シルバードール05
「さてさて、皆さんお待たせっす。しっかし、全員集合したのは地味にこれが初めてっすかね」
とある一室で若い白髪の男が白衣を纏い中心で集めた人の顔を見渡した。
「ですな。これから活動が始まる思うとワクワクしますな」
「ふん。我々は貴様の仲間になったのではない。あくまでお互いの利益になり得るからこそ協力関係を結んでいるということを忘れるな」
ここには彼が集めた普通とは違う人間たちは同種ではあるが一枚岩ではない。
「まあまあ、同じコレクターとして争いごとはやめましょうよ」
「若造と他の連中が邪魔をしなければ俺とて争う気はない。それとさっさと前戯をやめて本題に入ったらどうだ?」
「慌てない慌てない。とりあえずご飯でもどうです? 俺っちお腹空いちゃったんすよ」
指を鳴らすと扉の向こう側でスタンバイしていた者たちが豪華な食事を持って集まった全員の目の前に置いた。
「良いですな。なかなか集まることがないですから情報交換のお時間といたしましょう」
文句を言う者もいるが時間が時間なので各々ナイフとフォークを持って食事を始めた。
「いやぁ〜、楽しいっすね。俺っち家族とかそっこーで死んだんでこんな大人数で食事すんのって楽しいっすわ」
「食事が楽しいなんて正気とは思えないな。こんなもの吐き気がする」
隣に座っていた男が訝しみがらも皿の上のステーキを淡々と胃袋に収めていた。
その男はこの部屋で唯一伏見が顔を知っている緒方 和弥。
「緒方さん捻くれてるっすね。てか考え過ぎっすよ。難しいこと考えなくても腹が減ったから食う。単純な話っす」
「人間ってのはそんな単純じゃない。これは不死身の化け物にも言える」
「だから緒方さんは不死身コレクターやってるんすか?」
「いや。それとこれとは関係ない。というか俺は馴れ合うつもりはないから話しかけるな」
「冷たいなぁ〜。俺っちは厄介な蝶を始末してくれた緒方さんには興味があるんすよ」
「分からないようだから簡潔に言うぞ。この関係は目的が達成され次第なくなるからな」
そう、この集まりは白衣の男が中心となったものだが彼の為ではなく互いの利益になるからで誰も他の者は信用していない。
「え〜、俺っちは緒方さんとは今後とも同じ不死身の化け物を愛する者として親睦を深めたいと思ってるんすが」
「おい小僧、食事は済んだ。早速我々全員を集めた理由を話したらどうだ?」
「それもそうすっね。これ以上引き伸ばしても意味ないし、そろそろメインディッシュを」
そう言い指を鳴らすと裏で待機していた仮面の男たちが全員にコップを渡した。
「この液体は?」
そのコップに入っていたのは血のようなどす黒い液体。飲み物としてはとても異様な色だ。
「はい。例の吸血鬼の成れの果てを利用してつくった飲み物っす。味は保証出来ないっすがみなさんが望んだ効果は得られるかと」
それはここにいる全員がここに集められた理由。
「おんや? どうしたんすか。毒なんて入れないっすよ。入れるならふつーさっき入れたましたよ」
「何、別に疑ってるわけじゃねーよ。人は突然のことにはすぐには対処出来ない。だが冷静に考えればお前が言ってたようにこれに何の危険もない」
と確信を持って言い放つとグイッとその液体を一気飲みをした。それを見ていた他の者たちも続いてそれを飲み干す。
「さ〜て、じゃあ各自好きなように動いてください」
最早ここにいる理由のなくなった者たちはそそくさと出て行ったが一人だけ座ったままの男がいた。
「あれ? 緒方さんは行かないっすか? もしかして今ので俺っちのことを信頼してくれた系っすかね」
「ここにいた連中でそんな奴は一人もいない。それより俺は知っているんだぞお前がわざとあの遊園地に吸血鬼の成れの果てをばら撒いたのは」
「はて、何のことか分かんないっすね」
首を傾げて知らんぷりをするが緒方は構わず話を続ける。
「目的は分からんが流石は裏の人間と繋がりの多い闇医者様だな。あれほどのことをやってのけるとは」
「おや、もしかして何かもお見通しって感じ? いや〜、参ったな」
「安心しろ。お前がどんな計画を企ててようと邪魔をする気はねえ。だがお前が集めた他の連中をあまり舐めない方がいい。奴ら不死に関しては無類の強さを発揮する」
「肝に銘じておきますよ」
ヒラヒラと手を振って出て行く白衣の男。
緒方はただコップの底に残った僅かな赤い液体を見つめながら不安そうな顔で呟いた。
「死ぬなよ。不死は、不死の怪物はお前が思っているような存在ではないぞ」
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