シルバードール02

 メールで指定された集合場所は僕の通っている高校の近くにある神社。

 そこには銀髪の少女が真顔で立っていた。

 背丈にあっていないダボダボの黒いレザージャケット、それ短すぎない⁉︎ と聞きたくなるほどのホットパンツ。というかもう短すぎてシャレた下着にしか見えない。

 あまり女の子らしくないが貧……スリムでボーイッシュな短髪なので不思議なことに似合っている。

「え、え〜と君が寿の知り合い?」

 ホットパンツの事は聞かない。僕は紳士的に普通に話しかけた。

「ああ。貴殿が伏見 櫂ということでいいのか?」

 僕は戸惑った。

 多分、不死になった時の次くらいに。

 何故ならクール系っぽい年下の女子に話しかけたら渋い声が返ってきたのだ。

「あ〜、済まない。これは彼女が喋っているのではないのだよ。口が動いていないだろ?」

 言われてみると口だけでなく、瞬きすらしていない。

「じゃあ一体誰が喋ってるんだよ。僕を脅かそうってそうはいかないぞ」

「これが私だ。付喪神と言えば分かるかな。もう一丁いるのだが彼女は無口でね」

 その声に連動するかのようにホットパンツの女子は両手でレザージャケットの下に隠していた二丁の拳銃を取り出した。

「無口……ねぇ」

 確かに口はある。

 だがそこから本来発せられるのは言葉ではなく弾丸。言葉も使いようによっては人を殺すがこれは物理的に人を殺す。

 だから銃刀法というものがあるわけなのだが、こいつらはそんなものガン無視の存在だ。

「おっと、神とはついているが元はただの物だ。そうかしこまることはない」

「別にかしこまってなんかない。ちょっと驚いただけだ」

 素人だがモデルガンではないのは何となく分かる。当たったとしても死にはしないけど痛いんだろうなぁ。

「ふむ、そうか。では早速行くとしようか」

「おい待てよ。お前たちの名前聞いてないぞ」

「私たちは物だから名前などないのだが……それでは不便か。ならば仮に私が黒、この無口な彼女は白、そして私たちのリーダーである銀」

 各々の色をそのまま名前にしただけだが分かりやすくていい。特に銃の方はどっちが喋っているか正直判別出来ない。

「で黒、一体何をするんだ? 詳しい話は全く聞いてないんだけど」

「それはそうだろう。事が事だからな」

「刹那には話せない事か?」

「刹那……ああ、吸血鬼のことか。聞かれても困る事ではないが彼女のため、これは知らない方が良いと思ってね」

「寿がそんな気を回すなんて珍しいな。人の予定なんて御構いなしにメールをするくせに」

「誰かの影響かもしれないな。たとえば貴殿とか」

「それはないよ。あいつは人に影響されることなんてない。雲みたいな奴なんだよ。掴み所がない」

 それなりの付き合いになるがまだ寿 流という男を理解出来ていない。

「確かにそうかもしれませんね。雲は見る度に形が少しずつ変わる。良いようにも、悪いようにも」

「だから違うって……。はぁ、何だか黒と話してると調子が狂うな」

 何もかも知っている人に問題を教えてもらっているみないな。僕が生徒で黒が教師。

 そんな気がしてならない。

 これが年の功というやつか。

「私は楽しいけどね。こんなのだから喋られる時は限られているから……。しかし、貴殿は驚かないのだな」

「色々あったから耐性がついたのかもな。全く嬉しくないけど」

 本当に嬉しくない特技だ。どうせなら履歴書に書けるぐらいのものが良かったのだが。

「ではこれから吸血鬼の成れの果てを殲滅しに行くが囮役はきちんと務めてくれそうだな」

「ファ⁉︎」

 どうやらこの特技。履歴書どころか人に話せるほどのレベルでもないらしい。

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