シルバードール03
成れの果て。
それだけ聞くと今回の相手は然程大した事はないんじゃないかと思えてしまうが問題なのはそれが何の成れの果てかという事。
今は不在だが灰になっても尚生きている刹那と同じ吸血鬼。
彼女も成れの果てなのかもしれないが、例え成れの果てーー弱った状態だったとしても戦いたくはない。
刹那の同胞だからという理由もあるが一番は厄介だからだ。
不死身かつ様々な能力がある。そんな吸血鬼は不死身の中で最強クラス。
流れで不死身になった僕とは違い、力量は天と地の差がある。だから僕は囮なのだろう。
「さて、落ち着いたか。これから詳しい事情を話すが」
「ああ、頼む。なるべく俺が理解出来るように」
「そんなに難しい話じゃない。最近何者かによってこの街に吸血鬼の成れの果てが何体か運び込まれた」
「何体か? おいおい、聞いてないぜ」
それもその曖昧な言い方だと運び込まれた事は知っているがその数までは把握しきれていない。
この時点でもう嫌な予感がするのは僕だけか?
「安心してくれ。吸血鬼とはいっても成れの果て。さほど力はないし、戦うのは貴殿ではない」
悪気はないのだろうがこの黒い銃は時々グサリとくる一言を追加してくる。
しかし、頑なに喋らないが女子がいるのだ。その代わりと思えばいいか。
「そうだな。いや、色々と口出しをして悪かったな。話の続きをしてくれ。僕はその吸血鬼の成れの果てをどう対処すればいい?」
「奴らは知能が低く本能で動く。それを利用する。貴殿は奴らにとっては魅力的に見えるのだ」
「異性が相手ならそれは喜ばしいところだが今回は喜べなさそうだな」
「けどそれで私たちは楽を出来る。喜ばしいことだ」
「そりゃあそうかい。にしても僕を囮にするにして一体どうやって仕留めるんだ。いくら成れの果てとはいっても元は吸血鬼なんだから不死身なんだろ」
自分で言うのも不死身というのは厄介だ。
倒して復活してしまうのなら刹那のように無力化させるかあのドエムのゾンビのように封印してしまうしかない。
「ああ、だが完全な不死身ではない。弱点を突いて一定のダメージを与えれば消滅する」
「弱点?」
吸血鬼の弱点。それはいくつかあるがやはり一番に思いつくのは太陽。刹那を灰にしたのもそれだ。
「別に弱点でなくても強力な一撃なら消滅させられる。私たちの中にある弾丸は吸血鬼に有効とは言い難いがこの白がいれば問題ない」
「その子が? 正直僕はまだお前らがそんなに強うそうだとは思えないんだけどな」
銃を持っているとはいえ細い体の少女。不死身の僕なら弾丸など当たったところで問題はないからゴリ押ししてしまえば勝てそうだが。
「人を見かけて判断してはいけない。実戦となれば嫌でも彼女の強さが分かる」
「銃にそんな事言われるとはな」
物とはいえ年齢は少なくとも百年以上。やはり経験からそういった知識はあるのだろうがなんだか複雑な気分になる。
「ふむ、少しは落ち着いたか。急ぎの依頼だから早速現場へと赴きたいのだが」
「確かに吸血鬼の成れの果てがこの街に来たら色んな意味で大変になるな」
ここには本物の吸血鬼だけではなく、様々な化け物がいる。もし出会ってしまったら……想像するだけでも恐ろしい。
「そうはさせない。その為に貴殿にこうして協力を要請をしたのだ。期待をしているよ最強の囮殿」
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