ロリータフェニックス04

「あれ? あれあれ伏見さん。校門で待ち伏せなんてかなり危ないですね。今のところ不審者に通報されてもおかしくない男ナンバーワンですよ」

「嫌なナンバーワンだなそれ」

 仮病という裏技を使い早退をしてわざわざ来たのだが、そんなの御構いなしに毒を吐いてきた。

「それで何か私に用ですか不審見さん」

「僕の名前を勝手に変えるな」

「すいません。つい出来心で。とりあえず場所を変えませんか? ロリコンの知り合いがいると噂になると私の学校私物化計画が台無しになるので」

「お前の野望デカ過ぎだろ!」

 いつか大物になるだろうなこいつ。だがそれ以上にこの学校が心配だ。こんな奴に私物化されたら全てが崩壊してしまう。ま、ただの戯言だろうけど。

「あまり大きな声を出さないでください伏見さん。とにかく近くに公園があるのでそこをHQとしましょう」

 一体どこで覚えたんだHQだなんて。今時の小学校じゃあそんなのも教えてるのか? それとも親が特別なのか?

「なんかお前の親を見てみたくなったよ」

「まさか伏見さん私のお母さんに気があるんですか? やめてください貴方をお父さんだなんて呼びたくありませんこのジュクコン」

「ジュクコン⁉︎」

 ロリコンとかなら聞いたことあるけど何その新しい単語。

「熟女と結婚したがる残念な人たち。略してジュクコンです。貴方には相応しい二つ名だと思います」

「勘違いするな。僕はお前がそんな風に育ったのには親が関係してるんじゃないかと思っただけで決して熟女好きではない」

「では、やっぱり私の体が目当てだったんですね!」

 両手でその未熟であるかないかまだ定かではない胸を覆い隠す。

 一体僕をなんだと思ってるんだこいつは。

「何故そうなる? とにかく、公園に行こう。別にHQにしても秘密基地にしても構わないからさ」

「伏見さんの許可なんていりません。私は国からの許可が欲しいんです」

「お前…やっぱり大物になるよ」

「当然です。私の夢は世界征服ですから」




 ということで公園。

 刹那と戦ったあの公園ではなく、もう少し広い公園だ。あそこはジャングルジムと滑り台といったごく平凡な遊具しかなかったがここはどう遊んだらいいかわからない遊具が揃っている。

「さて、早速だが要件を聞こうじゃないかジャック」

「誰がジャックだ。もはやそれ言い間違いとかじゃないだろ!」

「え? 今までのを言い間違いだと思っていたんですか? あれはただ単に伏見さんを不快にさせるためにわざと間違えてたんですよ。それに気づかないなんて人生をやり直すことをオススメします」

「今ので凄い不快になった」

 初めてだ、人生をやり直すのを勧められたのは。

「は〜、無駄話はやめましょう伏見さん。貴方とは仕事の話しかしない間柄なんですから」

「何その冷めた間柄⁉︎ それに仕事ってなんだ、僕らまだ学生だろ」

 知り合って間もないがそれは北極とか南極くらい冷めてるだろ。

「勉強に決まってるじゃないですか。もしかしてしてないんですか? 高校生と言ったら進学か就職を決める大事な時期ですよ。進学するなら勉強を人一倍頑張らないといけませんし、就職するなら今のご時世ですから安定したところに行けるよう努力しないといけませんよ」

 なんか小学生に心配された。二年生にもなって進学するかどうか悩んでいる僕へと当てつけかこれは。てか、本当にこいつは小学生かこいつ。幼女の皮を被った母ではないのか?

 と思いつつも僕はそんな事どうでもいいじゃないか(進学とか就職とかそうゆうの諸々含めて)自分に言い聞かせて平常心を取り戻す。

「実はお前が探してたアルパカのキーホルダーが見つかったから渡しにきたんだよ。お前の住所なんて知らないから待ち伏せさせてもらった」

「住所は知らないのに私が通っている学校は知ってるんですね」

「ここら辺にある小学校なんてあそこぐらいだからな。すぐわかったよ」

「そうですかならすぐに返してください。そのキーホルダー。これ以上貴方のそばにあるとあれなので」

 あれってなんだあれって。逆に気になって返しにくくなるだろうが。いや、返すは返すけど。

「はいはい、これでいいんだろ」

 鞄の中で大事にしまっていた水色のアルパカキーホルダーを出して手渡す。

「火夜ちゃ〜〜〜ん」

 公園の出入り口で手を振る少女が呼びかけると火夜は視線がその少女に集中した。

「あ、お姉ちゃん」

 そう、あの少女は火夜の姉だ。しかし、血は繋がっていない。再婚した相手の娘で一年前に出会ったそうだ。

 寿から聞いた話で一度彼女と話をした。この時間、このタイミングで火夜に呼びかけるように。

 たったコンマ数秒、何処からともなく大量の灰が現れて伏見の口から体全体に行き渡り右手の爪が鋭利なものとなって、その小さくて柔らかい心臓を貫いた。

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