アクロバティックキョンシー05
初めて女の子の部屋に入ったのは小学四年生の頃だった。何で呼ばれたのかは覚えてないけど部屋の空気は火薬の匂いがしたのは覚えている。
というのも前日は妹の誕生日でクラッカーを使ったからだという。内気な印象のある子だったので以外だったが、むしろ妹を思いやれるいい子だと僕の中では好印象だった。
だが、女の子の部屋に入ったことがあっても女の子(と女性)を自分の部屋に入れるはこれが初めてである。
無論、この場合姉、妹はカウントはしていないので悪しからず。
「ふぅ、やはりここは落ち着くの。昔の日本の部屋は息苦しくてかなわなんだが時代というのは恐ろしいものじゃ」
「何を言う。時代なんぞ遅るるに足らん。どれだけ文明が開化しようと我等が滅びることはないのだからな」
「ちょ、二人とももう少し静かに。家族が起きたらヤバいんだから」
この状況を見られたらどう説明したらいいんだ。こんな夜中に異性を自分の部屋に入れた僕は一体どういう風に見られるというんだ。
誰が来ても言い逃れ出来ない自信がある。
「そう声を荒立てるな。心配せんでも儂等は一瞬でこの場から逃げ果せる。そして、お主は独り言を言っていた事にすればいい」
どちらにしろ僕は変な奴じゃないか。僕が家族の立場を失わずに済む策を考えていないとは何とも薄情な奴だ。
「それよりも麗月、面倒ごとを持ち込んで来るでない。ゾンビ程度なら儂の助力がなくとも……」
「だから彼奴はしつこいと言っているだろ。いくら叩きのめしても再び吾輩の目の前に現れる。大して強くもないから戦闘は楽しめんし、困っている」
今、このお姉さん大して強くもないって言った? あれ、前回は不死性が強いから手強い的な事言ってませんでしたっけ?
「不死同士の戦いほど不毛なものはないの。どうせどちらも死なんのなら決着はつかんじゃろうて」
刹那の言う通り、僕達は色んな不死と対峙してきたがどれも明確な勝ちはない。
故に麗月は困っているのだろう。
返り討ちには出来るが勝てない。そしてまた自分の前に姿を現すゾンビに。
「麗月、貴様協力を要請しに来たと言っておったがそれは嘘なのじゃろう。言うてみろ、本当の訳を。そうしたらそのゾンビ、どうにかしてやらんでもないぞ」
「お前の顔を見に来た、では駄目か?」
「ふっはっ! お主がその様な者ではないのは櫂でも気づいておるぞ」
おっと! 急にこっちに振られても困る。寝ていた訳ではないが、雰囲気的に僕は不要だったみたいなので無心になっていたのだが。
「う〜む、絶対に話さなくてはいけないか?」
「腐り縁じゃがその辺はしっかりせんといかんじゃろ。それにお主が動く時は必ず争いが生まれるからのう。それも継続的に」
ちょっと刹那さん、今物騒な事言わなかった。いや、気のせいだ。何も聞かなかった。僕は何も聞かなかったぞ。だって、今無心状態だもん。
「黙っていてもいずれバレる…か。なら、自分で話せと? 随分と言うようになったな」
「儂の予想では寿という男が関連しておるのではと出ているのだが」
そこで麗月は眉を顰めた。
「メリーレ、お前もあの男に会っているのか?」
「色々あっての。不本意じゃが知っておる」
「なら話は早い。実はその寿と名乗る男にここに来る様に依頼された。報酬はメリーレ、お前を倒した男と対戦できる権利だ」
刹那を倒した男? 寿…はただ壁を壊しただけ。直接手を下してはいない。となると直接手を下した方。
それ、僕じゃないか。
直接じゃない。手を下したのは太陽だけど騙し続け、あそこまで誘い込んだ僕が刹那を倒した男になるんじゃないか?
寿は僕を売ったのだ。
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