エミと葵

「で、もうそろそろ出ないと間に合わないけど大丈夫?」


望が必要以上に真剣な顔をしてありさに尋ねた。


「ちょっと!マジかよ!先言えよ!てか、この格好で行けって言うの!?」


「ありちゃん、初心忘れるべからずだよ」


質問の答えとは全く関係ない返答が返ってきた。


「初心だし初日だわ!!やめろよ!!」


ありさは半笑いで答えてコートを羽織りそそくさとマンションを出ようとした。


「あ!名前は『葵区マン』らしいよ!ありちゃんの苗字と同じような名前だから忘れないよね?駅の北口で待ち合わせ!行けば目立つからすぐわかると思う!」


「ダサッ!!忘れたくても忘れられないよ!……って言うかさ、まさかゆるキャラの格好で待ってるわけないよね??」


ありさは靴を履きながら答えたが、ゆるキャラの格好してなくてもそれなりの荷物を持ってるだろうしすぐわかるだろうとタカを括って望のマンションを出た。


自転車に乗り、駅は望のマンションから近いので程なくして到着した。近くの自転車置き場に自転車を停めて駅の南口へと向かう。


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