて行くのを忘れないでくれよ」

「そうだ! 蛇の噂のことで頭いっぱいだったけどお前何であの子を僕の護衛にさせたんだ。結構大変なんだぞ。家に居候することになったし」

 どうやら麗嘉姉さんはよほど機嫌がいいらしく、居候はすんなり許されたけど本来なら物凄く苦戦していただろう。

 家族以外の異性がいるだけで僕は既に苦戦して、瀕死状況なんだけど。

「彼女は銃を持っていなくとも素で十分に強い。なに、君の相棒が戻ってくるまでの辛抱だ」

「その物言いだと刹那が姿をくらました理由も知ってるみたいだな」

「僕の予想だとニ、三週間もすれば帰ってくるよ。別に君が何か失態をしたからとかじゃないからそこは安心くれていい」

 理由は教えてはくれないのか。

 まあ、刹那が帰ってきたら直接本人に聞けばいいだけのことだけど。

「それまでの辛抱か。何も起こらないことを祈るよ」

「神頼みなんて君らしくないね。君が不死身だからって全てを背負わせる気はないからそう気を張らなくても大人に任せればいいんだよ」

 と仕事をしているのかどうか分からない謎の大人に言われてもどうしても安心は出来なかった。

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