四章:ノーデンナヴィク、望郷の魔都の名を
四章01:故郷は、或いは忌まわしき魔都
エスベルカからプルガトリアの西端、ノーデンナヴィクまでは、降雪時を除いて魔導列車が走っている。魔法都市ノーデンナヴィクが有する魔法技術と、帝都とナヴィクの間に位置する工業都市、マクミランの古代技術が手を結んだ移動の手段は、エスベルカ以西への交通の利便を、飛躍的に向上させた。
最初の外遊先にノーデンナヴィクを選んだ僕たちは、貨物室の一区画を丸ごと借受け、そこに
* *
――ノーデンナヴィク、五角形の城壁に守られた西端の魔法都市。そこは僕らの故郷であると同時に、
あれから街がどう変わったのか。ルドミラの曰くでは、都市を守れなかった事で信頼を失った
「お待ちしておりました。レイヴリーヒ皇帝陛下」
そう駅前で降りた僕たちを迎えたのは、フローベル・ルイ=ヴァンテ・アン。彼女は半年前の防衛戦で命を落とした
十八歳で
「ありがとうヴァンテ・アン卿。兄上の件は残念だった。そして貴公の勇猛さは、エメリアより聞いている」
そしてエメリアの名を出したからだろうか、手を差し伸べる僕に一瞬だけフローベルは眉をひそめた。
肩まで伸びたツインドリル。紺碧の双眼の、スレンダーで気の強そうなお嬢様然とした外貌。そして一対の健脚を包む黒いタイツ。
実のところ僕はこの女性をよく知っている。――と言うのもクラスメイトとして三年を付き合った、まさに正真正銘の同級生の一人だからだ。
しかし何かにつけてはちょっかいを出され、小馬鹿にするように
「差し当たっては貴公らの推測通りだ。半年前のナヴィク襲撃事件。今日はその黒幕を連れてきた。――会談に土産も無しでは話も進むまい」
しかし今の僕はベルカの皇帝だ。本題のため指を鳴らし合図を送ると、ユーティラ、ケイ、シンシアに連れられた
「左様でございましたか。お気遣い痛み入ります。――これで兄も報われるでしょう」
思えばフローベルも、家名に対する誇りだけは人一倍に強かった。家督の後継者として期待されていた兄の死は、まだ剣士になりたての彼女の心に、深い哀しみを背負わせたに違いない。
「陛下。
そのフローベルもフローベルで、飽くまでも完璧なお嬢様を演じながら、市街の門へ手を伸ばす。気のせいか彼女が以前より大人びて見えるのは、ジャン去りしヴァンテ・アンを継ぐ
「分かった。貴公の様に美しく勇敢な戦士に導かれるのは光栄の至りだ。エメリアにユーティラ、
世辞を返しながらグレースメリアの団長と副団長に
* *
やがて門をくぐった僕たちを待ち受けていたものは、熱狂的なまでの民衆の歓声だった。どうやら既に根回しは済んでいるらしく、かつての英雄だった
先導するフローベルに従い、坂を登ってアカデミアに歩を進めると、その校門では四人の
身動きがしやすいよう設えられた
「お待ちしておりました。レイヴリーヒ殿。わたくしがノーデンナヴィク最高評議会議長、ゾディアック・アルバ・ポーラスターです」
――ゾディアック・アルバ・ポーラスター。
額に魔石を埋め、それを隠す事も無くおでこを出した亜麻色の髪。
それが齢の百と囁かれながら少女の姿を保ち続ける、プロフェゾーレ最高戦力にして、ナヴィク代表者の名だった。
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