ロリータフェニックス05

 今回一番苦しかったのは火夜の姉である彼女だろう。不死鳥の話を信じてくれたのもありがたかったが、協力もしてくれた。

 あまり期待はしていなかったが想像していたよりも彼女は強かった。やはり火夜の姉なのだなと感心させられた。

 そして一番情けなかったのは僕だ。

 不死と全く関係ない一般人を巻き込んでしまい、その全く関係ない一般人の力を借りなければ今回の依頼を達成できなかったのだから。

 休日の昼間、見慣れた道を散歩しながらそう後悔していると隣で並行していた刹那が口を開いた。

「そう、気を落とすな櫂。結果的にあの幼女に気付かれずに殺せたのじゃ。不死鳥が雛になったのを見たじゃろう」

 あの後、心臓があった場所からは小さくて赤い鳥が炎となって火夜の体を再生させた。僕が殺すまでどれほど大きくなっていたかは知らないが刹那の時と同様に弱体化させられただろう。

「ああ。でも本当にあの人には悪いことをした」

「気にし過ぎじゃ。やった事は正しい事なのじゃから自分に自信を持て。世界を救ったのじゃぞ」

「ありがとう刹那」

 礼を言うと何故か灰になって消えてしまった。どうしたのかと周りを見渡してみるとあの公園であの幼女がこちらを見ていた。

「あれ、あれあれあね。不思議さんじゃないですか」

 どうして途中で『れ』と『ね』間違えた。書く時ならまだしも喋る時に間違えるなんてあり得ないだろ。ま、こういうのは突っ込んだ方が負けなのだろうけど。

「火夜ちゃん。また会ったね」

「その呼び方やめてください。なんか年下扱いされてるみたいで嫌いです」

 実際、本当に年下なのに……僕を年上と思ってないのか? 高校の制服で会っているというのに。まあ、文句を言ってもまた辛辣な言葉で僕のガラスのハートが粉々に砕かれるのは目に見えているからここは素直に従おう。

「ごめん不知火ちゃん」

「それで良し。この前はお礼言ってませんでしたね。ありがとうございました」

「お、おいおいどうしたんだよ。お前が頭を下げるなんて。新手の嫌がらせか?」

 なんか何も悪いことしてないのに警察を見たら驚いてしまう時と同じドキドキを味わえた。

 そうやって僕の精神を削っていくという攻撃か?

「伏見さんは私をなんだと思ってるんですか? 単純に感謝しているんです。これはお姉ちゃんと仲良くなったきっかけですから失くしたらいけなかったんです」

「そうか、見つかってよかったな」

 ふと視線が出入り口付近に向いた。あの人が迎えに来たのだろう。

「では、私はこれからお姉ちゃんと一緒にお買い物をしますので。伏見さんもご家族には優しくしてくださいね」

「お前に言われなくてもそうしてる。お前こそお姉さんを大事にな」

 あんなに良くできた姉だ。これからも仲の良い姉妹でいて欲しい。

 姉と妹の両方がいる僕の願いだ。

「ええ、それこそ貴方に言われなくてもですよ伏見さん」

 幼女はニッと笑ってこちらに礼をしている自分の姉の元へ駆け寄る。その笑顔は僕がやったことは間違いではなかったのだと思い知らしてくれた。

 しかし、不死鳥は成長する。

 人間やヴァンパイアのように一日一日大きく、少しずつ世界の脅威へと変貌していく。

 それを止めるられるのは死しかない。

 だが不死を殺せのは不死だけ。この不死である僕だけだ。

 不死鳥はまた成長してまた僕の前に立ちはだかるだろう。その時は今度こそ誰も巻き込まず、そっと君を殺そう。

 僕は心の中でそう誓い、アクの強い姉妹が待つ家へと歩みを進めた。

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