第24話.『旅立ち』
外から聞こえる微かな物音で目が覚めた。
1、2時間早い起床だと思う。
横たわったまま、見回した客室は真っ暗だった。不可に視線を落とすと、そこで敷かれていたルーシアス用の布団はすでに畳まれていた。ローウェルの姿もない。
「うるせぇ……」
寝癖の付いた頭をガシガシと掻いて、ボソッと一言。
外の音が段々大きくなってきている。何者の仕業なのかは、大方予想はついている。
早朝の出発とは言ったが、いくらなんでも早すぎる。
キリカちゃんが起きちゃうだろうが……ちっとは気をつかえよ。
欠伸を噛み殺して、私はベッドから立ち上がった。
客室の扉を静かに閉めて、髪を結いつつ玄関へと忍び足で向かう。
そっと玄関を開けて、外に出ると細心の注意を払って玄関を閉める。
その後は、音がする方へ早歩きで直行した。ガキン、ガキンと金属がぶつかり合う雑音が庭から響いてくる。
角を曲がって庭が視界に入った瞬間、そこにいた2人に向かって、
「ちょっと男子ぃ! 朝っぱらから煩いんですけどぉ!?」
声量を抑えて、怒鳴った。
小刀を手にチャンバラ紛いな事をしていた少年2人がピタリと手を止め、同時にこっちを向いた。
「起きたか、シャリオン。お前も手合わせに加わるか?」
「なんだ、勇者か……男子って、アンタも男だろ? 気色悪いな」
「おはよう、2人共。それから、加わらないし、気色悪いは傷つくから言わないでもらえる?」
手合わせに誘ってくるローウェルに、登場した私を見て嫌な顔を隠さないルーシアス。血気盛んなのは大いに結構、でも他人に迷惑をかけるのは頂けないよ君達。
まったく、日が昇る前から何やってんだよ。遠足が楽しみで、眠れなかった小学生か?
「明け方に、2人して何してんのさ? ガチャガチャ煩いんだけど?」
「何とはなんだ。見れば分かるだろう?」
「アンタの目は節穴か? ローウェル様と手合わせ中に決まっているだろう」
「非常識な人達に、注意した私が怒られてるんですけど? ねぇねぇ、おかしくない?」
日本の常識、異世界の非常識ってか?
キリカが起きちゃうから今すぐ止めろ、と勇者命令を出せば、渋々だったが2人は手合わせを止めて、汗をかいたルーシアスが井戸で水浴びを始めた。
上着を脱いで、上半身裸になったルーシアスが私の目に飛び込んできた。
「ちょッ! ルー君ッ!? 一言断ってから服脱いでよ。私、まだ心の準備が……」
「心の準備って、女かアンタは! 一々、反応が気持ち悪いな!」
「ある意味、女子だな……」
「やめて師匠、フォローになってないから」
両手で顔を覆った私。そんな私を見て、腕を組むローウェル。
井戸のポンプに付いたハンドルを漕ぎつつ、ルーシアスが罵倒してくる。
ああそうだ、今の私は男だったね。じゃあ、少年の上半身裸を舐める様に見ても大丈夫なんだね。ウヒヒ、ご馳走様です。
ルーシアスの身体は、細くて折れそうだった。贅肉はない、筋肉と皮だけが骨格を包んでいると言う例えがピッタリだ。腕を伸ばすと、あばら骨が浮き上がる。
ちょっと、痩せ過ぎなんじゃ……食べても太れない体質なのかもしれない。
そんな上半身は完治はしているみたいだが、新旧大小様々な傷跡が全体に散らばっている。一番大きな肩の傷は痛々しかった。
ルーシアスは、一体どんな仕事をしているんだろうと疑問に思ったが、〈アサシン〉と言う職種を思い出し、聞くべきではないと判断した。
15歳のルーシアスは、私には想像も出来ない過酷な茨の道を歩んでいる……それだけ分かれば十分だ。
「ルー君から溢れでる主人公の風格……もうルー君が勇者になれば、良いんじゃないかな?」
「はは、巫子にすら選ばれなかった出来損ないが勇者だって? そんなものは、身の程知らずが抱く誇大妄想だ」
「あ……」
「僕は、僕のやり方で強くなる……強くなって一族や姉上に認めてもらえれば、それで本望なんだ」
身体を拭く手を止め、こちらを見ずにルーシアスが声を絞り出す。
軽はずみで言った言葉が、ルーシアスの触れてはいけない部分を刺激してしまった。
水浴びを終え、服を着たルーシアスが私の脇を抜けていく。
すれ違い様に、
「恵まれた環境でのうのうとしているヤツが、僕は……この世で一番、大嫌いだ」
と言う、酷く冷たい言葉を残して……。
どう考えてもルーシアスの言う「ヤツ」とは私を指している。
傷だらけだった背中に、なんと声を掛ければ……後悔の気持ちだけが、いっぱいになっていく。
そわそわと落ち着かない私の背後に、ぬっとローウェルが立った。
耳元で『特訓』と囁かれ、シリアスな雰囲気は刹那に崩壊した。
脱兎の如く、逃げ出す私を猛然と追うローウェル、玄関に向かうルーシアスが逃げる私を見て舌打ちする。
出発前に交わされた男子3人による、夜明けの一場面だった。
隠れ家で行う最後の特訓を終え、ローウェルと共に帰宅するとキリカが起きていた。
身支度をしっかり整えた彼女は、ルーシアスと一緒に朝食とお弁当用のベーグルサンドとせっせと作っていた。
キリカの輝く笑顔と「おはようございます、シャリオン様」の挨拶で、荒んだ心が浄化された。キリカの背後に般若顔のルーシアスがいなければ、確実にハグしてた。
窓辺に朝日が覗いた頃、ほぼ全てルーシアスが作った朝食を4人で食べる。
とろっとろの卵スープに、香りのいい燻製肉にスライス玉ねぎ、葉野菜を挟んだバンズ。味美、見た目良し、最高の朝ご飯だ。味付けは全部ルーシアスがしたって言うんだから驚きだ。
これが噂の男子ご飯……。あれ? 私も男子だし、朝ご飯なら作ってるな。しかめっ面でバンズを咀嚼していたら、ルーシアスに「食べたくないなら、食べなくて結構だ」と皿を下げられそうになった。慌てて、残りを口に詰め込んだら「まったく意地汚い、行儀がなってないぞ」とグチグチ文句を言われた。
ルー君ってさ、躾に厳しいお祖母ちゃんみたいだよね。
出発の時が来た。
玄関を出ようとした私は、3日間過ごした『隠れ家』をもう一度振り返る。
本当なら、ここで7年間暮らすはずだった。
でも、これはこれで良いんだと自分に言い聞かせる。
ここで出来た事も得られた事も本当に少ない。でも、充実した日々だったのは確かだ。
玄関から自室のドアを見る。
ルーシアスの奇襲で壁に穴が開き、内装がメチャクチャになってしまった私の部屋。
ここに戻ってくる事は、もう無いかもしれない。異世界に転生した私の再出発点として、記憶に焼き付けておこう。
この旅立ちによって、本当の意味で新たな人生が始まるのだ。
「3日間、お世話になりました。行ってきます」
誰もいないリビングに向かって一礼すると、私は玄関を出た。
隠れ家の周りは、木製の低い柵で囲われている。
その柵の外側に、すでに旅支度を整えたキリカとルーシアス、そして二人から少し離れた位置にローウェルが立っていた。皆、私が来るのを待っているのだ。
隠れ家から出てきた私に最初に気がついたのはルーシアスだった。
いや、音だけで言うなら、ローウェルの方がもっと前から気付いてただろうけど。
「遅い! 一体、何してたんだ」
「ごめん、ごめん。ちょっと、名残惜しくなちゃってさ……」
「ふーん。なんなら、アンタだけここに置いて行っても良いんだぞ?」
「ルーシアスさん、シャリオン様に失礼ですよ! シャリオン様、私達の故郷であるシビルの里には、今から出発して、夕方には到着すると思います」
頭を掻きながら「エヘヘ」と苦笑いで誤魔化すと、キリカがルーシアスに私への態度の悪さを注意をする。キリカに怒られて、へそを曲げたルーシアスがプイッとそっぽを向く。ルーシアスの行動は、本当に分かりやすい。
久しぶりに会えたキリカに甘えているんだと、まるで2人の母親になった気分に浸ってしまう。
それにしてもソルシエール本家へは、丸一日がかりの移動なのか。
徒歩で行くのだろうか? 移動方法をキリカに尋ねる。
「そのシビルの里へは、ここから徒歩で行くの?」
「まさか! 徒歩でなんてとても。途中に足場の悪い山道や沢、崖などもありますし、一日では半分も勧めません」
「でも、徒歩以外の移動手段なんて、他にないよね?」
車なんてなさそうだし、かと言って馬や牛などの家畜の類もここにはいない。
徒歩以外の移動方法なんてあるのだろうか。
「シビルの里へは、山羊竜(シェーヴル)に乗って行く」
「山羊竜って?」
言葉よりも行動で示す事にしたらしいルーシアスが、レッグポーチからマーキーズ・ブリリアントにカッティングされた鉱石を二つ取り出し、宙高く放った。
日の光を浴びて、2つの鉱石がキラリと輝く。
「オイェスンーグンーク!【顕現せよ!】」
落下してくる鉱石に向かって、ルーシアスが高らかに呪文を詠唱する。
すると、鉱石がカッと眩く発光し、その光が大きな四足歩行の『獣』の形を成す。
地に軽やかに着地した2頭の光の獣は、「ピュイイイイ」と鳥に似た美しい鳴き声で一鳴きした。
全身を包んでいた光が消えると、鞍と手綱を付けた見たことのない生き物がこちらを向いて立っていた。
「わぁ! 宝石がUMAになった!」
「あの子達が、今言った山羊竜です。召喚獣の一種で、黒い毛並みの子がお姉さんのニュイで、白い毛並みの子が妹のネージュです」
山羊竜は、その辺にいる野生動物とはちょっと違う。
何でも『聖獣』と呼ばれる、この世界でも珍しい生き物で、一部の〈魔術師〉や〈召喚師〉だけが、その飼育を許される。ソルシエール家が所有する土地の一部が、この山羊竜の繁殖地になっている。
以上が、山羊竜を撫でるキリカ先生からの教えだ。
『召喚石』と呼ばれる特殊な魔石に、聖獣を封じ込める。それが『召喚獣』の仕組みだと、キリカの説明に補足を加えるルーシアス少年。
トカゲと馬が合体した大きな身体は、羽毛の様な細かい毛でビッシリと覆われている。
鋭い鉤爪が生えた3つ指の足に、頭には山羊に似た大きくて立派な二本の巻き角が生えている。山羊『竜』と名が付いているのだから、ファンタジーの定番モンスターであるドラゴンの一種なのだろう。
姉妹と言う事は、雌なのか。厳つい外見のせいで、とても女の子には見えないけど。
紹介された山羊竜のニュイとネージュは、フンフンと辺りの匂いをかぎ始め、二頭同時に後にいたローウェルに振り返る。
そして、ローウェルの元に軽やかな足取りで歩み寄り、二頭でローウェルにじゃれ始めた。じゃれ付かれているローウェルは、迷惑そうな顔で二頭の顔を押し退ける。
「ニュイとネージュよ、少し見ぬ間に大きくなったな。だが、姉妹揃ってイタズラ好きな所は相変わらずか……おいネージュ、齧るでない!」
「なに? 師匠は、この二頭と知り合いなの?」
召喚したルーシアスとキリカですら、二頭のデレっぷりに言葉を失っている。
二頭に挟まれ、最上級の愛情表現である頬擦りをされながらローウェルは淡々と語る。
「この二頭は、45代目勇者が手に入れた卵から孵った。小生は、この二頭が卵だった頃から知っているし、人に慣らす訓練やら、人を乗せて走るための調教を少しばかり手伝った」
二頭を侍らせ、「俺が育てた」と言わんばかりのローウェル。
「ローウェル様が育ての親だったのですね! ニュイとネージュが、ローウェル様に懐いているのも納得です」
「僕達以外には、懐かないんだけどね。2頭が勇者を乗せるかどうかだけど……」
私に向き直ったルーシアスが顎をしゃくった。ほほう、2頭に近づいてみろとな……。
私は、ローウェルから離れない白黒の二頭に恐る恐る近づく。
先に妹のネージュが近寄る私に気が付き、大きな首を傾げた。近寄って見て分かったが、二頭は瞳の色が違う。ニュイが淡い柑子色で、ネージュは薄水色だ。
まるで、キリカとルーシアスみたいだと思った。私をジッと観察していたネージュが、動いた。警戒しているのか、一歩一歩ゆっくりと近づいて来る。
私は立ち止まったまま、ジッとネージュの薄水色の瞳を見る。
澄んでいて、綺麗な瞳だ。ネージュが鼻を近づけて、私の匂いを嗅ぐ。
その行為を抵抗せずに受け入れると、ネージュは私に頭を押し付けてきた。腹部に立派な巻き角が当たって胃が押されているが、突き飛ばされるほどの強い力ではない。
ネージュの行為の意味が分からず、キリカに助けを求めれば、
「良かったですね、シャリオン様。ネージュが、シャリオン様を乗り手と認めました!」
「マジで? 胃が押されて、中身が出そうなんだけど」
「じゃあ、勇者はネージュに決定だな。では、姉上は僕とニュイに乗りましょうね」
「え? 私は……シャリオン様と」
キリカが口篭って、ルーシアスへの返事を渋る。
私も出来れば、キリカと乗りたい。
やましい気持ちとかじゃなくて、私は山羊竜の乗り方も操作の仕方も分からない。一緒に乗って、教えてもらいたいだけだ。
私が乗った瞬間、ネージュが暴れ出すかも分からない。ようは不安なんです。
車だって、免許だけ取ってペーパードライバーだった私にはハードルが高い。
「私も出来れば、キリカちゃんと……」
「アンタと誰が、一緒に乗るって?」
にこやかに笑うルーシアスから、それとは裏腹にドス黒いオーラが立ち昇る幻が見える。
もしかしたら、幻じゃないのかもしれない。じゃなきゃ、《第六感》が私に危険を知らせたりしないだろうから。
頭と手を振って、全身で訂正する。
「な、何でもないです! 1人で頑張りますッ!」
ルーシアスは、ニュイの傍に寄って手綱を引く。頭を下げたニュイの巻き角を掴かんでヒョイと鞍に飛び乗った。ニュイの手綱を慣れた手つきで捌き、キリカに歩み寄ると手を差し出し、自分の前に引っ張り上げる。
私を気に入ってくれたネージュの頭を撫でながら、
「いいなぁ……」
と、指を咥えていた。
キリカとルーシアスの二人乗りは、おとぎ話の王子様とお姫様みたいに絵になっている。私もキリカみたいにエスコートされたい。どこかに、そんな素敵な男性がいないものか……。
「シャリオン、お前は山羊竜の乗り方を知らんだろう。ここは、小生に任せておけ」
途方に暮れる勇者の前に、頼もしい男が現れた。
私の匂いを嗅ぎながら、どこかウットリしているネージュの鞍にローウェルがヒラリと跨った。跨ったローウェルは、私に手を差し出した。
ローウェルが、3割り増しで格好良く見える。元々イケメンなのに、これ以上イケメン度がアップしたローウェルをなんて呼べばいいんだ。
ひゃっほー! 胸キュンが止まらないよ。今すぐ可愛い女の子になりたい。
目を輝かせながらローウェルの手を取り、その前に引っ張り上げてもらった。
「……」
「師匠、言ってもいい?」
「う、うむ……」
「師匠が前の方が良いよね……ね?」
ネージュの背に、乗った私とローウェル。
長身の私が前で、私より20cmくらい背の低いローウェルが後に乗っている。何が言いたいのかと言うと、私が前に乗っているせいで、ローウェルは前方の視界不良だし、手が手綱にギリギリ届かない。
これはアカン、アカンですよ師匠。せっかく格好よく決めたのに、全部ぶち壊しだよ。
「私、一旦降りるね?」
「……そうだな」
ローウェルの耳が、力なく垂れている。
どうすれば、ローウェルの自尊心を傷付けずに済むか、必死に持てる知識と経験を総動員する。
反応がぎこちないローウェルを見たネージュが、「元気出して」と言わんばかりに顔面をベロリと一舐めした。そんなネージュに、ローウェルが「錆びる!」といつもの調子で怒鳴り、毛を逆立てた。
私は、ローウェルに見えない角度から、ネージュに向かって、グッと親指を立てて見せた。
あり難いお経を求め、三蔵法師一行は西へ――、天竺へと向かう……的な感じで、勇者一行は南へ――、シビルの里へ向かう。
決して、流れているBGMはゴダ○ゴの『モン○ー・マジック』ではない。
ニュイとネージュは1頭に対し、2人の人間を乗せて風の様に走った。
原っぱ、足場の悪い山道、断崖絶壁も山羊竜には何のその。平地となんら変わらない速度で走り抜ける。聖獣って凄い生き物なんだなぁと、ローウェルの腰に手を回している私は、過ぎ去る風景を楽しんだ。
太陽が空の真上に昇った頃、私達は立ち寄った沢で昼食を取った。
水の透明度が高く、川底と泳ぐ魚の群れが見える。皮の柴の木陰に繋がれたニュイとネージュが川の水を飲んでいる。
私とキリカ、ローウェルは川縁に座って、お弁当のベーグルサンドを頬張る。
ルーシアスがバッグから取り出したポットに川の水を汲んで、魔術で火を起こすと温かいお茶を入れてくれた。
気の利くツンデレのルーシアス、気の利かないヘタレのシャリオン、天然癒し系のキリカ、頼もしい武器のローウェルと、メンバーの立ち位置が定着してきたと思うんだよね。
昼食を終え、さらに山羊竜を走らせる。3時間近く走った頃、眼前に深い森が見えてきた。2頭は躊躇無く、森に入って行く。
すると、森一帯に霧が発生し始めた。森の奥へ行くほど、霧は深くなり、終いには前を行くニュイは勿論、前に座るローウェルすら見えなくなってしまった。
不安……と言うより、心細くなった。
こんな所にシビルの里があるの? にわかには信じがたい。ローウェルの腰に回した腕に力が入る。その腕にローウェルの手がそっと触ってくれた。
手から伝わる温度にホッとする。こう言うさり気ない優しさがローウェルの良い所なのだ。
指先すら見えない霧の中を軽快に歩いていたネージュの歩みが止まった。
前方からルーシアスの声が聞こえる。
「着いたぞ」
「着いた? 着いたって……つまり?」
濃い霧が意思を持った生き物のように蠢き、森の奥へズルズルと消えていく。
視界が晴れ、ニュイに乗ったルーシアスとキリカ、その前に広がる景色が視界に飛び込んでくる。
いつの間にか、私達は森を抜けていた。今は切り立った崖の上に立っている。
崖の下は深い渓谷になっていて、そこには大きな山村が広がっている。
あれが目的地――、シビルの里だ。
久しぶりの故郷に、2頭の山羊竜が「ピュイイイイ」と高らかに鳴いた。
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