敦
俺は今何処にいるんだろう。
何をしていたんだっけ。
……
確か、楓が
そうだ。楓にもうすぐ迎えがくる。だから俺が止めなくちゃ。止められなくても最後に会いに行きたかったんだ。
五歳の時、二度と行かないと決めた神社に行ったんだ。
俺は幼稚園児の時、この街の一番大きな桜木の下で食事をするおうじき様を見てしまった。
それは五歳児には衝撃的すぎる光景で。おうじき様に見つかってしまった楓を助けに行くと大口を叩いたくせに、見てしまった途端、恐怖に勝てずに逃げてしまったんだ。
そして、彼は十七人目になってしまった。
あの時、見つかっていたら彼だけではなく俺も十八人目になっていただろう。
よかったのか悪かったのか。
そんな彼にもうすぐ迎えがくると分かって神社に向かった。
でも会うことはなく、おうじき様の張った何かに跳ね返されて、階段から落ちたらしい。
階段って千段くらいあったからなあ。
戻らないと時間の問題だ。ここで死にたくはない。
まだ村瀬に言いたいこともたくさんあるのに。
この街の闇の部分を日に晒さなければならないのに。
今ごろコピーの楓は笑っているのか。
もしかして十八人目が確定しただろうか。
犠牲を少なくするためにも早く桜木をどうにかしなきゃいけないのに。
俺は大学で地域社会学を専攻し、その立場を利用してこの街の、おうじき様の伝承を調べた。
ほとんどが噂ばかりだったが、共通して伝えられていたのが、元は人間であり、双子の兄であったと言うことだ。そして、おうじき様という名の由来はわからなかったが、漢字は桜に食べると書いて、桜食さまというらしい。
衛生からの航空写真で社を見ると、桜木と社がほぼ一体化していた。
何故人を食らってまであの桜木を守るのだろう
「…っ!」
何かに引っ張られる感じがする。
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