バタフライエフェクト01
生徒会長。
この学校のそれは校長や理事長よりも権力があると聞く。
ただの噂かもしれないけど彼女を見ていると本当にそうなんじゃないと思えてくる。
天宮とは違うタイプの天才。
人の上に立つために産まれてきたような人ーーと言ったら怒られる。お仕置きされる。踏まれてしまう(ご褒美)。
ごほん。
さて、冗談はさておき何故いきなりこんな話をしだしたかというと僕はその生徒会長と友達だからだ。
こんなこと男子に言うと集団リンチされるから言わないけど。
何故急にこんな話をしたのかというと図書館で調べごとをしようとしたら偶然その生徒会長に出会ったからである。
「あら伏見くん。久しぶりね」
腰まで伸びたその髪の毛は絹のように滑らかで、水色のカチューシャはどこか清潔さを醸し出している。
綺麗に一直線に切られている前髪から覗かせるその眼はとても澄んでいてこれにやられる男子は少なくない。
「どうもお久しぶりです会長」
普段先生にも使わない敬語を使ってしまう。姉さんにも使ったことないのに…。
「会長はやめてくれないかしら。友達なんだから普通に名前で呼んでって言ってるじゃない」
いつもみんなから会長と呼ばれているからせめて僕には名前で呼んで欲しいらしい。友達として。
「すいません
この学校で知らない者はいない有名人。高嶺の花という言葉は彼女のためにあり、そこに集まるのは蜜を求める蜂ばかりでなく香りに誘われた蝶もいる。
老若男女慕われ、好かれる、僕と真反対な人間。
だが本人は故意でそうなったわけではないらしい。
「うん、よろしい。それにしても珍しいわね伏見くんがこんなとこに来るなんて」
それはつまり僕は図書館に来るような真面目な生徒ではないと罵ってる(ご褒美)なのでは……。
おっと、ごほん。
ま、その通りだから文句は言えないのだけど。
「少し調べたいことがあってら来たんですけど目当てのものはなくて」
調べたいことが特別なものだったから学校の図書館にないのは仕方ない。自転車で十五分程かかるが街の図書館に行くこととしよう。
「それは残念ね。では今はお暇というわけかしら?」
「友達が少ない僕は平常運転でお暇中ですよ箕鵜先輩」
「そう卑屈に答えなくてもいいのよ伏見くん。私も親しい友人は君くらいなものだからね」
「またまた、箕鵜先輩は学校のみんなから慕われてるじゃないですか」
生徒だけではく先生にも、この学校中のみんなから。
「慕われると親しいは別ものだよ伏見くん。まあ君は私を慕っているわけではないみたいだけどね」
こんな風に言われると僕が悪いことをしたみたいだがそんなことはない。僕は至って健全な生徒だ。
ただ最初は知らなかっただけ。初めて会ったあの日、あの時、神保 箕鵜が生徒会長とは。
普通の先輩として接して、その後天宮から「あの人生徒会長だよ」と言われた時顔が青ざめたものだ。
「そ、そんなことないですよ。超慕ってますよ。もう僕の部屋は箕鵜先輩の写真で埋め尽くされてますもん」
嘘だけど箕鵜先輩を怒らせると学校から追放されるという噂があるので必死に言い訳をしたが自分でもこの言い訳はどうかと思う。
「それはそれで怖いな。別に止めはしないが伏見くんの部屋には行きたくなくなったよ」
「じゃあ箕鵜先輩の部屋に行っていいんですか⁉︎」
あの誰も入ったことがないという聖域に。
「どうしてそんな話になるのかしら。まあでもどうしてもと言うのなら私の悩みを解決してくれるのなら考えてあげてもいいわ」
「え? 先輩みたいな人でも悩みとかあるんですか?」
出来たとしても一瞬のうちにカタをつけてしまいそうな感じだが。
「あるわよ。私も人間だもの。伏見くんは逆にあり過ぎて困ってる感じかしら」
「ええ。悩みの叩き売りでもしたくらいですよ」
不死になったり、吸血鬼に襲われたり、幼女殺しをさせられたり、暴食を極めた鬼に右拳を食べさせたり、ついでに姉と妹。
終わっているようで終わっていないこの悩みの木々。売りたいが買い手はつかないだろうな。
何故かあの日から忙しくなっている気がする。帰宅部で暇だから日常生活に問題は全くないけど。
「フッフッ、もし本当にやるなら私が全て買い取ってあげたいがそれはそうとして私の悩みを買ってはくれないか?」
「報酬は合法的に箕鵜先輩の部屋に入れる…ですか。断る理由がありませんね」
買った。僕の時間と引き換え、と言うとあれだけどとにかく引き受けた。
「合法的という言い方が引っかかるがまあいいだろう。しかし、昼休みはもう終わってしまう。話の続きは放課後にしよう。教室で待っているから迎えに来てくれ」
「はい。すぐに行きますよ。早歩きでね」
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