イモータルヴァンパイア04
「さて、お兄ちゃん。妹の良さについて語り合おうか」
「語らねーよ。なんで妹の部屋で、妹の目の前で妹の良さを語らなきゃいけねーんだよ」
ビニール袋の中身を誰にも見つからないように自分の部屋に隠してから隣にある妹の部屋に入り、ベッドの上で向かい合うように座ると妹から妙な提案され、また僕はツッコミ役へと回る。
「え⁉︎ 男は全員シスコンだって先生言ってたのに」
「何その先生⁉︎ 過去に一体何があったの?」
まあ、燗南の言い方からして女性の先生だろうが生徒にそんなことを言うほど追い詰められるだなんて相当苦労したんだな。うん、その気持ち痛いほど分かる。僕もこうして妹の勝手に付き合っているからな。でも、だからって男が全員シスコンだったらこの世界滅んでるよ。何コンでも滅んでるけど。
「うーん、じゃあお兄ちゃんが興味ある話にしよう。たとえば今日の私のパンが何色だったか」
「パンツじゃなくてパン⁉︎ 全くもって興味の湧かない話題だな」
別にパンツだったら興味が湧く訳では決してない。だって考えてみてほしい。実の妹の今日のパンツの色に興味津々でそれで一喜一憂する兄の姿を。ドン引きものだ。親に見られたら勘当されること間違いないだろう。
「じゃあ、私のバストが二センチほど大きくなっているという事件についての方が良かったかな?」
と神妙な顔つきで燗南は自分の両手でそのら大きくなったという胸を揉みだした。
「なん……だと……」
それは大事件だ。パンツの色がどうこうなんて吹っ飛んでしまうほどの。
しかし、どうだろう? 二センチといってもそれはつまり片方一センチくらい大きくなった程度だ。それで何かが変わるだろうか?
否、たかが一センチされど一センチ。そんな
本当は妹の胸なんて触るどころか見たくもないんだけどこれは世界中の男性を代表して確認して新たな諺を生み出し、広めなくてはいけないからやむを得ず、仕方なくであってこれは僕の意志ではない。あえて言うなら世界の意思だ。
「で、本題に入るけどお兄ちゃんってこの町に伝わる怪談って知ってる?」
僕の手が何者かに誘われ、その胸へ触れようとしたその時、妹の口から出されたのは予想外の言葉だった。
お陰で妹の胸に触るという兄としてやっはいけない行為を避けられたので良かった。本当に良かった。べ、別に触りたかったわけじゃないんだからね!
「唐突だな。ここは僕がお前のおっぱいを鷲掴みして名言を言う場面じゃなかったのかよ」
「え? 知らないよそんなの。お兄ちゃんに名言は似合わないよ。迷言の間違いないじゃないの」
「辛辣だな。それより怪談って何の事だよ。それがお前が僕に話したかった事か?」
僕の妹ながらいつも何を考えているのか全く理解できない。理解したくもないが。
「うん、そうだよお兄ちゃん。実は友達から電話でその話を聞いたんだけど、それから眠れなくなっちゃって……」
「ダウト!」
僕はその妹の言葉をさながら何処かの名探偵が犯人を言い当てる時みたく、指をさして否定した。
「へ?」
「だからそれはダウトだって言ってるんだよ。どんな怪物もひと蹴りで一蹴しちまいそうなお前が怪談の話を聞いただけで眠れなくなるわけがない」
僕の妹がそんなに可愛いわけがない。
というわけでダウトをさせてもらった。僕は嘘というのが嫌いだからな。
「そんな、私だって花も恥じらう乙女なのに……」
と、少し目に涙を浮かばせるが僕は騙されない。皆さんも女の涙には気をつけてもらいたい。この水はただの水ではない。同情を誘う魔力が宿っている。それによって騙された男性は数知れず、かくいう僕のその一人だ。故に、耐性ができ、もうこんな姑息な手にやられるわけがない。
「乙女は仁王立ちしないし、いきなり今日のパンの話をしない」
「じゃあ、パンツの話する?」
「それはいい。どうせピンクとか白とかストライプだろ。僕は妹がそれを履いていても興奮なんてしない」
「残念でしたスパッツでした」
「それはパンツじゃないだろ。まさか、その下は何も履いてないとか言い出すんじゃあないだろうな」
そうだとしたら僕の妹は露出狂の予備軍だという事になる。それだけは兄として確認せねばなるまい。スパッツは関係ない。決してスパッツは関係ない。
「そんな訳ないぜお兄ちゃん。私だってそこまでバカじゃないよ。ちゃんとパンツは履いてるの。スパッツの上に」
「よし、馬鹿って十回調べてから出直してこい。それと今度からはちゃんとスパッツの下にパンツを履けよ」
最先端すぎて誰もついていけないぜそのファッション。しかもそんなの言われるまで気づかんわ!
「うん、お兄ちゃん。わかった。今度からはスパッツをパンツの形に切ってそれを履いて行くよ」
「そこに直れ。これからお兄ちゃんによる妹の為の説教のお時間だ」
そこから小一時間ほど僕はスパッツの良さ……もとい、女の子には羞恥心が必要であってこれから普通にパンツを履くように言い聞かせた。
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