元カノと俺

愛莉と目が合ってしまった。

愛莉は俺を見た途端に表情が明るくなる。

とその時、夏日が話しかけてきた。

「優気さん。これどうするんですか?」

空気を読めないロボットはメダルゲームのやり方について聞いてきた。

すると、愛莉の表情はじわじわと暗くなっていった。怒っている様にも見え、泣いている様にも見えた。

その様子を見て、俺の怒りがこみ上げてきた。

「ふったのはお前だろ…なに怒ってんだよ…」

それを聞いた愛莉の表情は凍りついた。夏日が話しかけてきた時にはまだ微かにあった人間らしさも今では失われていた。

その様子を見た俺は、何故だか急に怖くなり、夏日を連れてゲームセンターから飛び出してしまった。


一体どれくらい走っただろうか。突然夏日が止まり、無言で俺の腕を噛んできた。

「痛い!痛い!痛い!やめてくれ夏日!」

それを聞いて夏日はもっと強く噛む。

「最低ですよ…何があったのかは詳しく知りませんが、あの方が悲しんでいるという事はよく分かります。」

そうか。夏日にはまだ話してなかったっけ。

「あいつは元カノなんだよ。俺はな、お前にあったあの日。あいつに突然ふられたんだよ。特に理由も思いつかねぇ…恐らく新しい彼氏でもできたんだ。」

それを聞くと、

「それは違いますね。優気さんもさっきの彼女の様子を見たでしょう。あの方はまだ優気さんの事を確実に愛しています。」

それは確かに俺も思った事だ。じゃあ何故…

「今の優気さんにできる事は二つあります。彼女の誤解を解く事です。そして、優気さんも彼女に対する誤解を解くという事です。」

今の夏日は本当に頼りになる。これが本来のメイド型ご奉仕ロボットの姿か。

「分かった。ありがとう。」

そう言うと、俺は愛莉を探しに走り出した。愛莉がいる場所は大体分かっている。来週からは新学期、愛莉と気持ち良く迎えたい。

俺は一度止まり、夏日に向けて親指を上げグッジョブサインを送ると再び走り出した。

「ああ。やはり行ってしまわれるのですね。」


俺は、愛莉が悲しい時や悩んでいる時などにいつも来る公園に来ていた。

俺が公園を見回すと、やはり愛莉はベンチで座っていた。

「愛莉。さっきはごめんな。お前が俺をふった理由はまだ分からないけど、まだやり直せる気がする。」

それを聞くと、愛莉はこちらを見向きもせず、冷たい声音で言ってきた。

「嘘吐かないで。私が貴方をふった理由はもう貴方には分かっているんでしょ。茅野さんから聞いたの、貴方に女がいるって。だから確かめる為にふったの…まさか貴方が抵抗しないなんて思わなくて…それでも勘違いだと思ってた。けれどさっきの事で確信した。茅野さんは本当の事を言っていたんだって。」

茅野!?なぜ茅野(かやの)がここで出てくるんだ。そういえば、まだ愛莉と付き合う前に茅野に告白された事がある。当時は好きな人なんていなかったから断ったけど。

だんだん分かってきた気がする。

「あの娘は俺の彼女なんかじゃない。茅野はきっと嘘を吐いてたんだ。」

すると、愛莉が小さく呟いた。

「最低…」

「でも茅野の気持も分からんでもない。ここは許して…」

最後まで言う前に愛莉が叫んだ。

「貴方が最低だって言ってるの!何?ゲームセンターで女と2人でいて、その女は彼女じゃないって?そして、挙句の果てには真実を教えてくれた茅野さんを悪人扱いして…」

そう言うと愛莉は立ち上がり、公園から出ようと歩き出した。

それを見た俺は、言葉が出なかった。言い返す言葉すら思いつかない。いや、ここでは何を言っ

ても無駄なのかもしれない。「証拠」が必要だ。


「お帰りなさいませご主人様!」

夏日が元気良く言ってくる。今は全然そんな気分じゃないのだが、やはり「アイツ」は正直だ。

夏日に背を向けて俺は言う

「ただいま。」

「あの方はどうでした?大丈夫でしたか?」

「夏日には関係ねーよ。」

「大丈夫じゃなかったようですね。全く…優気さん女の子の事に関してはダメダメです。」

夏日は、俺と夏日の付き合いがまるで長いかのように言ってくる。少し間が空いた後、夏日は胸を張って仁王立ちをしだした。

「それより、優気さんのお部屋を掃除しておきましたよ。綺麗になったので見てきて下さい!」

「まじか。夏日掃除出来たんだな!」

「失礼ですね。いくら不良品の私でも掃除くらい出来ますよ。」

「ごめんごめん。じゃあちょっと見てくるわ。」

そう言うと、俺は階段を登り、自室の扉を開けた。

「なんだこれは…」

俺の部屋が誰かに荒らされていた。まあおそらく夏日だろうが。

まずい…先程の夏日の「掃除」という言葉から推測して、大方エロ本が見つかり、そして捨てられたのだろう。

俺はすぐにベッドの下を確認した。すると、殆どのエロ本が消えていた。そう、


メイドもの以外は

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