音の出所2

聞き間違いではない。あきらかにエミから聞こえたのだ。


エミは自分が発した自覚もほとんどないのでありさの問いにも眉をしかめるだけで無反応だった。


ありさは耳の遠いおばあちゃんと話すようにエミの耳元であろう位置に顔を近づけ大きめの声で再び尋ねた。


「携帯鳴りませんでした?スマホですか?」


スマホなら着ぐるみを着てるので操作不能かなと気遣い聞いてみた。いや、よく考えたらガラケーでもあの小さいボタンの操作は無理だと思う。


それを聞いてエミは腰にぶら下げていた麻袋を開け中から透明な板ガラスのようなものを取り出しチラッと見てまた麻袋の中にしまいこんだ。お弁当を食べた時もそうだけど、よくもまあそんなゴツゴツした指の着ぐるみを着たまま細かい作業が出来るもんだと感心してしまうありさ。


その後も何度か例の音は聞こえたがメールかなんかの着信音なんだと思い放っておいた。とくに会話もなくそれから30分程したところで車内にメロディーとアナウンスが流れる。


「テンテンテンテ テーン……間も無く名古屋です。東海道線、関西線、中央線、名鉄線、私鉄線はお乗り換えです。今日も新幹線をご利用いただきまして……」


ひとまず二人きりの時間が終わる事にありさは安堵し、新幹線を降りて駅を出た。駅周辺は静岡とは比べ物にならないくらい人も多い。エミと一緒に行動しなければならないのは恥ずかしかったがチラホラとゆるキャラの格好をした人達を見かけたおかげで自分達だけが浮いてる感が薄れた。


「皆、現地で着ぐるみ着るわけでもないんですね」


ここでの様子を写真に収め望に無事着いた事と合わせLINEで報告しておいた。


そして前もって受け取っていた会場までの地図を取り出したが周りのゆるキャラ達が同じ方向に向かっていたのでその後を着いて行く事にした。徒歩でもそんなにかからない場所に会場はあるらしい。



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