初決戦
着ぐるみを着て歩くのはかなり辛いだろうと言う予想に反してエミの足取りは見るからに軽い。
しかし相変わらず会話はしない。ありさの後ろをテクテクと付いて来るだけ。新幹線車内の狭い空間よりはマシだが気が思い。
気の重さに加えてやたらキョロキョロするエミを見て小さくため息を吐く。
間も無く会場に着いた。全国的にある大型商業複合施設のジョスコだ。立体駐車場の屋上にステージと観客席が設置されていた。屋台もいくつか出ている。スケールがやはり静岡のジョスコとは違った。一言で言うと広い。
出場するゆるキャラ達は受付を済まさなければならないので受付と書いてあるテントに並んぶ。テレビで見た事あるゆるキャラ達もいて緊張感も高まってきた。付き添いの人達が並ぶのだが、付き添いのないキャラもいるらしい。
出場者受付名簿に名前を記入しなければならないのだが、ありさの番になり葵区マンと言う名前をド忘れして困っていた。
「名前なんだっけ?……エミだ!エミって漢字だと『笑み』かな?……付き添い者(葵)、出場者(笑み)って!私の名前が笑われてるみたい!『葵(笑)』違うッッ!エミはあの人の本名だ!なんだっけかな!なんだっけかな!やっべーよ!名前忘れちゃった!葵区だから……んーと……」
振り返ってもエミは少し離れたところで相変わらずキョロキョロしている。どーしようと落胆していると後ろの人と目が合った。心なしか怒ってるようにも見える。
「あーもう面倒くさい!葵くんでいいや!葵区だから葵くん!たぶん合ってるわコレ」
ありさは出場者『葵くん』、付き添い者『葵』と記入した。葵区まで思い出して葵区マンが出てこないのは不思議だが、テンパってるときなんて皆こんなもんだ。
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