ライアースネーク05
どうにか銀ちゃんを居候することを二人に納得(?)させることが出来てようやく自分の部屋でゆっくりしていたところ一通のメールが届いた。
差出人:仁宮寺 那恵
宛先:伏見 櫂
親愛なる先輩へ
今日はとても楽しかったです
お詫びはそれほど気にしなくてもお暇なときにで結構ですから
P.S.
そういえば先輩は例の噂はご存知ですか?
先輩は何かと面倒ごとに首を突っ込むので私は心配で心配で昼寝が出来ません
もし知らなかったのらいいんですけど、どうせ先輩のことだから気になっちゃうでしょう
ですが私から教えるということ先輩を死地へ追いやるのと同義
なのでここでその噂についてこれ以上触れるのはやめにしておきます
今、どうしてそれならそんな話をしたんだとお思いでしょう
ですがこれは決して嫌がらせとかではなく、純粋に先輩が心配で聞いただけなんです
先輩は意外と情報通ですから女子生徒のスリーサイズだけでなくそういったのもいずれ先輩のお耳に入ると思ったのでこうやってお先に忠告をということなのでしたがご迷惑でしたか?
ご迷惑でしたら既読スルーでも結構ですよ
私はそういったのは全く気にしませんから
もし、どうしても噂のことが気になるのなら天宮先輩に電話してみてはいかがでしょう
あの人なら私よりも詳しく、分かりやすく教えてくれるはずですから
メールはここで終わっていた。
「那恵ちゃん、メールでもお喋りなんだな」
追伸が本文よりも長いメールなんて初めて見たな。これはこれで彼女らしいけど。
「でも噂か……」
銀ちゃんには何か言われそうだけど寿が僕に護衛をつけた時期に広まった噂。
関係がある可能性は非常に高い。
けど前回は刹那の知り合いだったから良かったものの、敵だった場合刹那のいない現状では危険なのかもしれない。
でも、それでも僕はこの身を犠牲にしてでも自分の置かれている状況を把握しなくては。
あの時みたいに流れに逆らえず、なすがままにされるのは二度とごめんだ。
「電話に出てくれるといいけど」
こんな時間だ。
お風呂に入ってるかもしれないし、もしかしたらもう寝てしまっているかもしれないがあんなメールを見てしまったら確認せずにはいられない。
正直、番号は知ってはいたがかけるのはこれが初めてだ。
「あ、伏見くん? そっちから電話かけてくるなんて珍しいね」
「ちょっと聞きたいことがあってな。今いいか?」
「大丈夫だよ。ちょうど休憩中だし」
「休憩? 何かやってたのか。それならまたかけ直すけど」
電話ってのは便利そうで不便だからな。
これがあるから縁を切りたい奴に「番号教えろよ」と言われたら教えないわけにはいかないし、連絡が来たら返事もしないと会った時に面倒だ。
まあ、僕の連絡帳には中学の時の知り合いなんて一切入っていないけど。
「気にしなくていいよ。ほんの少し復習してただけだから」
復習?
テストは随分先のはずだが一体何を復習するというんだ。まさかその日の授業の内容をその日に復習してるわけでもあるまいし。
……まさかそうなのか。
宿題もないのに自主的に勉強をしているというのか。だからこそ成績が良いのか。
頭のいい奴を憎んだり、恨んだりしている人もいるがそれはただ単にそいつが努力をしていないからーー出来ないからなのか。
ってそれ僕じゃん。
なんか考えてたら悲しくなってきた。とりあえずテスト前くらいは天宮と勉強会で開こうかな。
「そうか。そうだな」
「ごめん。一人で何かを決めるのは別にいいけど私に分かるようにしてくれる」
「いや、やっぱ出来る人って努力してるんだなって」
軽々しく天才天才と使っているが初めから頭の良い人なんていない。裏で努力をしているからこそテストで良い点が取れる。
一週間の自主学習が一時間程度の僕の結果は低いのは言うまでもない。
「伏見くんは色々と忙しいから仕方ないよ。今日電話してきたのもその件について?」
「なのかな。人から聞いた話で、それも曖昧だったから分かんないけど最近変な噂が流れってるっぽいだけど何か知ってるかなと思って」
「噂? もしかして蛇のことかな。内容的にも伏見くんが興味を持ちそうなものだし」
興味を持ちそうと言われて興味が出ないわけがない。
「それ、詳しく教えてくれないか」
「うーんと、確かただの蛇じゃなくてその蛇に噛まれた人はなんでも不死身になっちゃうだって」
「噛まれた人が? その蛇自身も不死身なのか?」
「流石にそこまでは……。ほら、大体噂って曖昧なものだから。だってそれで実際に不死身になった人がいるなんて今のところ聞いてないし」
噂か。
神保先輩と僕とが付き合っているなんていう噂が広まったことあったっけ。それを考えると噂なんて不確かなものだ。
「噂が広まったのはいつ頃なんだ」
「つい最近かな。まだ一週間も経ってないから」
「ふ〜ん。じゃあさ、その蛇は何処にいるとかって知ってる?」
「知らないよ。だって噂はそういった蛇がいるってだけで何処にいるとかは一切触れられてないから。ごめんねお役に立てなくて」
「十分だよ。じゃあこれで」
「待って伏見くん。どうせこの噂の件調べようとしてるんでしょ」
「どうせって、そんな言い方ないだろ。それにこれは天宮には関係のない話だ」
グールの、天宮の妹の件で不死身のことが知られたけどこれ以上巻き込むたくはない。
「関係なくない。だって私たち友達なんだから。それにさっきのどうせは悪い意味じゃなくてむしろ良い意味だよ。だって伏見くんは優しいから他人の為に自分を犠牲にしそうで……」
「それでいいんだよ。僕は不死身だから僕が一人でやれば誰も死なない」
「確かにそうかもしれないけど、一人でやることはないよ。伏見くんは一人じゃないんだから誰かに助けを求めてもいいんだよ」
「ありがとう。とりあえず、寿に協力を要請することにするよ。ちょうどあいつに聞きたいことあったしな」
最近、会うどころか連絡も取り合っていないから死んでるかもしれないど。
「うん。そうするといいよ」
天宮は電話を切った後、誰にも聞こえない小さな声で呟いた。
「いつか私を頼ってね」
それは届かない彼女の願い。 叶えたい彼女の願い。
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