ゲームセンターと不良品
「おはようございます!朝ですよ。引きこもりさんですか?」
夏日は日曜日にも関わらず朝6時に起こしてくる。いつも通り12時までは寝たいんだけどな。
「早く起きないと私も布団に入って一緒に寝ますよ。」
っっ!ここでラノベの主人公とかならすぐ起きるのだろうが俺は違う。待ってやろう。
「絶対起きると思ったのですが…まさか変態さんだったのですか?」
ここで返事をしたら負けだ。
『ゴソゴソ』
何の音だろうか。後ろを見てみよう。
「うわぁぁぁ!!何をやってんだ。」
夏日が服を脱いで布団に入ってきていた。寝るときに服を脱ぐ人がいる事は知っているが、まさかロボットまで…しかし夏日は胸が大きくくびれもありいい体をしている。本当にロボットなのか?
いや、今はそんな事より「アイツ」が強化されそうだという事だ。そうなるとまずい。俺はすぐに起きて夏日に背を向けた。
「やっと起きたのですね。さあ、私と一緒にデートに行きましょう!」
つい最近デートに行って振られたばかりの人にとってそれは辛い。
「嫌だよ。今日は家でゲームするって決めてんだよ。」
「それなら私と一緒にゲームセンターでも行きませんか?」
成る程。それならデートって訳じゃない。ただ遊びに行っているだけだからいいかもしれないな。
「分かった。じゃあ駅前のゲームセンターに行くぞ。」
夏日の顔が明るくなる。
「じゃあ早速私は準備しますね。」
おいおいまだ6時だぞ。
俺たちは駅前に向かっていた。ただ、少し困った事がある。
「なにメイド服で来てんだよ…」
「これが私の標準服だからです。」
「じゃあせめてその胸に付けてある『不良品』のタグは取ってくれよ。」
すると夏日はちょっと悩んでから、
「分かりました。メイド服は着ますがこれは取りますよ。」
といって「不良品」のタグを取ると、俺に向けて差し出してきた。
「改めて、ご購入ありがとうございます。優気さん。」
別に買った訳じゃないんだけどな。というかこのシチュエーションは凄く興奮するな…いや、相手はロボットなんだ。興奮してどうする。
ゲームセンターに着いた。ここは最近のゲームセンターにしては珍しく、UFOキャッチャーのアームが強いので気に入っていた。
早速夏日と一緒にUFOキャッチャーがある所に向かった。
夏日ではなく彼女と来ていて、本当のデートなら熊のぬいぐるみなどを狙うのだろうが、今回は彼女じゃないし、ただ遊びに来ているだけなので、最近気に入っているラブライフのフュギュアを狙ってみた。
「くそっ、今の取れそうだったのに…」
いつもなら五百円もつぎ込めば簡単に取れるのだが、今回は千円以上もつぎ込んでいるのに全く取れる気配がない。
「私にもやらせて下さい!」
夏日を忘れていた。夏日が本当にロボットならこれぐらい余裕かもしれない。
俺は夏日に期待の意味を込めて五百円玉を投入した。すると夏日は早速何かを無機質な声でぶつぶつ言いだした。
「北ことりの質量をxとし………以上を物理法則に基づいて演算します。」
夏日は本当にロボットかもしれない。
『ウィーーン…ガタッ』
『ウィーーン………』
『ウィーーン……カタ』
『ウィーーン……………』
『ウィーーン…………………………………』
「これおかしいです!私の…私の物理演算が間違っているはず無いのに!」
「お前やっぱロボットじゃねぇだろ。」
そうだ。やはり夏日は人間なんだ。ロボットなんて馬鹿馬鹿しい。
「いえ、私はメイド型ご奉仕ロボットです。」
危なかった。それなら俺のバナナでもご奉仕しろ!と言いそうになってしまった。でもこれじゃ埒が開かないな。
「じゃあそれを証明できものとかあるのか?」
「ありますよ!ちょっとこっちへ来てください。」
と言って夏日は俺をガチャポンが並ぶ人気の無いところに連れて来た。
「見てください。」
そう言うと夏日はスカートを下げ始めた。
ちょっと何してるんですか夏日さん!夏日の太ももが見られるという興奮と共に、ロボットという証拠はなんだろうという期待が同時に湧いてきた。
「これを見てください。」
夏日は太ももを指差した。そこには「リセット」と書かれたボタンが埋め込まれていた。それは後から付けたようなコスプレの様なものではなく、元々付いてたという事がひしひしと伝わってくる現実味のあるものだった。
「このボタンを間違えて押すことは無いのか?」
「それは大丈夫です。このボタンはよっぽどの憎悪の念が無い限り押せないようになっています。」
成る程。それは夏日が本当に売り物だとしたらとても理がかなっている。
それを聞いて、俺は夏日が本当にロボットだという事を悟った。
ガチャポンが並べられている所を出て、俺たちはメダルゲームをする事になった。
メダルを投入して始めようとした時に、向こう側の椅子に座っている人物に目がいった。
そこには昨日俺を振った張本人、水野愛莉みずのあいりが座っていたからだ。
愛莉は死んだ魚のような目をしながら独りでただひたすらメダルゲームに没頭していた。
気がつくと俺は愛莉の事をぼーっと眺めていた。もしかしたら俺はまだ愛莉の事が好きだったのかもしれない。
そして、メダルが無くなったのか、愛莉が立ち上がる。そのとき、
愛莉と目があってしまった。
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