エミと葵2

駅ビルに入り切符売り場へと向かった。それらしい人は見当たらない。新幹線の搭乗口付近や案内所あたりも見当たらない。待ち合わせの時間まであと7分だった。新幹線出発までは約25分。


ありさは特に人と待ち合わせをする時早めに来るタイプではないのだが、仕事の事だし責任感は強めの方なので若干焦っていた。しばらくウロウロしていたが、新幹線搭乗口のエスカレーターをダッシュで登って行くサラリーマンを見て気が気ではなくなってくる。もらい泣きならぬ、もらい焦り。


その頃駅の北口では駿府城を擬人化した着ぐるみを脇に抱えた中年の男性がベンチに腰掛け貧乏揺すりをしていた。


新幹線の出発の時間もある。もう一度周りを見回してもそれらしき人は見当たらないので新幹線のホームまで行ってみる事に決めた。


名古屋までの切符はすでに望から受け取っている。名古屋方面の6番線に向かってみた。


エスカレーターを昇りきる前にそれらしき人を発見した。ホームでなにやら尻尾を掴み悶えてるよーにも見える。が、もちろん葵区マンではなくエミである。


「ちょっと!ゆるキャラの格好してるやんけ!!普通現地で着替えるもんじゃないの!?……軽く人だかり出来てるし!……ファンサービス?でも名前に反して可愛い!!」


「 2頭身でフワッフワッ!まりも!?……いや、違ッ!まりもは北海道っぽい!……尻尾はうなぎ、羽はお茶っ葉、角かな?角は桜エビ?に見えなくもない、葵区っぽくはないけど静岡っぽい!コンセプトがよくわかんないけど可愛い!可愛いけど何かの二番煎じっぽい!絶対売れないよ!この子!」


泣き止まない赤ちゃんを抱えている若いお母さん、スーツ姿で電話している男性、スマホをエミに向けてヒソヒソ話している女子高生のグループ……周りの皆がエミをチラチラと見ている。


かなり目立っているので近付き難いが仕方なく挨拶する為にエミの元へ向かった。忘れていたがコートを羽織っているとは言え自分のメイド服もかなり恥ずかしく思えてきた。



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