ロリータフェニックス02
道を歩いていると辺りを見回して何かを探している小学生四年生くらいの幼女を見つけた。
赤いランドセルを背負っていることから小学生なのは一目瞭然なのだが四年生というのは当てずっぽうで確信はない。
「おい、お前何してんだ?」
声をかけ、こちらに気づき振り向くとその黒くて長い髪が揺れて桃の香りが鼻を刺激した。
「見て分からないんですか。この世の終わりを嘆いているんです」
「この世終わるの⁉︎」
「知らなかったんですか? ノストラダムスさんが言ってましたよ。空か恐怖の大王が舞い降りてアンゴルモアの大王を蘇らせてこの世はぱっかりといってしまうそうです」
「お前何歳だよっ‼︎」
「通りすがりの小学四年生さ」
「か、かっこいい‼︎」
別にこの幼女が怪人を倒したわけでも、名推理で難事件を解決したわけではないのだが、それでもこの台詞には言うだけでかっこ良くなる。僕の質問などガン無視してるのに。
これが台詞力…侮り難し。
というか僕が予想していた小学五年生が当たっていたことに驚きだ。
「それで本当のところは何してるんだ幼女」
「幼女はやめてください。私には不知火しらぬい 火夜かよちゃんという名前があるんです」
「自分でちゃんとか言っちゃうんだ」
その時期から若干ナルシス気味とはこの子の将来が不安だ。容姿は将来有望そうなのだが性格が今後どうなっていくかで残念かそうでないかに分かれてくるだろう。
まあ、そんなこと僕にとっては全く関係のないことなのだが。
「それで本当のところはどうなんだ。何かを探しているように見えたが」
「なっ! 貴様何故それを……まさか能力者?」
「残念ながら左腕は疼かないし、黒い炎とかだせないぞ」
「そうですか。なら消えてください。闇の炎に抱かれて」
「やたら推してくるな中二病ギャグ。何? 最近の小学生ってそうゆうのが流行ってるのか?」
だとしたら相手をするのは遠慮したいんだけど。
「はぁ、そんなわけないでしょ。常識的に考えてみてくださいよ。お馬鹿なんですか? ぱかなんですか?」
「なんで言い直して噛むんだよ」
別に馬鹿のところで止めればいいじゃないか。馬鹿を受け入れるわけではないが。
「いいえ、アルパカと言おうとしただけです。噛んでなんかいません」
「この流れでそれはおかしいだろ」
僕は一応人間だ。あんなラクダの親戚みたいな動物など興味ないのだが。
「実はアルパカのキーホルダーを落としてしまったんです」
「意外な形で本題に戻したな」
かなり強引というかゴリ押しだったがらまあいいだろう。本来、こんな子生意気な小学生を相手をしているほど僕は暇ではないんだから。
「わかった。僕も一緒に探してあげるよ。でもそれだけだとわからないな。もう少し詳しい特徴を教えてくれないか?」
色や大きさや形。それらを知らないと探そうにも探せない。
「小さくて、可愛くて、とても賢くてツインテールです」
「それお前の特徴じゃないか!」
本当にそうなのだからたちが悪い。
「さて、ふざけるのはここまでにして本当に一緒に探してくれるんですか不死身さん」
「点をつけるな!」
僕の正体が見破られたかと思ったじゃないか。相手はただの小学生なんだからそんなことないのに。
「まちかえました。こめんなさい」
「なっ…反抗期かお前は。あと、なんか反則的に可愛いなそれ」
普通、自分の言うことに逆らう奴は苛立ちを覚えるだけなのに、こいつの場合なぜか癒されてしまう。
「嫌だな。そんなに褒めても何も出ませんよ」
「点が出た」
『だ』と『で』が。
「うっ…陰湿な方ですね。そんなのじゃ友達百人計画に支障をきたしますよ」
「小学生が計画とか言うな。それにお前に性格のことをとやかく言われたくない」
というか支障をきたすとか小学生のくせによく知ってるな。僕でさえ日常会話でそんなこと言わないぞ。寿なら言いそうなものだが。
「そうですか。しかし、こうして話していても時間の無駄です。知らない人としゃべって時間を損しました。医者料を要求します」
「お前はいつ病院に行った?」
「ふん、我が黒炎竜にかかれば造作もないことよ」
「また中二!」
何でも黒ならカッコいいわけじゃないぞ。まあ、ケイタイもパソコンも黒で揃えている僕が言っても説得力なんて微塵もないのだが。
「はあ……とにかくアルパカのキーホルダーだな? 暇なときに探してやるからお前は帰れ」
そろそろ日が暮れてきた。帰りが遅くなれば親御さんが心配するし、男子高校生が小学生と喋っているという光景を見られたくない。特に数少ない知り合いには見られたくない。変な勘違いをされそうだ。
「探してくれるんですか」
「ああ、お前は僕と同じ匂いがするからな」
「え? 私、童貞臭いですか?」
ここはノーコメント。ノーツッコミ。こんな単語を教えた奴に制裁を下したいがそれを堪えてなかったことにする。これ以上このネタを広げないように黙殺する。
「じゃあ、見つかったら報告するからいい子にしてろよ」
これが不知火 火夜との出会いだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます